長門勇のチャンバラ


『道場破り』(1964年・松竹/監督:内川清一郎)

原作は山本周五郎の『雨あがる』です。『雨あがる』は原作を忠実に映画化した同名作品(1999年/監督:小泉堯史、主演:寺尾聡)や、藤田まことが主演したTVシリーズ『夫婦旅日記・さらば浪人』がありますが、この作品は原作の設定をかなり変えています。

主人公の三沢伊兵衛(長門勇)は、主君の側室に召し出された家老の娘(岩下志麻)を助けて逃亡しているという設定です。伊兵衛は道場破りや賭け試合で路銀を稼いでおり、負かした相手や城の追手との立回りがたっぷりあるチャンバラ映画となっています。同じ道場破りを商売としている丹波哲郎がライバルね。

長門勇はテレビ時代劇『三匹の侍』で人気が出て、これが映画主演第1作目です。心根が優しく、見かけは平凡だが剣の腕前は一流という主人公のキャラが似合っていましたよ。

 

『続・道場破り/問答無用』(1964年・松竹/監督:菊池靖&松野宏軌)

原作は山本周五郎の『大炊介始末』で、前作とはキャラも内容も全く異なるものです。柳生家と同じように剣で徳川家に仕える田宮家の跡取り・大炊介(長門勇)が妹(鰐淵晴子)の許婚者(菅原文太)を無礼討ちにして、所領の紀州で謹慎することになるんですが乱行が続き、武者修行から帰ってきた丹波哲郎が討手としてやって来ます。

大炊介乱行の謎解きサスペンスと、長門勇や丹波哲郎の立回りの魅力をミックスさせたチャンバラ映画なんですが、悩める貴公子という主人公のキャラと長門勇のキャラが合っていないのが難点ですね。

ところで、監修:内川清一郎となっていましたが、何らかの事情で監督ができなくなったのでしょうか。

画像は、『続・道場破り/問答無用』の長門勇と丹波哲郎。劇中シーンのない、宣伝スチールのためだけの写真です。

 

『いも侍・蟹右衛門』(1964年・松竹/監督:松野宏軌)

気ままに旅をしている蟹右衛門(長門勇)は、父親が川に落ちて行方不明になった子どもの面倒をみることになり、従兄弟の金次郎(宗方克己)が塾頭をしている道場に向かう。同じ頃、道場破りを生業にしている無法剣客集団も金次郎の道場へ向かっており……

世話になったヤクザ一家の娘(倍賞千恵子)の手助け、面倒をみた子どもの父親(蜷川幸雄)が仇討するのを助太刀、掘雄二を首領とする道場破り集団との対決、邪剣の使い手として道場を破門になった天知茂との決闘、それに女スリの野川由美子が絡んでと、内容的には盛りだくさんなのですが、演出がモタモタしていてチャンバラの面白味が出ていません。

長門勇が相手の刀を搦めてクルクル回し、はじき飛ばす殺陣は面白いのですが、軽い竹光だから可能なのであって、リアリティは薄いですね。

 

 

『いも侍・抜打ち御免』(1965年・松竹/監督:松野宏軌)

献上牛の品評会で賑っている峯山藩にやってきた蟹右衛門(長門勇)は、牛鑑定人の久左衛門(細川俊夫)の世話により獣医となる。久左衛門は自分の牛が選ばれなかったことを逆恨みした豪農の藤兵衛(浜田寅彦)に殺され、選ばれた牛も殺される。藩の番頭(須賀不二男)は藤兵衛と結託して私腹を肥やしており、見て見ぬふり。結婚のためにお国入りしたお姫さま(鰐淵晴子)がそのことを知り、番頭に命を狙われるが、蟹右衛門がお姫さまを助けて……

献上牛に選ばれた百姓の若者役で倉丘伸太郎が出演しているのですが、柔道技で悪党たちを投げ飛ばすのに違和感があります。当時彼が主演していたTVドラマ『姿三四郎』の人気を利用したのでしょうが、百姓の若者がどうして柔道を知っているんだ。

お姫さまをナンパするヤクザの宗方克己も、辻斬りの弟を蟹右衛門に殺された藩士の天知茂も中途半端な扱いで、キャラがたっていません。前作と同様に松野宏軌はモタモタした演出で、立ち回りでの緊迫感がなく、散漫な内容となっています。長門勇のキャラだけを頼りにしている感じの、安直な製作で〜す。

 

 

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