左膳雑記


左膳映画史

『丹下左膳の映画史』(展望社)

田中照禾:著

2004年12月25日 第1刷発行

 

既存の資料をもとに、左膳映画について網羅されています。著者自身の資料や関係者へのインタビューがないので、新しい発見はありませんが、研究書としての価値は高いですね。私も丹下左膳は好きでも、ここまで調べようとは思いませんからね。

最初の映画化で、団徳麿と嵐長三郎(嵐寛寿郎)の左膳の左目が斬られているのを不思議に思っていたのですが、新聞小説の挿絵(小田富弥:画)がマチマチで判断できなかったんですね。結局、大河内伝次郎の丹下左膳のヒットにより大河内左膳のスタイルが丹下左膳の定型になったようです。

(2005年3月)

 

女左膳

『女左膳・濡れ燕片手斬り』(1969年・大映/監督:安田公義)

片目片腕の女剣客・濡れ燕のおきん(安田道代)は、高円大僧正(沢村宗之助)の色魔殿から逃げ出した娘・お美津(丘夏子)を救う。高円大僧正は権力をかさに寺社奉行(神田隆)と結託して横暴の限りをつくしていた。高円大僧正は、神明の五郎蔵(小松方正)一家を使って娘を追うが、おきんの腕前に手も足も出ない。その頃、おきんの前に、おきんの愛刀・濡れ燕を手に入れるために三輪栄三郎(本郷功次郎)が現れる。栄三郎の藩主・青山大膳太夫(小池朝雄)は、おきんの父を殺し、その巻き添えでおきんも片目片腕となった憎むべき仇だった……

片眼片腕の怪剣士・丹下左膳の女性版です。上記の他に蒲生泰軒(長門勇)にチョビ安も登場し、丹下左膳の原案通り。主人公が女なので、左膳を慕う櫛巻きお藤は登場しませんけどね。戦前に丹下左膳が大ヒットし、ゲテモノ左膳として女左膳が作られたのですが、これはそのリメイクだと思います。ヘタな人情場面を入れずにチャンバラに徹しているので、最後まで楽しむことができました。

“女だてらに世をすねて、虫が好かなきゃぶった斬る! 白の着流し返り血あびて、見えぬ片目が不気味に笑う”

『女左膳』(1950年・新東宝/監督:冬島泰三)のチラシ

チラシを見ると残念ながら片目片腕ではありません。父親の嫌疑をはらすために、娘が白覆面をつけて丹下左膳と名乗るんですな。原作は陣出達郎なんですが、脚本の井上梅次が名付けたのかもしれません。

主演の川路龍子はSKDの男装の麗人だったんですね。当時人気のあった女剣戟の役者かと思っていましたよ。チラシを見ると観たくなる……

謎の女剣士

戦前の東亜・東活・宝塚キネマ・大都といった映画会社で活躍した木下双葉という女優らしいのですが、写真の雰囲気からすると女左膳のような気がします。

 

部分版でも

 

伊藤大輔&大河内伝次郎特集が行なわれている東京フィルムセンターで、『丹下左膳』(1933年・日活)を観る。

伊藤大輔監督の初トーキー作品で、“丹下左膳”の最高傑作と呼び声の高い作品です。残念ながら現存しているフィルムは、イギリスで発見された欠落の多い部分版(冒頭と終りの45分だけ)で、声帯模写でお馴染みの「シェイは丹下、名はシャゼン」のセリフは出てこず、大河内の立廻りシーンもないのですから、面白いわけはありません。

だけど、場面展開の見事さや構図の素晴しさ、上からの移動撮影による冒頭シーンなどの伊藤演出から、傑作が推量できるものでしたね。

てなことを、帰り際に再会した旧知のNさんとお茶を飲みながら話したのです。そして、二人して「完全版が観たいねェ、フゥ……」

(2008年10月)

 

 

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