和製吸血鬼


『女吸血鬼』(1959年・新東宝/監督:中川信夫)

ヒロイン(池内淳子)の誕生日に、20年前に行方不明になった母親(三原葉子)が齢もとらずに、昔の美しい姿のままで帰ってくる。その時から奇怪な事件が起こりはじめ、ヒロインの新聞記者の恋人(和田桂之助)が調査するが……

橘外男の怪奇小説「地底の美肉」を映画化。天草四郎の家臣だった男(天知茂)が、女の生血を吸って現代まで生き続けている。月の光を浴びると形相が変わり、苦しむというのは吸血鬼でなく狼男ではありませんか。

出だしは怪奇ムードいっぱいで、ブキミな雰囲気がよく出ています。小人、老婆、坊主男なんてムード満点。後半の“地底城”探しから物語が破綻してきて、最後はなんじゃ、こりゃあ。

変身した天知茂はお笑いですが、素顔の天知茂は吸血鬼のニヒルさが出ていてよかったですよ。グラマラスな三原葉子にも満足、満足。

 

『花嫁吸血魔』(1960年・新東宝/監督:並木鏡太郎)

舞踊学校でバレーを学ぶ藤子(池内淳子)は、舞踊学校の同級生・早苗の兄・貞夫(寺島達夫)から結婚を申し込まれていたが、病人の母と家の借金のため学校をやめ、芸能記者の大田(高宮敬二)の紹介で映画会社に入社する。

藤子は早苗に誘われてピクニックに行くが、英子、喜代子、里枝の三人が一緒だった。英子は恋人の大田が藤子に心変わりしたことから、喜代子はヒロインの役を藤子に奪われたことから、里枝は貞夫を愛していたことから藤子を憎んでおり、三人は藤子を崖から突き落とす。藤子は一命は取りとめたものの顔に傷を負い、女優の道を断たれる。病院から戻ってみると母は自殺しており、遺書により曾祖母のお琴を訪ねる。水鏡に写った自分の顔は醜く、悲観した藤子は自殺する。しかし、お琴の呪術によって藤子は甦り……

不気味な音楽が流れ、セムシ男と妖婆が現れ、コウモリの生血を吸うオープニングは怪奇ムードに溢れていて期待させるのですが、池内淳子が毛むくじゃらの化物になったのには、笑ってしまいましたねェ。

猟銃で射たれて死ぬ化物なんてズッコケます。池内淳子がテレビの昼メロ(『日日の背信』)で人気の出てきたのが気に入らなかった社長の大蔵貢が、池内を毛むくじゃらの化物にしたという逸話が残っていますが、本当か嘘かわかりませ〜ん。

 

『血を吸う人形』(1970年・東宝/監督:山本迪夫)

婚約者に会いに行ったきり帰らぬ兄(中村敦夫)の消息を訪ね、圭子(松尾嘉代)は恋人(中尾彬)と共に兄の婚約者・夕子(小林夕岐子)の屋敷を訪ねる。だが、夕子の母親(南風洋子)は、夕子は交通事故で死亡しており、兄は既に帰ったと言う。疑惑を抱いた二人は屋敷に泊まることになり、その夜、圭子は血まみれの手をした夕子を目撃する。翌日、土葬された夕子の棺を高木が開けたところ、棺の中は空っぽだった……

 山本監督が語るところによると、吸血鬼を思わせる人物設定が観客の理解を得るか危ぶんでいたそうです。そのため、この作品では吸血シーンはありませんが、ゴシック・ホラーの雰囲気は充満しており、新東宝の怪奇映画とは違った味わいになっています。

 白いネグリジェ姿で、不気味に輝く眼をした小林夕岐子が最高!

