バージニアン


シーズン1のレギュラー

『バージニアン』は、90分のテレビ西部劇でアメリカでは1962年から9年続いた人気番組ですが、日本ではNET(現:テレビ朝日)系列で、日曜20:00〜21:30の時間帯で1964年4月からの2年間にシーズン1〜シーズン3の一部が放送されました。録画機器もなく、テレビが1台というのが普通の家庭にあっては、ひとつの番組で90分も家族をテレビに釘付けにするのは難しく、人気は今イチでした。私もリアルタイムでは観ていないんですよ。裏番組にNHKの『若い季節』や『太閤記』といった人気番組がありましたからねェ。

登場人物は、広大なシャイロ牧場を運営するガース判事(リー・J・コップ)、牧童頭のバージニアン(ジェームス・ドルリー)、カウボーイのトランパス(ダグ・マクルーア)とスティーブ(ゲーリー・クラーク)、ガースの娘ベッツィー(ロバータ・ショア)、それに新聞社を営むモリー(ピッパ・スコット)がレギュラーメンバーで、シーズン2からカウボーイのランディ(ランディ・ブーン)と保安官のライカー(クルー・ギャラガー)が加わります。逆にモリーは姿を消しますけどね。

原作は何度も映画化されたオーエン・ウィスターのベストセラー小説ですが、登場人物のキャラが原作や映画とはかなり違っています。原作や映画ではモリーは西部のことを知らない東部からきた女教師でバージニアンの恋人だったのですが、西部の真実を代弁する論客として登場します。トランパスもバージニンアの宿敵となる悪党でなく、弟分ね。

シーズン3のレギュラー

ロケの多いテレビ西部劇としては初めての90分番組で、8日間で2エピソードをまとめて撮影するという過密なスケジュールのため、レギュラー陣が揃って登場することは殆どありません。レギュラーの誰かが中心となって物語が展開するといった形式ですね。

それから、今回12本のエピソードを観たのですが、90分という時間を持てあま余していますね。中には劇場映画なみの面白さがあるものもありましたが、概ね60分の枠で収まる内容のものが多かったです。その12本のエピソードを紹介すると……

 

シーズン1−1 “The Executioners” 

女性殺害犯として流れ者がメディシンボウの町で縛り首になります。男にはアリバイがあって本当は無罪だったのですが、それが証明されなかったんですね。流れ者というだけで、よく調べもせずに有罪になったんです。そして、事件のことを調べる男(ヒュー・オブライエン)が現れます。男はシャイロ牧場で働きながら、縛り首された男のアリバイ証明をする人物を捜します。

内容が盛り沢山の時は問題ないのですが、このエピソードのように射ち合いもなく、真犯人も捕まらず、心理描写ばかりの地味なものだと退屈します。

 

シーズン1−3 “Throw a long Rope”

大牧場主と小牧場主の対立を描いたもの。バージニアンは小牧場主の味方となって、英雄気取りで小牧場主たちを皆殺しにしようとする元軍人の大牧場主(ジョン・アンダーソン)と対決します。バージニアンが大牧場主から救った、牛泥棒の疑いをかけられてリンチされそうになった小牧場主(ジャック・ウォーデン)が実は牛泥棒で、罪の意識からバージニアンに真相を打ち明け、大牧場主と相撃ちというのが結末ね。

舞台となっているワイオミングでは、大牧場主対小牧場主の間で西部史上有名な牧畜戦争が起こっているのですが、大牧場主ガース判事(元判事だったので、判事と呼ばれている)が経営するシャイロ牧場の牧童頭のバージニアンを主人公にしているので、どちらの側にも非があるという話にしています。

 

バージニアン

シーズン1−9 “It Tolls for Thee”

かつてガース判事によって刑務所に入れられた無法者(リー・マービン)が判事を誘拐し、身代金の10万ドルを手に入れ、判事を人質にして追手の追及を避けます。判事を無事に救出するために、バージニアン、トランパス、スティーブの三人がこっそり後を追いますが、マービンに怨みを持っている無法者の一団も彼らを追っていて、緊張したシーンの連続で、最後まで楽しめました。

脚本・監督がサミュエル・フラーなので、牛をスタンピードさせ、バージニアンたちがそれに気をとられている隙に独りになった判事を誘拐する手際とか、相手に反撃の暇を与えないようにバージニアン、トランパス、スティーブの三人が敵の三人に各々狙いを定めて同時に射撃し、判事を無事救出するシーンとか、物語の面白さだけでなく際立った演出の冴えを感じましたね。

それにしても、リー・マービンが圧倒的な存在感を持っていますね。子分を増やすため他の無法者のボスを射ったり、文句をいう子分を有無を言わせず射ち殺したり、銃撃戦で子分が死んだら分け前が増えたと喜んだり、凶悪ぶりを見せつけています。山高帽にロングコートという他の連中とは全く異なる個性的なスタイルは彼自身のアイデアじゃないかなァ。

 

