伝七捕物帖


『伝七捕物帖・美女蝙蝠』(1957年・松竹/監督:福田清一)

染物屋で発見された発見された死体に礫の痕があったことから伝七(高田浩吉)は殺人事件と判断する。子分の竹(伴淳三郎)が死体の男を目撃しており、男と言い争いをしていたお駒(嵯峨三智子)に事情を訊くと、お咲という娘と間違えて詰め寄ってきたとのこと。ヤクザに絡まれているお駒を政吉(大谷友右衛門)という謎の男が助ける。男の墓を詣でていた政吉(大谷友右衛門)を偶然目にした伝七は、政吉を尾行すると鉄五郎(戸上城太郎)一家に入っていった。その頃、伝七の愛妻お俊(草笛光子)の父で目明しの万五郎が船奉行・久世但馬(北龍二)の屋敷近くで殺される事件がおきる。礫の痕があり、伝七は同一犯人と考える。万五郎は献上品の金塊を積んだ本間家の船が半年前に沈んだ事件を調べており、殺された男と政吉、鉄五郎がその事件に関係しており、背後に久世但馬がいることを推理する。腰元にばけて久世邸に入り込んだお俊は、地下牢に閉じ込められているお咲(の二役)を発見する。お咲は殺された男の娘で、背中には金塊の隠し場所を示す蝙蝠の刺青が施されていた。お俊はお咲を逃がすが、久世但馬の腹心・矢源太(石黒達也)に捕まってしまい……

シリーズ7作目。蝙蝠を操る不気味な老婆、ケロイド顔の山伏、洞窟に暮す原始人的大男などを登場させ、怪奇趣向を狙っていますが、物語展開においてあまり意味をもっていません。突然殺される目明しの万五郎は伝七の愛妻お俊(草笛光子)の父という設定ですが、草笛光子は二代目お俊で、父親は伊豆火薬庫の番人だったはずです。万五郎の娘は死んだ初代お俊(月丘夢路)ね。

嵯峨三智子の背中に施されていた金塊の隠し場所を示す蝙蝠の刺青もあまり意味を持っていないし、はっきり言って適当に書かれたシナリオです。ラストでは、♪〜みんな御用のときがきた〜と、能天気に高田浩吉が歌いながら現れ、黒幕と実行犯を捕まえてメデタシメデタシ。お俊が捕まっていた場所に証拠の金塊があったからいいようなものの、見込みだけで船奉行を御用にすることはできませんよォ。

 

『伝七捕物帖・銀蛇呪文』(1957年・松竹/監督:福田清一)

薬問屋の近江屋の妻が自殺し、横笛を吹く幽霊が現れ、近江屋の次女が殺される。長女と恋仲の手代・伊乃吉(高野真二)が犯人として追われ、伝七(高田浩吉)の女房お俊(福田公子)の幼馴染の花魁お袖太夫(嵯峨三智子)のところに隠れる。伝七は同心の橘三四郎(小笠原省吾)と捜査を開始する。自殺した妻の顔がつぶれていたことに不審を抱いた伝七が墓をあばくと、思っていた通り別人だった。近江屋が甲府勤番・山内日向守(石黒達也)が密かに栽培している麻薬を売っていることを伝七は掴むが、山内日向守も近江屋も殺されてしまい……

シリーズ8作目。復讐に絡んだ殺人事件を、顔なし幽霊の笛に操られる猛毒銀蛇と、怪奇趣味に彩られた内容にしています。小笠原省吾と嵯峨三智子が愛しあうようになった経緯が説明不足なんですが、ご都合主義の当時の平均的捕物帖映画といえるでしょう。

 

『伝七捕物帖・女肌地獄』(1959年・松竹/監督:酒井欣也)

花嫁誘拐事件が続発する江戸の町で、湯女が殺される。伝七(高田浩吉)が湯女の友人おくめから事情を聞くと、湯女は下引きと駆け落ちしようとしていて、成田山のお札をおくめに預けたという。駆け落ちしようとしていた下引きも死体で発見され、懐からアヘンが発見される。伝七はおくめの護衛に子分の竹造(名和宏)をつけるが、おくめは殺され、成田山のお札もなくなっていた。奥山で男の変死体が発見され、医師・尾形玄庵(石黒達也)が検診すると男が麻薬中毒者だったことがわかる。男の首にかけていた守札に不審を持った伝七は、守札の出所である酒場に潜入するが、女将のお蝶(泉京子)に見つかってしまい……

シリーズ10作目。連続花嫁誘拐事件とアヘンに絡まる殺人事件とくれば、誘拐された花嫁はアヘン密輸の商品にされると考えるのが筋ですが、蝋で覆って人形にするとは江戸川乱歩の世界ね。花嫁を誘拐するのがゴリラ男やセムシ怪人というのもね。犯人は怪人二十面相ならぬ三面相。伝七がアレコレ推理する前に犯人が勝手に動き回って御用となります。

伴淳は“二等兵物語”などで主演するようになり、顔見せにワンシーン登場するだけ。子分は名和宏になり、恋女房のお俊もこれまでのシリーズでヒロイン役だった嵯峨三智子に変わりました。変わらないのは悪役の石黒達也だけ。いくら悪役の層が薄くても、毎度同じ顔ぶれでは登場しただけで犯人がわかりま〜す。

 

 

 

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