SF映画いろいろ


『第9地区』(2009年/監督:ニール・ブロンカンプ)

南アフリカ・ヨハネスブルグの上空に巨大な宇宙船が漂着し、異星人を難民として受け入れ、その居住区が第9地区なんですな。20年経って第9地区はスラム化し、異星人の人口が増えたこともあって、新たな難民キャンプへ強制移住させることになります。その責任者となったヴィカス(シャールト・コプリー)は、立ち退き通達をしてまわる最中に謎の液体に触れて、異星人に変身し始めます。その液体は宇宙船を動かす司令船の燃料で、異星人のクリストファー・ジョンソンが20年かけて抽出していたものでした。ヴィカスは人体実験されそうになって秘密の施設から逃げ出し、クリストファー・ジョンソンに協力して液体を取り戻そうとしますが……

知らない監督・役者によるB級SF映画と思っていたのですが、異星人を含めた登場人物のキャラ、社会的テーマ、ユーモア、アクションを巧く配合した上出来作品でした。

手際よく第9地区の説明がされ、ドキュメンタリータッチでいきなり本筋に入る手法は見事なものです。

主人公の腕が変身したところまではムダがなかったのですが、その後、いろいろ詰め込みすぎましたね。ギャング団の存在は、必要不可欠と思えず、その辺をうまく処理して90分程度の作品にしたら大傑作になったような気がしま〜す。

 

『インセプション』(2010年/監督:クリストファー・ノーラン)

夢の中でアクションが繰り広げられるSFクライム映画です。渡辺謙が出演しているので観たのですが、なかなか優れものの作品でした。

主人公(レオナルド・ディカプリオ)は、相手の夢の中に入り、潜在意識の中にある価値ある情報を盗み出す産業スパイなのですが、潜在意識にこちらに都合のよい情報を植えつける(インセプションと云うらしい、一種の催眠犯罪ね)仕事を渡辺謙に頼まれるんですな。

仲間と夢を共有したり、夢が多重構造になっていたりと、複雑なストーリーとなっています。この手の映画は好き嫌いが分かれるでしょうね。監督の遊び心も理解しないといけないしね。

主人公の新入仲間にアリアドネ(エレン・ペイジ)がいるんですが、夢の構造や主人公の心象などを観客にわかりやすく説明する存在になっているんですね。ギリシャ神話でミノタウロスの迷宮から英雄テセウスの脱出を手助けする女性がアリアドネで、観客を映画の迷宮から助ける意味あいでアリアドネという名前にしたと思いますよ。

マリオン・コティヤールの出演と使われている音楽との関係とか、探せば監督の遊び心は色々あるようです。

夢か現実かわからないようなラストについては、主人公の夢の世界だと思いま〜す。

 

『フェーズ6』(2009年/監督:アレックス・パストール)

謎のウイルスによる感染によって人類滅亡目前の終末世界を舞台に、兄弟カップル(男女4人)が思い出のビーチを目指して旅するSFロードムーヴィです。

少ない出演者に知らない役者と、SFXにも金をかけておらず、低予算映画の見本みたいな作品ね。

感染した父娘や恋人を置き去りにしたり、ガソリンを奪うために殺したりと、主人公たちの目的が、ただ自分たちが生き残るためというのは全く共感できませんな。アメリカ人の一般的な考えなんですかね。東日本大震災で助け合っている日本人の姿をみると、終末世界に生き残るのは日本人のような気がしますねェ。

 

 

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