ローンレンジャー


2010年の調査によると、昭和時代の意味のわからない流行語の1位が、“キモサベ”でした。私は、“可取り専攻”や“ウニる”なんて、意味がわからないだけでなく、存在すら知らなかったのですけどね。

“キモサベ”は、テレビ創生期に放映された人気西部劇『ローンレンジャー』の中で、インディアンのトントが相棒のローンレンジャーを“キモサベ”と呼んでいたことから年少者の間で流行しました。インディアン語で“信頼できる友”という意味なんですが、原作者の創作のようです。

『ローンレンジャー』は、1933年にラジオの連続放送劇として始まり、全米の子供たちの人気ヒーローになりました。すぐにコミック化と、連続活劇として映画化(ローンレンジャーがロバート・リビングストンで、トントがチーフ・サンダークラウド)されています。

人気は戦後もおとろえず、クレイトン・ムーアのローンレンジャー、ジェイ・シルバーヒールズのトントでテレビシリーズ化され、1949年から57年まで続いた人気番組(全182話)となりました。

このコンビによるドラマレコードも発売されています。輸入盤でサントラと思って購入したら、聴いてビックリ、音楽なんてありゃしない。内容なんてわかりゃしません。

日本では1958年8月2日にKRT(現:TBS)系列で放送開始され、52本が放送されています。その後、何度も再放送されており、私が観たのも再放送でした。

黒マスク姿で白馬にまたがり、二挺拳銃で悪人をやっつける。ロッシーニの勇壮な「ウィリアム・テル序曲」にのって西部をかけめぐるローンレンジャーの雄姿にシビレましたねェ。

だけど、改めてDVDやビデオで再見すると、年少者向西部劇なので内容は単純で、立て続けに観ていると飽きてきます。

スタジオ撮影が多く西部劇的な空間的な広がりがないのと、低予算製作のためかロケによる野外シーンは使いまわしが目立ちますね。子供の頃には気づかなかった粗が目につくんですよ。それでも、知ってる役者が出演していると、懐かしさに嬉しくなりま〜す。

DVD5巻とビデオ12巻からエピソードを紹介すると……

 

 

DVD第1巻は、ローンレンジャー誕生のエピソードです。無法者キャベンディッシュ一味を追っていたテキサスレンジャーが待ち伏せにあって全滅。瀕死の重傷を負った若い隊員は、昔助けたインディアンのトントに救われ、隊長だった兄が着ていた黒いベストからマスクを作ってローンレンジャーになるのです。

バッファローに襲われて傷ついていた野生馬シルバーを助けて愛馬とし、旧友の助けを借りて兄が所有していた秘密の銀鉱から、活動資金と正義の象徴である銀の弾丸を手に入れます。

そして、町を乗っ取ろうとしていたキャベンディッシュ一味を保安官に協力して倒すまでが1話〜3話で語られます。「どんな悪人でも、殺してよい人間はいない」をモットーに、ローンレンジャーの活躍が始まるので〜す。

DVD第2巻は、「老兵集結」「汚名返上」「部族長の黒い馬」の3話が収録されています。

「老兵集結」は、父親の死により大牧場を相続した息子を騙して牧場を乗っ取ろうとする悪党を、レンジャーが牧場を追い出された老カウボーイたちを助けてやっつける物語。東部から戻ってきた世間知らずの息子役でデフォレスト・ケリーが出演していました。

「汚名返上」は、捕えられたボス救出のために牧場主の息子を人質にした牛泥棒一味を、レンジャーが牛泥棒の汚名をうけた男とやっつける物語。牧場主の息子役で、後にテレビ西部劇の『バッファロー・ビルの冒険』や『テキサス平原児』で売り出すディック・ジョーンズが出演しています。

「部族長の黒い馬」は、インディアンの土地で酋長の馬を盗み、酋長の息子を人質にした悪党を、レンジャーがインディアンとの戦争になる前にやっつける物語。酋長役で1940年代から50年代にかけての西部劇でお馴染みのインディアン役者チーフ・ヨウラチが出演していました。

知っている顔に出会うのは楽しいもので〜す。

 

 

DVD第3巻は、「気のいい二人組」「無法者」「新参者」の3話が収録されています。

「気のいい二人組」は、牧場内に金鉱があるのを知った悪党が、女牧場主に嫌がらせをして牧場を買収しようとするんですな。レンジャーは牧場を守るために陽気で腕の立つ二人組を女牧場主に紹介します。二人組は女牧場主に一目惚れし……コメディタッチの物語でした。

「無法者」は、インディアン保留地に運ばれる物資を奪った交易所の役人と脱走兵が、保留地のインディアンに罪をきせてフロリダに送ろうとする悪計をレンジャーとトントが暴く物語。保留地でおとなしくしているのは良いインディアンで、保留地を出て白人に抵抗するのは悪いインディアンという、1950年代のステロタイプの西部劇ですね。

「新参者」は、新参者に銀鉱山を発見された採掘者が、仲間を殺して新参者に罪をきせ、銀鉱山を奪おうとするがレンジャーによってその犯罪が暴かれる物語。採掘者に殺される仲間の役で、ジョン・フォードの西部劇でお馴染みのハンク・ワーデンが出演していました。この人の演技は、どんな役をやってもハンク・ワーデンなんですよねェ。

 

 

DVD第4巻は、「一人前の条件」「遺産相続人」「濡れ衣」の3話が収録されています。

「一人前の条件」は、鉄道建設がされると知った酒場のオーナーが、建設予定地の牧場を買収するために水場に毒を入れて、牧場主たちを仲たがいさせるんですな。レンジャーがオーナーの悪だくみを暴き、牧場主たちを仲直りさせる物語。背の低い牧場主が上げ底ブーツを履いて、背を高く見せようとしていたのには笑いました。マジックブーツって、昔からあったんだ。

「遺産相続人」は、無法者に襲われて重傷を負った若者をレンジャーが助けるんですな。医者を呼びに行ったトントが町で助けた若者と瓜二つの若者を目撃します。悪党たちが替え玉を使って莫大な遺産をだましとろうとしていたんですよ。レンジャーが若者に味方して、黒幕を暴きます。

「濡れ衣」は、嘘の証言で刑務所に入れられた男が刑期を終えて故郷に帰ってきます。冤罪を晴らすために証言者の家を訪ねると、争った後と血痕が残っているんですな。殺人犯人に間違われ男をリンチから救い、真犯人をレンジャーが見つけます。

 

 

 

DVD第5巻は、「盗まれた金の行方」「潜入捜査」「無法者の見分け方」の3話が収録されています。

「盗まれた金の行方」は、銀行強盗して服役していた男が仮釈放となって戻ってきたら隠していた金がなくなっているんですな。男は仲間の仕業と考えるんですが、男の恋人が男を更生させるために金を隠したんですよ。そのことを牧師から聞いたレンジャーは男と恋人のために、更生の手伝いをします。

「潜入捜査」は、ギャング団に脅迫されてボスと結婚する破目になった保安官の恋人を救出するためにレンジャーが無法者と偽ってギャング団に潜入します。拳銃の腕前を見せたのはいいですが、銀の弾丸からローンレンジャーであることがバレるんですな。でもってボスはレンジャーを罠にかけようとしますが、保安官の恋人からバレていることを知らされてレンジャーはさらにその裏をかき……

「無法者の見分け方」は、脱獄した無法者が山小屋にひとりで暮らす老人を襲って身代わりとなります。そこに30年ぶりに老人の妹が訪ねてくるんですな。妹はその老人が偽者と見抜き、無法者を追っていたレンジャーが老人の妹を助けて無法者を捕えます。

 

 

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