シーズン1−11 “The Devil‘s Children”

些細なことからバージニアンを恨み、シャイロ牧場の厩に放火した娘が牧童の威嚇射撃に当って死に、父親(チャールズ・ビックフォード)が制止するのもきかず、娘の兄が牧童を殺してしまう物語。吊るし首になった父親を持つ若者が放火犯として裁判にかけられ、偏見をもった陪審員により有罪にされかけるのですが、良識ある陪審員の粘り強い説得で無罪になるシーンは『十二人の怒れる男』みたいでしたよ。主筋にはあまり関係なく、90分ドラマのために作ったようなシーンでした。

 

トランパス

シ−ズン1−22 “Vengeance is the Spur”

西部には珍しい貴婦人がメディシンボウの町にやってきます。彼女の目的娘を自殺させた男に復讐するため。男はマイケル・レニーが首領の盗賊団の手下となっており、レニーの隠れ場所はバージニアンだけが知っているんですな。というのは、レニーはバージニアンの親友で前任のシャイロ牧場の牧童頭だったんですよ。彼は無実の罪で投獄されたため、社会への復讐で盗賊団を組織し、隠れ住んでいるんですね。でもって、貴婦人はバージニアンを利用して、男が隠れている盗賊団のアジトにやってきて……

 

シーズン1−27 “Strangers at Sundown”

ガース判事とベッツィーの乗った駅馬車が無法者の一団に襲われ、サンダウンの駅馬車中継所へ逃げ込みまが、中継所は彼らに取り囲まれます。彼らの目的は乗客の中にいる裏切り者への復讐でした。その男は愛する女性と暮すために仲間を裏切ったんですね。中継所では、自分たちの身の安全のためにその男を無法者たちの引き渡せという意見と、みすみす殺されるとわかっているのに引き渡すことはできないという意見に分かれます。結論が出ないままに、無法者たちとの銃撃戦や何やかやがありまして、結局、愛する女性(一緒に駅馬車に乗っていた)を死なせるわけにはいかないと、男が外へ飛び出していきます。中継所にいた男全員も銃を持って無法者たち戦うのです。

ヘンリー・モーガン、スキップ・ホメイヤー、アーサー・ハニカット、リチャード・アンダーソンといったB級西部劇やテレビ西部劇ではお馴染みの役者が顔を揃えていました。

 

シーズン2−6 “It Takes a Big Man”

出生の秘密に悩み、父親(ロイド・ノーラン)や社会に反抗的な長男、長男のことしか頭にない父親に従順な次男(ライアン・オニール)という父子の葛藤を描いたエピソードです。

売り出し前のライアン・オニールが出演したいました。今回観た11本のエピソードの中にはなかったもですが、ロバート・レッドフォードも『バージニアン』に出演しているんですね。売り出し前のスターを見るのも楽しいものです。

 

 

 

シーズン2−14“Man of Violence”

トランパスが叔父に預けていた金を殺して奪った無法者を追撃する物語。無法者が隠れている場所がアッパチの土地にある金山で、金山を狙う無法者、隠れている無法者を捜す妻、脱走したアル中の軍医といった人物と一緒に、アパッチの襲撃を警戒しながら旅をするというシチエーションです。レギュラー出演はトランパスだけで、『バージニアン』でなく、別の西部劇でも通用する内容です。レナード・ニモイ無法者の隠れ場所を教える共犯の無法者で、デフォレスト・ケリーがアル中の軍医で出演していました。

 

シーズン2−20“First to Thine Own Self”

父親を殺された少女を助けたランディ(ランディ・ブーン)が殺人犯人として疑われるエピソードです。ランディ・ブーンはこのエピソードからレギュラーになります。ギター片手の放浪生活をおくっていたという地のままの役柄でした。毎回見せてくれる劇中でギターを弾きながら歌うシーンが持ち味でしたね。

ブルース・ダーンでが出演していましたが、狡猾で非情な悪党をやらせたら巧いなァ。

 

シーズン2−26“The Secret of Brynmar Hall”

二年前に火事で死んだ友人の屋敷に招待されたベッツィーに迫り来る恐怖を描いたエピソードです。嵐で閉ざされた古い屋敷を舞台に、精神異常の母親や大火傷を負った父親、不気味な召使いが登場する、西部劇というよりスリラーですな。

 

シーズン2−29“Dark Destiny”

馬泥棒を捕まえた時に一緒にいた娘をバージニアンがシャイロ牧場で保護することになり、娘が調教で落馬して立てなくなったランディのリハビリ介護をする物語。

 

シーズン3−16“The Hour of the Tiger”

ガース判事に怨みを持つ大牧場主の土地の近くで崖崩れがおきて道が塞がれ、牛を運ぶために中国人を雇ってトンネルを掘るエピソードです。中国人が観たら怒り出すような風習が色々でてきて笑えました。鉄道工事において中国人が活躍したのは事実ですが、穴掘り名人=中国人というのはね……

ランディー

 

 

 

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