サスペンス・ホラー


『ザ・キープ』(1983年/監督:マイケル・マン)

第二次世界大戦中の東欧の村にドイツ軍がやってくる。彼らは古い城に駐屯するが、指揮官のボーマン大尉(ユルゲン・ブロクロウ)は、その城が何かを閉じ込めるように建造されていることに気づく。その頃、グレッケン(スコット・グレン)は、邪悪な存在を感じ、ギリシャの港町から東欧の村に向けて旅立つ……

アルプス山中の、断崖絶壁のクネクネと曲がる細い道を進むドイツ軍のトラック部隊の映像にタンジェリン・ドリームの音楽がかぶさる冒頭シーンは、ミステリアスな雰囲気で最高です。これは面白くなると思ったのですが、邪悪な存在が実体を持って現れてからはメロメロ。

私は原作(F・ポール・ウィルソンの「城塞」)を読んでいないので、今イチ内容がつかめなかった(グレッケンの正体がよくわからなかった)のですが、魔物をあんな怪物にせず、モヤモヤとしたままの方が恐怖感が出たと思いますよ。

ガブリエル・バーンとイアン・マッケレンは存在感があって良し。アルバータ・ワトソンはヌードを見せてくれるが魅力ありませ〜ん。

 

『ナインスゲート』(1999年/監督:ロマン・ポランスキー)

世界的な古書収集家(フランク・ランジェラ)から、古書ブローカー(ジョニー・デップ)が世界に3冊しかない悪魔の祈祷書「ナインスゲート」の調査を依頼される。古書収集家が所持している1冊を預かり、残りの2冊を調べに訪れる先々で殺人事件が発生し……

典型的なサスペンス・ホラー。『ローズマリーの赤ちゃん』もそうだったけど、ポランスキーは雰囲気で乗せるのが巧いですね。彼の演出には奇をてらったところがなく、落ちついて観ていけます。

ジョニー・デップは、この手の胡散臭い人物をやらせたら抜群です。私のお気に入りのレナ・オリンも悪女役で満足、満足。

ただ、ラストだけは、よくわからない。魔女のエマニュエル・セイナーとセックスして、デップはどうなったの?

 

『ジェヴォーダンの獣』(2001年/監督:クリストフ・ガンズ)

ルイ15世時代のフランス、ジェヴォーダン地方で正体不明の野獣に100人以上の女子供が殺される。自然科学者のフロンサックが調査にやってくるが……

前半はミステリアスで、これはイケルわいと思っていたのですが、野獣が姿を見せてからはムチャクチャ。ジャック・ペランがナレーションしている(本人も特別出演している)ので、まともな作品だと予想したんですけどね。

最近、前半のタッチと後半のタッチがコロッと変わる映画が多いけど、こんなのが現代的なのだろうか。オーソドックスな作品が好きな私としては、気に入りませんね。

人間50年以上生きてくると、経験という蠣殻が付いて感性が鈍くなってきますが、意外性とムチャクチャは違いますよ。

それにしても、内容からみて138分の上映時間は長過ぎま〜す。

 

『イナフ』(2002年/監督:マイケル・アプテッド)

ウェートレスのスリム(ジェニファー・ロペス)は、しつこく言い寄る男から助けてくれたミッチ(ビリー・キャンベル)と愛し合い結婚する。二人の間に娘も生まれ、幸せな夫婦生活に見えたが、ミッチは浮気を始める。そして、浮気を認めるようにと、スリムに暴力をふるいはじめる。離婚にも応じず、身の危険を感じたスリムは娘を連れて逃げ出すが……

ドメスティック・バイオレンスを題材としたサスペンス・ホラーと思っていたのですが、途中からアクション映画に様変わり。“ロッキー”のごとく、ジェニファー・ロペスが身体を鍛え、亭主と対決するとはねェ。テレビ東京が放送するに相応しい映画でした。

ところで、2005年度の警察が受けた配偶者からの暴力相談件数は約1万7千件だったそうです。被害者のほとんどが女性で、年代別では30歳代が約4割で、20歳代と40歳代が約2割ずつだったとのこと。

 

『ヴィレッジ』(2004年/監督:M・ナイト・シャマラン)

森に囲まれ、周囲と途絶した村に住むルシアス(ホアキン・フェニックス)は、森を通って町に行くことを希望するが、エドワード(ウィリアム・ハート)をはじめとする長老たちに森の魔物との協定を理由に拒絶される。ルシアスは精薄青年のノア(エイドリアン・ブロディ)が森に踏み込んで戻ってきたことを知っていたのだ。しかし、家畜が皮を剥れて殺されるという事件が起こり、森の魔物が姿を現す。ルシアスは町に行くことをあきらめ、エドワードの娘で、愛しあっている盲目のアイヴィー(ブライス・ダラス・ハワード)と結婚することになるが、アイヴィーに恋していたノアに刺され重傷を負う。ルシアスの治療に薬が必要となり、アイヴィーは森を通って町に行く決意をするが……

現実にはあり得ないミステリー・ゾーン的世界の物語です。その世界だけが1897年から時間が止まっているんですよ。シャマラン監督が考えているユートピア世界ですね。そうした特異な世界を舞台に、ラブ・ロマンスとサスペンス・ホラーを融合させています。演技陣も含めて、バランスのとれた好編だと思いま〜す。

 

『呪い村436』(2007年/監督:ミシェル・マックスウェル・マクラーレン)

国勢調査員(ジェレミー・シスト)がロックウェル・フォールズの村にやって来るんですな。この村は狂信的な宗教により人口は常に436人に保たれています。この秘密が外部に漏れないように村民が彼を村の住民にしょうとします。彼が増えることによって、村民の一人が“祭り”で歓んで自殺します。閉鎖社会なので、血が濃くならないように外部からの受け入れも必要なんですな。当然、主人公は村から脱出しようとしますが、そこにスリルがあるわけです。

知らない役者ばかり(シャーロット・サリバンという女優は美人だね)でSFXなしの低予算B級ホラーですが、好きですねェ、こんな映画。

 

 

 

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