鳳城の花嫁

(1957年・東映)


(スタッフ)

監 督:松田定次

企 画:マキノ光雄、大森康正

脚 本:中山文夫

撮 影:川崎新太郎

音 楽:深井史郎

 

(キャスト)

松平源太郎 …… 大友柳太朗

井筒屋おきぬ…… 長谷川裕見子

おみつ…… 中原ひとみ

檜垣権九郎  …… 田崎潤

家老・嘉門  …… 薄田研二

井筒屋    …… 志村喬

永野五郎左衛門… 進藤英太郎

 

花嫁ヤーイ! 春風・恋風・剣の風!
       暴れ旗本八万騎を蹴散らす 三国一の恋騒動!!

 

(物 語)

鳳城の若殿・源太郎は30歳になってもまだ独身だが、お見合いにはソッポをむく。しかし、父母や家老の心痛を察し、自分の嫁は自分で探すと書置きを残し、家出する。

道中、浪人の檜垣権九郎に衣装を古着にかえてもらって路銀を作り、江戸にやってきた。そしてひょんなことから、豪商井筒屋の姉妹おきぬとおみつの危難を救い、さらに翌日、姉妹を襲った旗本赤柄組の手先の三次が脅迫にきたのを追い払い、井筒屋に逗留することになる。源太郎はおきぬの美しさに胸をときめかし、おきぬも源太郎のことを快く思っている。妹のおみつは姉のために語らいの場を何度も作るが、口説き下手な源太郎は気分をぶちこわしてばかりいる。

その頃、鳳城では大殿が病に倒れ、源太郎探しにヤッキになっていた。これを知った赤柄組は、おきぬが侍の妻になるのを望んでいるのを利用し、檜垣権九郎を偽の使者に仕立てて、鳳城の若殿が彼女に会いたがっていると井筒屋をだまし、おきぬとおみつを連れ去る。赤柄組の屋敷で、姉妹があわやという瞬間、赤柄組の悪企みを知った源太郎が駆けつけてきた……

 

(感 想)

これは、東映が“画面3倍、興味100倍”という名キャッチフレーズで売出した日本初の色彩シネマスコープ作品です。大友柳太朗がこの記念すべき作品に主演したのは、当時の東映のスター序列で3番目だったからですよ。トップの片岡千恵蔵と市川右太衛門は重役スターで同格。オールスター映画では、画面に映るカット数まで同じにしたくらい気をつかっていました。ワイド画面が成功しても失敗しても、マズいわけですね。

松田監督の話によると、大川社長から渡されたシナリオは、暗い内容のワイド画面で撮る必然性のないものだったそうです。それで、面白く楽しく、みんながゲラゲラ笑えるようなものに変えたんですって。撮影にあたっては、役者さんがたくさん映るので、端の方であくびしたり、よそ見している人がいないか、そればかり注意していたそうです。

私は、この映画を3本立て30円(子供料金)の三番館で観たんですよ。これ以前にシネスコ・サイズのチャンバラ映画をすでに観ていたのでワイド画面の感激はありませんでしたが、大友柳太朗のすっとぼけた可笑しさに、場内爆笑だったのは今でも憶えています。

「ワシはタコが嫌いだ」は何度観ても笑えます。演技で笑わそうとするのでなく、バカがつくくらい真面目な性格からくるキャラクターで、自然なんですよ。

気楽に笑って見られる映画が少なくなった現在、こんな映画もいいもんですよ。

 

 

 

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