大友柳太朗作品集2


曾我兄弟・富士の夜襲(1956年・東映/監督:佐々木康)

日本三大仇討の一つ、曾我兄弟の物語。父・河津三郎祐泰が工藤祐経(月形龍之介)に殺された曾我十郎(東千代之介)と五郎(中村錦之助)の兄弟が、源頼朝(片岡千恵蔵)が催した富士の巻狩りで、祐経の陣屋を襲って仇を討つのです。

父の姓が河津なのに、何故曾我兄弟かというと、母が曾我太郎祐信と再婚したからです。

月形龍之介が憎々しくて、これぞ悪役といった最高の演技を見せています。千代之介と錦之助がひきたつのは、月形トッツァンの存在のおかげですね。

畠山重忠の大友柳太朗は儲け役。幼い曾我兄弟が祐経の諫言で処刑されそうになるのを必死の嘆願で救ったり、仇討の時は兄弟にそれとなく祐経の陣屋を教えたりと、武士の情を知る理想のサムライとなっています。大友はんだから、納得感があるんですよ。好きだなァ、東映時代劇。

 

ゆうれい船(1957年・東映/監督:松田定次)

父・重兵衛(大河内伝次郎)の観音丸がルソン沖で遭難し、父が死んだと知らされた次郎丸(中村錦之助)は、侍になろうと叔父の五郎太夫(進藤英太郎)を頼って京の都へやってくる。松永弾正(月形龍之介)の圧政により京の都は荒れ果て、庶民は塗炭の苦しみにあえいでいた。次郎丸は庶民に味方する左馬之助(大友柳太朗)や雪姫(長谷川裕見子)と知り合い、五郎太夫が弾正と結託する悪徳商人だということを知る。雪姫は弾正の手勢に捕らえられるが、次郎丸は左馬之助と一緒に姫を救い出し、海上へ逃れる。すると観音丸に似た“幽霊船”が現れる。(ここまでが前編)

堺に着いた次郎丸たちだったが、海賊・弥三蔵(山形勲)に雪姫が拐われてしまう。弥三蔵の海賊船は幽霊船と遭遇し、手痛い目にあわされる。弥三蔵は復讐するために幽霊船を追って琉球へ。次郎丸たちも海賊船を追って船出する。海賊王だった悪竜王(薄田研二)が支配する幽霊島が幽霊船の本拠地と考えた弥三蔵は……

少年向けに書かれた大仏次郎の冒険時代小説の映画化。

雪姫を奪還するチャンバラ・シーンなどに見どころはありますが、京の都が舞台の前編より、海洋スペクタクル溢れる後編の方が格段に優れています。ミニチュアでなく、大きな木造船を海に浮かべての撮影ですからね。映画全盛期だったから可能だったわけで、現在ではとても製作費用が出ないでしょう。

この作品で大友柳太朗は、錦之助にオジサンと呼ばれる良い子の味方です。当時の子供たちにとって大友柳太朗は頼れるオジサンでしたねェ。

でもって、この作品での錦之助の年齢設定は15〜6歳で少しムリがあるのですが、三島雅夫や原健策の少年姿はムリを通り越して、目がテンになりました。

 

天下の伊賀越・暁の血戦(1959年・東映/監督:松田定次)

何度も映画化されている荒木又右衛門の伊賀上野での仇討物語。

又右衛門が市川右太衛門で、渡辺数馬が息子の北大路欣也。稚児趣味はないけど、北大路欣也は色気があって可愛いで〜す。

川合又五郎には岡田英治。他には大川橋蔵、大友柳太朗、里見浩太郎、月形龍之介、山形勲、大河内伝次郎、長谷川裕見子、丘さとみ、花園ひろみ、戸上城太郎、阿部九州男、吉田義夫といった人気スターから悪役まで、東映のお馴染みスターが顔を揃えた豪華版。

  右太衛門と月形の友情と対決、北大路欣也と丘さとみの恋、旗本と大名の確執と盛だくさんな内容で退屈はしません。チャンバラシーンも多いしね。だけど、特筆すべきところは、何もないんだよなァ。良き時代の娯楽映画の定番スタイルといってよいでしょう。

でもって、我らが大友はんですが、将軍家剣術指南番・柳生宗冬の役で、又右衛門の腕前を試して大川橋蔵に推挙するんですな。大友はんらしい役どころでした。

 

黒の盗賊(1964年・東映/監督:井上梅次)

町作りよりも江戸城築城を優先する本多忠勝(大友柳太朗)の施政をただすために立花次郎(大川橋蔵)は将軍・秀忠に直言するが、本多忠勝の恨みを買うことになる。

その頃、武家屋敷を襲う黒の盗賊に町民の人気が集まっていた。築城の秘密を知る5人の棟梁が反逆の罪を着せられて処刑されそうになった時、黒の盗賊になりすました次郎と本物の黒の盗賊が現れ、5人を救う。

黒の盗賊は徳川に土地を追われた武蔵一族で、江戸城の秘密との交換で領土を得ようとしていた。そして黒の盗賊の首領・武蔵小太郎(大川橋蔵)は、赤ん坊の時に別れ別れとなった次郎の双子の兄弟だった……

コメディタッチとコメディは違うものなんだけど、どっちつかずの作品になっています。

結束信二、宮川一郎、井上梅次の3人が脚本担当しているので、バランスが崩れたんでしょうね。まともに作っても平凡な時代劇になるでしょうから、コメディタッチは賛成なんですが、無理に笑わそうとしています。藤山寛美の服部半蔵なんて、バカバカしくてシラケテしまいますよ。千秋実は悪役でも可笑しみがあって良い味を出していますが、大友柳太朗はどっちつかずになっています。大友はんの生真面目さからくる可笑しみが出ていませ〜ん。

 

 

 

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