西部劇ランダム


『悪漢バスコム』

原題:BAD BASCOMB(製作:1946年)

監督:S・シルバン・シモン、原作:D・A・ロックスレイ

 

悪漢バスコム(ウォーレス・ビアリー)と呼ばれる無法者が、銀行襲撃に失敗して役人に追われ、モルモン教徒の幌馬車隊に身をかくす。幌馬車隊の一員で、お婆ちゃんと旅をしている小さな女の子エミー(マーガレット・オブライエン)がバスコムになつく。しかし、幌馬車隊がインディアンに襲撃され、その乱闘の最中に救援にきた役人に正体がバレ、バスコムは潔く役人に連行される。

冒頭の銀行襲撃での役人たちとの乱射乱撃シーンと、ラストのインディアン攻防戦は西部劇的カタルシスを満足させてくれますが、この映画本来の売りはウォーレス・ビアリーとマーガレット・オブライエンによる、ほのぼのとした人情ドラマなんでしょうね。

だけど、何故か退屈してしまうんですよ。個性派ビアリーと天才子役オブライエンは、確かに巧いのですが、あまりに定型すぎて古くさい感じをうけました。

 

『コロラド』

原題:THE MAN FROM COLORADO(製作:1948年)

監督:ヘンリー・レビン、原作:ボードン・チェース

 

南北戦争の終結時、北軍のオウエン大佐(グレン・フォード)は白旗を掲げている南軍を攻撃して虐殺する。親友のデル(ウイリアム・ホールデン)は彼の異常は戦争による一時的なものと考えたが、故郷に戻り連邦判事に就任したオウエンはますます凶暴になり、法の名のもとに次々縛り首を行う。オウエンの頼みで連邦保安官になっていたデルは、オウエンの狂気の殺人を非難して職を辞する。オウエンの妻・キャロリン(エレン・ドルー)は夫の日記を読んで、夫が精神異常であることがわかりデルに知らせる。キャロリンがデルの昔の恋人であったことから、オウエンは二人を殺すべく……

親友同士が敵味方になり、その間に双方から想われている美人がはさまるという西部劇のお馴染みのパターン。

ただ、戦争のトラウマによる精神異常をテーマにしているところが異色なものになっています。その点は社会派西部劇といえますね。ウイリアム・ホールデンは平凡ですが、グレン・フォードは目イッパイの臭い演技をして、狂気ぶりを発揮しています。

日記をめくるように、スタッフとキャストを紹介していくタイトルは、内容とマッチして面白いアイデアだと思います。

蛇足ですが、この作品では連邦保安官がUSマーシャルでなく、フェデラル・マーシャルになっていました。

 

『ネブラスカ魂』

原題:WHISPERING SMITH(製作:1949年)

監督:レスリー・フェントン、原作:フランク・H・スペアマン

 

バートン兄弟を追っていたウエスパリング・スミス(アラン・ラッド)は、列車を襲った彼らのうち二人は倒すが、自らも負傷して親友のマレイ(ロバート・プレストン)の牧場で養生する。マレイの妻・マリアン(ブレンダ・マーシャル)は、スミスの昔の恋人だったが、スミスは二人の幸せを見守っていた。しかし、マレイが列車強盗団の黒幕・レブストック(ドナルド・クリスプ)とつきあっていることがわかり……

スミスが残雪の残る山を下ってくる冒頭から、列車強盗のバートン兄弟を射ち倒すところまでは快調なのですが、マレイの牧場で養生するところからモタモタします。ラストに向けて対決ムードが盛り上がっていかないのが致命的ですね。

それと、アラン・ラッドの二挺拳銃は今イチ颯爽としておらず、ギコチないんですよ。

ヒロインのブレンダ・マーシャルも顔が大きくて少しも美人でなく、全然魅力的でありませ〜ん。

ところでスミスの職業ですが、トレイン・コップといっていましたが、警官でなく鉄道会社に雇われた探偵といっていいでしょう。

 

『ロンリーマン』

原題:THE LONELY MAN(製作:1957年)

監督:ヘンリー・レビン、脚本:ハリー・エセックス&ロバート・スミス

 

ガンマンのジェイコブ(ジャック・パランス)が14年振りに故郷の町に戻ってくるが、妻は自殺しており、息子のライリー(アンソニー・パーキンス)は冷たい眼を向ける。堅気の生活を始めるためにジェイコブは嫌がるライリーを連れて、知り合いの女エイダ(エレーヌ・エーキン)の牧場に落ちつく。この牧場の生活を通じて、ライリーは父が自分の考えていたような悪人でないことを知り、理解をしめし始める。そこへ、ジェイコブに恨みをもつキングフィッシャー(ネヴィル・ブランド)が現れ……
 悪役でないジャック・パランスが渋くて、良い味を出していましたね。

父と息子の葛藤、ガンマンの宿命が、情感豊かに描かれています。テネシー・アーニー・フォードが歌う主題歌も良いよォ。

悪党の名前がキングフィッシャーですが、実在した無法者とは関係ないようです。

 

