丹下左膳・濡れ燕一刀流

(1961年・東映)


(スタッフ)

監 督:松田定次

原 作:林 不忘

脚 本:松村昌治、直居欣哉

撮 影:川崎新太郎

音 楽:富永三郎

 

(キャスト)

丹下左膳 …… 大友柳太朗

柳生源三郎…… 大川橋蔵

蒲生泰軒 …… 大河内伝次郎

柳生対馬守…… 山形勳

大岡越前守…… 黒川弥太郎

萩乃    …… 丘さとみ

お光    …… 桜町弘子

櫛巻お藤 …… 長谷川裕見子

鼓の与吉 …… 多々良純

チョビ安  …… 目方誠

本田淡路守…… 柳永二郎

別所信濃守…… 平幹二朗

峰丹波   …… 戸上城太郎

 

片目片腕の怪剣士 日光の謎を叩き斬る!

 

(感 想)

 大友左膳シリーズ第4作目。この頃になると、大友左膳のキャラクターがひとり歩きしてますね。盲目の乙女に純な恋心を寄せ、眼の手術代のための資金作りが物語のひとつの柱になっています。まるでチャップリンの『街の灯』だ。大友左膳の演技はクサくて、そこがたまらなくいいんだなあ。

 物語は“こけ猿の壷”の続編みたいな内容。幕府お庭番総取締り役の愚楽老人と大岡越前守は、柳生家に巨万の富の所在を示す“こけ猿の壷”があることを知り、費用のかかる日光東照宮修築を命じる。しかし、“こけ猿の壷”の中には秘宝の手掛かりはおろか、紙一枚入ってなかった。

シリーズ第1作でもそうであったように、柳生家には秘宝なんて最初からなかったんですよ。それで、幕府が代りに資金を工面してやる。蒲生泰軒が真物の“こけ猿の壷”はこれだと言って、幕府が用意した金が埋めてある場所を教えてやるんです。

 修築工事に取り掛かった柳生家から賄賂がなかったことに腹を立てた老中・本田淡路守は、腹心の別所信濃守を柳生対馬守の補佐役として派遣する。淡路守と信濃守は、修築工事の関連で商人たちから賄賂をとっており、誠実な対馬守が奉行だと都合が悪く、対馬守失脚に向けて陰謀をめぐらす。

平幹二朗は、この頃は悪役専門。陰険な役が似合うんだよなあ。

 ヤクザに絡まれている甘酒売りの姉妹を左膳が救う。左膳は盲目の娘・お光の美しさに一目惚れ。その様子を見て、嫉妬した櫛巻お藤と左膳は痴話喧嘩をして、姉妹の住む長屋へチョビ安と移り住む。

前作の青山京子の櫛巻お藤はシックリきませんでしたが、今回はシリーズで3度目のコンビとなる長谷川お藤と大友左膳ですから、呼吸もあって上質の夫婦漫才を観てる感じでしたよ。逆にチョビ安は、松島トモ子から目方誠(後の美樹克彦)になり、チョビ安のこまちゃくれた明るさが薄くなっていました。松島トモ子では、年齢的にムリになってきたんでしょうね。

左膳はお光の眼が手術で治ることを知り、金の工面のため、鼓の与吉が持ち込んできた柳生源三郎を殺す仕事を引き受ける。柳生対馬守の弟・源三郎は、司馬道場の婿養子となるため、司馬道場に住みついていたが、信濃守の一味に加わった師範代の峰丹波の動向から、信濃守の陰謀を知る。信濃守は危険を察知し、源三郎の命を狙っていたのだ。

医者役の左卜全がとぼけた味わいがあってバツグン。こういうバイプレイヤーが映画を面白くするんですよね。目が見えるようになったお光に、自分の醜い姿をみせたくない左膳の心情を大友柳太朗は巧く表現しています。

左膳と源三郎の対決は、蒲生泰軒が仲に入ったため決着がつかず、左膳は源三郎を追って日光へ行く。信濃守は、源三郎の行動を牽制するため、源三郎の婚約者・萩乃を峰丹波を使って誘拐する。さらに、東照宮に奉納する黄金の駿馬の贋物を作阿弥に作らすため、作阿弥の孫娘のお光をも誘拐する。

左膳と源三郎が戦っている時、萩乃を人質にした峰丹波が現われ、刀を捨てさせて源三郎を斬ろうとした時、左膳が峰丹波を斬る。

「左膳、裏切ったな!」の声に、「バカやろう!表返ったんだ」といって、悪党ども斬りまくる大友左膳の小気味いいこと。走りながらの立回りというのは難しいんですよ。まして片目ですからね。

大友柳太朗は、丹下左膳の立回りについて次ぎのように言ってます。

「片目が見えないでしょう。見当が付かないんですよ。距離感がとれない」

「今までと同じでやってしまうと、刀が相手に当たらない」

「だから、手いっぱい伸ばしまして、神経つかいました」

刀を当てられた斬られ役の人は大変だったろうなあ。

ラストは、東照宮に奉納にきた柳生対馬守を暗殺しようとする別所信濃守一味との大立回り。チャンバラ映画の面白さが満載された作品でしたね。

 

 

 

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