右門捕物帖・片眼の狼

(1959年・東映)


(スタッフ)

監 督:沢島忠 

原 作:佐々木味津三

脚 本:高岩肇、鷹沢和善

撮 影:伊藤武夫

音 楽:鈴木静一

美 術:桂長四郎

 

(キャスト)

大友柳太朗 (むっつり右門)

堺駿二 (おしゃべり伝六)

進藤英太郎 (あばたの敬四郎)

喜味こいし (ちょんぎれ松)

里見浩太郎 (牛若の半次)

山形勲 (松平伊豆守)

桜町弘子 (おゆみ)

花園ひろみ (梢)

雪代敬子 (稲妻お由)

三島雅夫 (玄庵)

原健策 (大弓堂)

阿部九州男 (赤沢)

沢村宗之助 (猿回し)

 

江戸八百八町の難事件に

          むっつり右門の十手が唸る!

 

(感 想)

大友右門のシリーズ第1作目にして、シリーズ最高傑作。

“奇妙な果実”の如く、枝からぶら下がった首吊り死体が発見される冒頭シーンから、ラストの大立回りまでムダのない演出で画面に引き込まれます。

特に出だしは秀逸ですね。朝靄の中を“あば敬”と子分の“ちょんぎれ松”乗せた船が行く。葦野原の向こうに松があって、枝から何かがぶら下がっている。近づいて見ると死体が五つ。ビックリして“あば敬”がひっくり返る。進藤英太郎が絶妙な味を見せています。死体は町人姿なのですが、竹刀ダコがあったことから右門は彼らが武士と推理し、松平伊豆守に報告すると、伊豆守から彼らが消息を絶っていた公儀お庭番であったことを知らされます。将軍寛永寺参詣に備え、諸大名の動静を探っていたんですね。

その将軍参詣が五日後にせまり、“片眼の狼”から「あと五日」という挑戦状が届きます。犯人から届く、あと何日、あと何日という脅迫状が緊迫感を生むんですよ。それと、将軍を殺して、徳川幕府を転覆させるという大犯罪の捜査ですからスケールが大きいんですね。このシリーズは、後になるほど事件が小粒になり、大友はんの大立回りが少なくなって、魅力がなくなっていきます。

右門は五人が大弓堂の弓づるで首を絞められてことつきとめ、大弓堂に乗込みますが、大弓堂は殺されます。しかし、そこには新たな手がかりが残されており……てな具合に、犯人の方から墓穴を掘っていって、結局御用になるんですな。

最後の抜け道の坑道シーンで、本番が終って、大友はんが「昼か夜か」と監督に聞いたそうです。坑道の中で、昼も夜も関係ないのにね。

監督が「これは昼なんや」と答えると、「今僕は夜のつもりでやりました。もう一遍やらして下さい」と言ったそうです。それで、もう一度本番。だけど、監督はフィルムを回すふりをしてカット。結局、同じなんですね。大友はんらしい逸話で〜す。

 

 

 

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