 

『血を吸う眼』(1971年・東宝/監督:山本迪夫)

柏木秋子(藤田みどり)は妹の夏子(江美早苗)と富士見湖畔で絵を描いて過していた。秋子は、少女時代から“巨大な金色の眼”の幻想に悩まされており、無意識のうちに油絵にそれを描いてしまう。ある日、隣のレストハウスに大きな棺が届けられる。その夜から管理人の久作(高品格)の様子がおかしくなる。秋子は医者である恋人の佐伯(高橋長英)に相談に行くが、佐伯は血液を大量に失った女性患者の診察で忙しかった。女性患者の首筋には、咬み痕のような傷口が二つ。その娘が倒れていたのは富士見湖畔であった。富士見湖畔の家に戻った秋子の前に、金色の眼をした男(岸田森)が現れ……

前作でハマー的ホラーに対する顧客の拒絶反応が意外と少なく、正面きって山本監督が吸血鬼に取組んだのがこの作品。

棺桶が届く導入部の見事さ、恐怖を生む技法、まさにB級ホラーの面白さを堪能できました。なかでも岸田森の吸血鬼は最高。その繊細な演技は、吸血鬼の持つ存在の悲哀を感じさせるんですね。

 

『血を吸う薔薇』(1974年・東宝/監督:山本迪夫)

八ヶ岳山麓にある女学園に東京から白木(黒沢年男)が新任教師として着任する。学長(岸田森)に招待され、学長邸に泊った白木は、その夜、二人の女性を目撃する。ひとりは死んでいるはずの学長夫人(桂木美加)だった。翌朝、白木は地下室の入り口を発見し、中に入ると祭壇と黒い棺が置かれていた。棺の中は学長夫人の遺体だった。舎監室に移った白木は、三人の寮生および校医の下村(田中邦衛)と知り合う。下村から生徒の蒸発事件と、土地にまつわる妖怪伝説を聞かされた白木は……

吸血鬼に襲われるのは、白い肌をした女性でなければなりません。女学園を舞台にしたのはグッド。200年前に起こった吸血鬼事件が現代に甦るのですが、設定に無理がなく、山本ワールドを構築していますね。

それにしても、岸田森の吸血鬼は素晴しいなァ。

 

『吸血鬼ゴケミドロ』(1968年・松竹/監督:佐藤肇)

旅客機が謎の発光体と遭遇し岩山に不時着する。生存者は副機長の杉坂(吉田輝男)、スチュワーデスにかずみ(佐藤友美)、次期総理候補の代議士・真野(北村英三)、実業家の徳安(金子信雄)とその妻・法子(楠侑子)、精神科医の百武(加藤和夫)、宇宙生物学者の佐賀(高橋昌也)、自殺志願の青年・松宮(山本紀彦)、夫をベトナム戦争で亡くした米女性のニール(キャシー・ホーラン)、そして外国大使を暗殺した殺し屋の寺岡(高英男)だった。寺岡は機外へ逃げ出すが、額を傷つけて戻ってくる。寺岡は、謎の発光体に吸い込まれ、宇宙生物ゴケミドロに身体を乗っ取られて吸血鬼に変貌していた。百武が最初の犠牲者となり……

高久進と小林久三の共同脚本なので真面目なSFホラーかと思いきや、とんでもないシュールな作品でした。カルト・ファンがいるのが納得できます。

時限爆弾を上着の内ポケットにいれている自殺志願の青年とか、日本語で話す乗客の会話を全て理解していながら、英語でしか喋らない米女性とか、まともな人物はひとりもいません。

中でも秀逸なのが欲望まるだしの代議士先生。不時着した機内で実業家の妻と抱き合ったり、米女性に「お前は外人だから、犠牲になれ」と言ったり、喉が渇いているのに水をくれない実業家へ、「サンダル屋から政府指名の軍需工場にしてやったのは、誰のおかげだ」などと、目がテンになるようなセリフがポンポンとびだします。

人類滅亡をテーマしたSFホラーですが、こんな人物ばかりだと、確かに人類は滅亡しますねェ。(笑)

 

 

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