『決断の3時10分』

サントラ・レコード

フランキー・レインの歌う

主題歌がグッとくるのだ

原題:3:10 TO YUMA(製作:1957年)

監督:デルマー・デイビス、原作:エルモア・レオナード、脚本:ハルステッド・ウェルス

音楽:ジョージ・ダニング

 

駅馬車強盗団の首領・ベン(グレン・フォード)が町で捕えられ、彼を護送する役に牧場主のダン(ヴァン・ヘフリン)が参加する。旱魃のため牧場の牛は死にかけており、ダンは水をひく費用が欲しかったのだ。

ベンの配下がベン奪還を考えており、保安官たちが囮となって配下をひきつけ、その隙にダンが3時10分の汽車でベンをユマの牢獄へ送る計画だったが……

タイトルクレジットの下を駅馬車が走る遠景から、駅馬車が手前に近づいてき、牛の群れが駅馬車の行く手を妨害する。グレン・フォード率いる強盗団の駅馬車襲撃を小高い丘の上から見ているヴァン・ヘフリン親子。この冒頭シーンの構図に凝った映像は、見応えがあります。奥行きがあって、広さを感じさせる画面作りになっていますね。

 内容の方はというと、リアリズムをあふれる作品となっていますが、“画竜点睛を欠く”感じのラストが気に入りません。

グレン・フォードとヴァン・ヘフリンとの間に友情が芽生えたとしても、冒頭の駅馬車襲撃のシーンで、部下を楯にとった馭者を部下もろとも射殺するくらい冷徹なキャラクターにしては、あのラストは甘過ぎます。グレン・フォードを悪役にしたことに無理がありますね。ユマで逃げ出すことができるなら、死んだリチャード・ジャッケルがバカみたい。

「物語を勝手に作るな」と言われるかもしれませんが、ヴァン・ヘフリンは傷つくが命だけは助けられ(グレン・フォードがヴァン・ヘフリンの命を助ける理由はある)、グレン・フォードは笑いながら去って行く。200ドルの夢が消え、ガックリしたヴァン・ヘフリンの顔に雨の滴が……なんてェのは、どうでしょう。

 

『カウボーイ』

原題:COWBOY(製作:1958年)

監督:デルマー・デイビス、原作:フランク・ハリスル、脚本:エドマンド・ノース

音楽:モーリス・ストロフ

 

ホテルマンのフランク・ハリス(ジャック・レモン)はカウボーイに憧れ、ホテルの泊り客だったカウボーイのボスであるトム・リース(グレン・フォード)に金を貸した縁で、カウボーイの仲間に加わるが……

これまたデルマー・デイビス西部劇。デルマー・デイビスの作風はリアリズムにありますが、この作品でも、荒野で牛を追う単調な生活、雨の中で寝ることもある寒々とした野宿、インディアンの襲撃といったカウボーイ仕事の辛い厳しい現実を描いています。

それと、拳銃稼業に嫌気がさしてカウボーイになったガンマン(ブライアン・ドンレヴィー)が、逢うのを楽しみにしていた旧友を射ち殺して(正当防衛)自殺したという知らせがはいるシーンは、ガンマンの孤独を間接的に描いていました。

ジャック・レモンは演技派コメディアンというキャラクターを確立する前で、後年の彼を知っている私としましては違和感を持ちましたね。喜劇演技とシリアス演技が混在しているんですよ。内容が内容だけにジャック・レモンというのは……?

それはそうと、洒落たタイトル・クレジットはソール・バスのデザインによるもので〜す。

 

『西部に賭ける女』

原題:HELLER IN PINK TIGHTS(製作:1960年)

監督:ジョージ・キューカー、原作:ルイ・ラムール

 

西部の町シャイアンに、東部からヒーリー劇団がやって来る。座長のトム・ヒーリー(アンソニー・クイン)は借金を背負っており、興行の失敗はできなかった。

主演女優のアンジェラ(ソフィア・ローレン)の活躍で興行は成功するが、アンジェラが殺し屋のマドリー(スティーブ・フォレスト)とポーカーをしたことから……

オープニングで、ぬかるんで泥々のメインストリートや、射ち殺された無法者を戸板にのせて写真を撮るシーンが出てきた時は、西部劇として本格的だと思ったのですが、あとは……ソフィア・ローレンとアンソニー・クインのラブロマンス・ウエスタン?

この頃のローレンは細くて、スタイルが良くて、お色気満点です。ローレンが劇中で歌っていますが、あれは吹替えですね。

天才子役と云われたマーガレット・オブライエンが出演していましたが、二十歳すぎればタダの人になっていました。自らをパロッているようなセリフがあったけど、笑えなかったなァ。それと、サイレント時代の大スター、ラモン・ナヴァロが悪役で出演していましたね。電信技師のチョイ役は、後年マカロニの『ネブラスカの一匹狼』で主演したケン・クラークだと思うのだけど……?

内容はともかく、出演者を見ているだけで楽しむことができました。

 

 

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