狸ミュージカル


初春狸御殿(1959年・大映)

(製  作)

 監督:木村恵吾、脚本:木村恵吾、撮影:今井ひろし、音楽:吉田正、作詞:佐伯孝夫

美術:上里義三、西岡善信

出演:市川雷蔵、若尾文子、勝新太郎、中村鴈治郎、菅井一郎、水谷良重

 

(感 想)

 狸御殿のキヌタ姫(若尾文子)は、隣国の若君・狸吉郎(市川雷蔵)とのお見合いを嫌って、御殿をとびだす。慌てた家老狸(中村鴈治郎)は、姫とウリフタツの泥棒狸(菅井一郎)の娘・お黒ちゃん(若尾文子の二役)を姫の身代わりにするが……

 狸御殿で繰り広げられるレビュー・シーンが何といっても見どころですね。

 カラー画面いっぱいに、市川雷蔵と若尾文子が、衣装を取替え引換え踊って、目を楽しませてくれます。若尾文子が抜群に綺麗でしたね。

 音楽が吉田正なのでレビューといっても、歌謡曲調のモロ和風。雷蔵の歌は吹替えでしたが、河童ギャル(?)を相手に歌う勝新の歌はモノホン。歌唱力は映画スターの中でトップクラスじゃないかなァ。

 中村鴈治郎も巧いけど、菅井一郎が巧いなあ。歩き方が踊りのステップになっているんだもの。水谷良重(今では新派の重鎮ですが、当時は歌手だったんですよ)の歌も聴けたし、満足、満足。

 

花くらべ狸道中(1961年・大映)

(製 作)

 監督:田中徳三、脚本:八尋不二、撮影:本多省三、音楽:浜口庫之助、美術:内藤昭
 出演:市川雷蔵、若尾文子、勝新太郎、中田康子

 

(感 想)
 狸総裁を決める会議に雷吉狸(市川雷蔵)と新吉狸(勝新太郎)が阿波狸の名代として江戸まで行くことになる。二人(二匹かな)は、人間の弥治喜多道中に化けて旅をするが……

 雷蔵と勝新が最初に狸姿で登場するのですが、これが茶パツ。それも、もろパンクというヘアスタイル。笑いましたねえ。

 音楽が浜口庫之助なので、何が出てくるかわからない。雷蔵と若尾文子が階段ステージで巨大な羽根扇を持って踊るのにはマイったが、雷蔵と勝新のデュエットには笑ってしまった。この映画では雷蔵は吹替えなしで歌っていますよ。ヘタですが。
 しかし、何といっても勝新と中田康子の歌と踊りが最高。東南アジア風というか、ポリネシア風というか、理解不能なファッションの勝新と、フラメンコ風の中田康子が恋のデュエット。本来は笑いをとるシーンではないのでしょうが、現在の感覚で観たらタマラナクおかしいんですよ。勝新が、結構サマになっているから余計にね。

 この作品で気に入らないのは、現実感を出そうとして野外ロケをしていること。狸の世界のお話ですから、作り物のセットの方がピッタシきますよ。

 

オペレッタ 狸御殿(2005年/監督:鈴木清順)

がらさ城主・安土桃山(平幹二朗)は、この世で一番の美を息子の雨千代(オダギリジョー)に奪われそうになり、快羅須山へ追放しようとする。雨千代は間一髪がらさ城を脱出し、逃げる途中に狸ヶ森で狸姫(チャン・ツィイー)と出会い、二人は恋に落ちる。狸 姫の乳母・お萩(薬師丸ひろ子)は、狸姫が人間に恋したことを心配し……

ヒロインがチャン・ツィイーで、おまけにデジタル美空ひばりが出演するとあって、何でもありの無国籍狸ミュージカルを期待したのですが、面白さ半分といったところでしょうか。

チャン・ツィイー、オダギリジョー、平幹二朗、薬師丸ひろ子、由紀さおりたちの歌は悪くなく、特に平幹二朗の上手さには驚かされたのですが、昔の狸ミュージカルにあったレビュー・シーンの楽しさがなかったのは残念でしたね。

平面的で奥行きのない作り物の世界で繰り広げられる鈴木清順の映像美は流石で〜す。

 

 

 

 

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