1960年代の劇場公開西部劇


『ならず者たち』(1969年/監督:ヘンリー・レヴィン)

南北戦争の時、ガルト一家は勝手に南軍ゲリラを名乗って町々を荒らしまわった。長男・デビッド(ビンセント・エドワーズ)は、そのやり方に反発し脱走する。南北戦争が終わり、ガルト一家は無法者の集団となり、デビッドが妻子と平和に暮らす町に現れ……

妻を殺され、息子を誘拐された主人公が、血を分けた弟たちを殺し、最後は父親と対決する深刻ぶった暗くて重い西部劇。

1960年代後半のアメリカ西部劇には、この手の作品が多いんですよ。理屈抜きで楽しめるB級ウエスタンが姿を消し、マカロニ・ウエスタンが西部劇の主流になったのも当り前ですね。

狂信的な父親役にジャック・パランス、主人公に理解をしめすシェリフにネヴィル・ブランド。この二人は流石に西部劇役者としての年季が入っており、“ベン・ケーシー”のビンス・エドワーズとは違いがはっきりわかります。

それにしても、ビンス・エドワーズはひどかった。動きが重くて、颯爽としていないんですよ。絶壁の上でジャック・パランスに飛びつかれて無理心中されるのも無理はな〜い。

 

『5枚のカード』(1968年/監督:ヘンリー・ハサウェイ)

1880年、コロラド州リンカーンの町、ポーカーゲームに熱中していたヴァン・モーガン(ディーン・マーチン)が一息入れに外へ出た時、残った6人の間で諍いが起きる。流れ者の若者がイカサマをしたことから、ニック(ロディ・マクドウォール)ら5人が若者をリンチにかけたのだ。モーガンは止めようとしたが、ニックに殴り倒されてしまう。町を去ったモーガンはデンバーで暮らしていたが、リンチ事件の関係者が連続して殺された知らせが入り、自らも狙われることを察し、姿なき犯人と対決すべくリンカーンの町へ戻ってくる……

発端の設定が原作と異なるために、原作とは原題が異なっています。映画の原題の『Five card Stud』は、最初に配られた1枚のカードだけが自分が手札として相手にわからず、残りは配られる毎にテーブルの上にさらして、その度ごとに賭け金をつりあげていく方式のポーカーゲームのことです。

つまり、主人公にとっても犯人にとっても最後の持ち札が見えないという、スタッド・ポーカーの暗喩になっているんですね。この点は原作より成功していると思います。だけど、原作を知らない人でも、ロバート・ミッチャムが登場しただけで犯人が判りま〜す。

 

『最後のガンファイター』(1965年/監督:ポール・ランドレス)

ラス・タンブリンと

マリア・グラナダ

無法者のケッチャム一味が荒しまわるメキシコ国境地帯。ケッチャム(ジェームズ・フィルブルック)を捜していたジョニー(ラス・タンブリン)は、金塊輸送中の駅馬車に同乗し、襲撃してきたケッチャム一味を撃退する。メキシコへ逃れたケッチャムを追ってジョニーもメキシコへ。山賊のモラレス(アルド・サムブレル)の襲撃から大牧場主(フェルナンド・レイ)を救うが、敵の銃弾でジョニーは負傷する。牧場主の娘ピラル(マリア・グラナダ)がジョニーを看護し、二人は愛しあうようになるが……

スペインとの合作で、アルド・サムブレルなどマカロニでお馴染みの悪役が顔を見せています。

母と自分を捨て、窮乏のうちに死んだ母親の恨みを晴らすために無法者の父親を追う息子(ラス・タンブリン)の物語。マカロニ的テーマですが、ドロドロした情念は描かれておらず、アッサリした内容になっています。

ラス・タンブリンは不良少年的イメージはあっても、翳りある雰囲気は持っていませんからねェ。射ち合いがふんだんにあり、暇つぶしで観るには退屈しません。

 

『ガンファイターが帰って来た』(1966年/監督:ジェームズ・ニールソン)

ガンマンのベン・ワイアット(ロバート・テイラー)は、旧友のドミンゴからの手紙で彼の牧場に駆けつけるが、彼の牧場は荒らされ、ドミンゴ夫婦は殺されていた。ドミンゴの娘アニサ(アナ・マルティン)が生きていることを知ったベンは、彼女が隠れている町に向かう。途中でリー・サットン(チャド・エベレット)という若者を助けたベンは、リーを追ってきた無法者3兄弟を一緒に倒し友情が芽生える。アニサに会ってドミンゴが殺された状況を聞いたベンは、犯人を捕える決意をする。アリサはリーの傷の手当をしているうちに、リーと愛しあうようになる。ベンとアリサは犯人を捜しにローズバーグの町に向かい、兄の牧場へ帰るというリーと別れる。ローズバーグで市の立つ日、アリサは父母を殺した犯人を見つける。それは、リーの兄クレイ(ライル・ベドガー)だった……

バート・ケネディの原案をロバート・バックナーが脚色。歯切れの悪い演出で、展開がモタモタしています。おまけに主演がロバート・テイラーなので、颯爽とした西部劇にはなりません。齢のせいか、さらに動きが重くなっていますからね。

ところで、悪党一味にブッチ・キャシディとサンダンス・キッドがいたのにはビックリしました。二人ともロバート・テイラーに射たれて死んじゃうから同名異人でしょう。(笑)

 

『レッド・リバーのガンマン』(1967年/監督:リチャード・ソープ)

スウォラの町の保安官ダン・ブレイン(グレン・フォード)は、西部にその名が知れたガンマンだった。ある日、川で釣りをしているとロット・マクガイア(チャド・エベレット)という若者が通りかかる。二人はすぐに打ち解け、魚を食べウイスキーを酌み交わした。ダンが自分の名を言うと、ロットの顔色が変わった。ロットはダンを倒して、名前を挙げようとしていたのだ。ダンの愛人ライザ(アンジー・ディキンソン)が、悪党(ジャック・イーラム)を使ってロットを殺そうとするが……

早射ち名人に挑戦する若者というのは、西部劇にはよくあるパターンです。名人が若者に、自分の若かった頃を思い出して親近感を抱くところが目新しいかな。冒頭の酒場での決闘シーンと、ラストの酒場でのカウンター沿いの決闘が見せ場ですね。

チャド・エベレットが珍しくリバース・ドローを見せていましたが、リバース・ドローではグレン・フォードの早撃ちには勝てませ〜ん。

ところで、原題は『The Pistolero of Red River』で、ピストレロという表現は珍しいですね。マカロニではよく使われているのですが、本場西部劇では、この作品が初めてじゃないかなァ。

グレン・フォード(右)

チャド・エベレット(左)

 

 

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