丹下左膳・飛燕居合斬り

(1966年・東映)


監 督:五社英雄

原 作:林 不忘

脚 本:田坂 啓、五社英雄

撮 影:吉田貞次

美 術:塚本隆治

音 楽:津島利章

 

配  役

  丹下左膳 …… 中村錦之助

  柳生源三郎…… 木村 功

  櫛巻お藤 …… 淡路恵子

  萩乃    …… 入江若葉

  柳生対馬守…… 丹波哲郎

  大岡越前守…… 大友柳太朗

  鼓の与吉 …… 藤岡琢也

  チョビ安  …… 金子吉延

  愚楽老人 …… 河津清三郎

  蒲生泰軒 …… 天津 敏

 

(感 想)

 

 劇場で公開された最後の丹下左膳です。主演の中村錦之助もこの映画を最後に東映を離れます。彼が再び東映のスクリーンに戻ってくるのは、12年後の『柳生一族の陰謀』ですが、その時は中村錦之助でなく萬屋錦之介(メチャクチャ臭い演技をするようになり、中村錦之助とは別人)でした。

 

物語は、百万両の黄金の秘密が隠されている“こけ猿の壷”をめぐっての争奪戦。

冒頭で左膳が右眼・右腕を失うシーン(原作にはないオリジナル)が出てきます。左膳の性格付けを狙ったものでしょうが、果たして必要だったか……。左膳の存在そのものが、武士道に背をむけたニヒリストの象徴(主人公を隻眼隻手にすることにより、五体満足=正常な世界を否定している)ですからね。

 

左膳が隻眼隻手になって1年後から本筋の物語が始まります。

将軍の側近・愚楽老人は、柳生家の取り潰しと、百万両の黄金を奪うために、日光修築工事を柳生家に命じます。この映画では、愚楽老人と蒲生泰軒が悪の代表として描かれています。

柳生対馬守は先祖伝来の“こけ猿の壷”に百万両の黄金の秘密が隠されていることを知り、弟・源三郎が国許からこの壷を江戸へ運んできます。しかし、源三郎の一行は、愚楽老人配下の蒲生泰軒一味に道中を襲われ、“こけ猿の壷”は偶然チョビ安の手に……。

“こけ猿の壷”がラグビーボールのように、柳生家家臣と蒲生泰軒一味の間で、取ったり取られたりするアクションは楽しませてくれますよ。

 

蒲生泰軒一味に追われたチョビ安はボロ小屋に逃げ込みます。そこは丹下左膳の住家で、飛び込んだ泰軒の手下が斬られて出てくるところは、演出の常套手法ですが見せてくれますね。

泰軒一味に加え、柳生源三郎とその家臣にも取り囲まれた左膳は、盗みに入った愚楽老人の屋敷でこの壷の話を聞いて、漁夫の利を得ようと虎視眈々壷を狙っていた鼓の与吉と、櫛巻お藤に助けられます

 

豪快なアクション時代劇には定評のある五社英雄監督は、随所に見せ場を盛り込んで、最後まで楽しませてくれますが、中村錦之助の左膳は力演ながら、中途半端な気がしましたね。冒頭の隻眼隻手になった怨念と、“こけ猿の壷”の物語がリンクしてないからでしょうね。

 

ところでこの作品には、大友柳太朗が大岡越前守で出演しています。この騒動の裁定を下す重要な役どころで、重厚な演技が光っています。この頃には、演技に臭さも消えて、風格がにじみ出ていました。

 

 

 

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