(1939年・東宝)
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(スタッフ) 製作:池永和央、監督:中川信夫、原作:川口松太郎、脚本:貴船八郎 撮影:安本淳、音楽:伊藤昇 (キャスト) 大河内傳次郎、黒川弥太郎、山田五十鈴、高峰秀子、岸井明、鬼頭善一郎 冬木京三、進藤英太郎、沢村貞子 |
(感 想) 川口松太郎が、林不忘の未亡人から権利を譲り受けて書いた“丹下左膳”を原作としており、従来の丹下左膳とは設定が全く異なっています。 映画化にあたっては、全5部作の連続ものになるはずだったが、“完結編”は作られていません。 でもって、“隻眼の巻”は第3部にあたり、何の予備知識もなくこれを観たら、何が何やらサッパリわからなかったでしょうね。ネットを通じて知り合った時代劇の大先輩に教えてもらった第3部までの粗筋は…… 郷士の息子・丹下左市(大河内傳次郎)は、参勤交代で江戸へ向かう明石藩主に、家宝の名刀に目をつけられ、行列に無礼があったとして両親を斬られた上に刀まで奪われる。そして、兄を明石藩主に殺された小田井三之助(黒川弥太郎)と共に、仇を討つべく行列を追って江戸へ行く。(第1部・妖刀の巻) 江戸に出た左市は、千葉周作に剣を学び、腕前はメキメキ上達する。明石侯登城の道筋と時刻の情報を得た左市は、三之助と行列に斬り込む手筈を整えるが、周作の名刀を黙って借りようと寝所に忍び込んだところを、周作に右腕を斬り落とされる。(第2部・隻手の巻) 第3部では、明石侯の登城行列に三之助が斬り込み、片腕となった左市が、よろめきながら駆けつけるところから物語は始まる。 左市が駆けつけた時には、三之助は襲撃に失敗し、手傷を負って逃げた後だった。左市を待ちうけていたのは、両親を無礼討ちにした明石侯の側用人と剣術指南役だった。 隻手となって体力が消耗していた左市は、指南役に右目を斬られて隻眼となる。瀕死の状態だった左市を救ったのが明石藩の御用商人だった。名前を尋かれて左市は丹下左膳と名乗る。 それから1年後、国許へ帰る明石藩の行列を追った三之助は、藩主の命を狙って本陣に忍び込むが警護の武士に捕らえられる。三之助が処刑されようとした時、丹下左膳が現れ、第3部は終わる。 “新編丹下左膳”は、この第3部しか現存していないんですよ。それも無いより有るだけマシというブツ切れ状態のフィルムでね。こうなると、作品の評価以前の問題です。ただ、大河内傳次郎の丹下左膳ではあるものの、当時の評判は良くなかったみたいです。 この作品を観ていても、隻眼隻手になった悲壮感が感じられないんですよ。商家の小生意気な娘(高峰秀子が巧いんだなァ)をからかったりして、結構明るいんですな。物語の内容からして、違和感を生じました。 結局、原作の出来が悪いということになりますか。 |