十兵衛暗殺剣

(1964年・東映)


(スタッフ)

  監 督:倉田準二

  企 画:森義雄、秋元隆夫

  原 作:紙屋五平

  脚 本:高田宏治

  撮 影:わし尾元也

  音 楽:鏑木創

 

(キャスト)

  柳生十兵衛 ……近衛十四郎

  幕屋大休  ……大友柳太朗

  城所早苗  ……河原崎長一郎

  美鶴     ……宗方奈美

  お篠     ……岡田千代

  徳川家光  ……林真一郎

  庄田喜左衛門……内田朝夫

  柳生但馬守 ……香川良介

 

剣林血路を断つ、危うし十兵衛!

    柳生一門の興亡賭ける惨たる湖上の死斗!!

 

(感 想)

1961年に始まった近衛十四郎主演の“柳生武芸帳シリーズ”最終作。といっても、原作は紙屋五平で、五味康祐の『柳生武芸帳』とは異なるオリジナル作品。

新陰流の正統を名乗る幕屋大休は、将軍家剣法指南役の柳生新陰流に取って代わるべく、江戸で道場を開く。野駆けに出た将軍の前で大休は十兵衛に挑戦するが、乱心者として将軍に無視される。

大休は柳生道場を挑発し、その挑発にのった柳生の門弟が二手に分かれて、大休と大休の道場を襲うが、ひとりを残してことごとく大休と彼の門弟に殺される。

事態を重くみた幕府は、十兵衛に大休を倒すように命じる。十兵衛は手練れの門弟を率いて、大休が待つ琵琶湖・竹生島へ向かう。

大休は、幕府に追われている琵琶湖の盗賊集団・湖賊を味方につけ、湖上を行く十兵衛一行を襲わせる。湖賊の攻撃により門弟を全て倒された十兵衛は、ただ一人となって大休に戦いを挑む……

チャンバラ名人の近衛十四郎と、チャンバラの迫力は特級品の大友柳太朗の対決ですから、チャンバラファンとしてはこたえられませんよ。

この作品の大友柳太朗は格段にイイんだなあ。殺気が身体から滲み出ていますよ。床几に腰掛けて茶をすするだけの何気ない姿にも、それが感じられるんです。

両者の最初の対決では、白刃を抜き合わせた瞬間、大友大休が近衛十兵衛の着物の脇腹あたりを斬り裂いています。十兵衛は怖気づいて、“武術作法”を理由に大休の試合の申込みを拒みます。大友大休の貫禄勝ちですね。

この後、大休は挑発にのった10人ほどの柳生の門弟を斬りすてるのですが、その強いこと。両腕を鶴翼に拡げて威嚇し、斬りかかってくる相手をバッサ、バサ、ブスッ、ブス。小太刀の立回りで、これほどの迫力が出せるのは大友柳太朗しかいないでしょう。大友大休の小太刀の迫力は、近衛十兵衛の長剣の迫力を上回っていましたね。

両者の二度目の対決は竹生島で、御座船でひとり佇む大休に十兵衛は斬りかかりますが、刀を叩き折られて、命からがら湖水に飛び込んで逃げます。そして最後の対決では、十兵衛は刀のスペアを密かに用意しておいて、大休の油断を誘ってやっと勝つという有様。大友柳太朗の圧倒的存在感の前には、近衛十四郎の立回りも形なしという感じです。

この大友の存在感があったので、逆に近衛の悲壮感が納得性を持ち、スリルに満ちたチャンバラ映画の傑作になったのですけどね。

善対悪という単純な対決図式でなく、技対技の誇りをかけた男の戦いをチャンバラを通して謳いあげたのがこの作品です。この作品でシリーズは終了しますが、これ以上のものは期待できないので、まさにシリーズ最終作にふさわしいと思います。

 

 

 

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