大友柳太朗主演作品


『捨てうり勘兵衛』(1958年・東映)

監督:マキノ雅弘、原作:村上浪六、脚本:大和久守正、撮影:藤井晴美、音楽:鈴木静一

キャスト:大友柳太朗、大川恵子、進藤英太郎、堀雄二、山形勲、里見浩太郎、花園ひろみ、星十郎、堺駿二

 

一文無しの浪人・勘兵衛(大友柳太朗)は、財布を屑屋の長吉(星十郎)に捨売りしたことから長吉の長屋に居候することになります。長吉の相棒が堺駿二で、星十郎と二人してコメディリリ−フとして実にいい味を出していますね。

勘兵衛が喧嘩請負商売をするために盛り場にやってくると、女歌舞伎の中村鶴吉(大川恵子)がヤクザ(吉田義男)に絡まれています。そこで、勘兵衛が鶴吉を助けるんですな。この辺りは、大友はんの持ち味が出ていて快調、快調。

この鶴吉が勘兵衛の許婚者だった志乃(大川恵子の二役)にそっくりなんです。志乃は殿様に見初められ、志乃を城に召し出すのに邪魔な勘兵衛が藩士に命を狙われて脱藩したのが3年前。自害してでも操を守るという志乃の言葉を胸に秘めて生きているわけです。

鶴吉が勘兵衛に恋心を抱いて芝居小屋に戻ると、座長の鬼熊(進藤英太郎)は鶴吉を好色な大身旗本・青山伊織(堀雄二)に売り渡そうと考えています。鬼熊の姦計で鶴吉は青山の餌食になるとところを間一髪で逃げ出しますが、追いかけてきた鬼熊の手下や青山の家来から守ってくれたのは、またしても勘兵衛。勘兵衛は鶴吉を自分の長屋に連れ帰り、翌日、武士を捨てる覚悟で売った小刀と印籠の金を持って鬼熊のところへ交渉に行きます。勘兵衛の腕前を知っている鬼熊は渋々承知。

芝居小屋から出てきた勘兵衛を見ていたのは、勘兵衛の旧友・川口周蔵(山形勲)で、川口から志乃は生きていて、殿様から寵愛を受けていることを知ります。裏切られた思いの勘兵衛は、殿様と志乃を斬る決意をしますが、川口は鶴吉と生きるように諭します。山形勲が奉公と友情の間にたって苦しい胸のうちを見せる好演です。

勘兵衛が鶴吉と生きることよりも、武士の意地のため藩邸に斬りこんで死ぬ道を選んだ時、深手を負った松太郎(里見浩太郎)が長屋にやってきます。松太郎は鶴吉の妹分・小袖(花園ひろみ)の恋人で、鬼熊は小袖を青山伊織に売り渡すことにしたんですね。それで、邪魔な松太郎を殺そうとしたわけです。事情を聞いた勘兵衛は怒りに燃えて鬼熊を斬り、小袖を長屋へ連れて帰ります。そこへ、お忍びで殿様が川口と長屋にやってきます。殿様は勘兵衛に両手をついて謝ります。武士の意地を捨てた勘兵衛は武士も捨て、鶴吉と旅回りの一座へ……メデタシ、メデタシ。

ラブシーンなどでは臭いところもあるのですが、大友柳太朗の持ち味が出ています。マキノ演出は画一的なのですが、娯楽時代劇の正統を行くものですね。傑作とはいえませんが、気分よく楽しめる作品で〜す。

 

 

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