西部劇ランダム


『西部の無法男』

エドリアン・ブースと

ウィリアム・エリオット

原題:The Savage Horde(製作:1950年)

監督:ジョゼフ・ケイン

 

騎兵隊に追われていた無法者のリンゴ(ウィリアム・エリオット)は、反射的に拳銃を抜いて騎兵隊員の弟を傷つけてしまう。後悔したリンゴは拳銃を捨てる。2年後、恋人リビー(エドリアン・ブース)に会いにユタ州ガンロックの町にやって来る。その町はプロクター(グラント・ウィザース)が牛耳っており、小牧畜業者を痛めつけていた。リンゴは、そんな牧畜業者の一人・ララビー(ノア・ビアリー)をプロクターの手下から助けたことから、彼の家に世話になる。プロクターは判事を抱きこんで暴力を振るい、ララビーの仲間が殺し屋(ボブ・スティール)に殺される。リンゴは彼らを団結させて事にあたろうとするが……

ウィリアム・エリオットは1940〜50年代前半に活躍したB級西部劇スターで、戦後の西部劇ファンはエリオット西部劇で育てられたと云われているくらいです。エリオットの得意技である銃杷を前にしたリバース・ドローでの抜射ちを、この作品では見ることができませんでしたが、ボブ・スティールとの決闘シーンは見応えがありましたね。

ボブ・スティールは150本以上の西部劇に出演しており、戦前は主演作品も多々あります。戦後は傍に回り、悪役としての出演が多くなりました。日本でいうと、さしずめ原健策といったところでしょうか。

ラストで騎兵隊に捕まったリンゴが駆けつけてくるのですが、脱走したのか、騎兵隊が逃がしてくれたのか、よく解らないし、プロクターが口から血を流して死ぬのですが、流れ弾丸に当ったのか、自殺したのか、これまたよく解りません。そういった雑なところはあるのですが、退屈しない平均的B級西部劇で、私としては満足で〜す。

 

『三人のあらくれ者』

原題:Three Violent People(製作:1957年)

監督:ルドルフ・マテ

 

南北戦争が終わり、故郷の牧場へ帰る途中の町でコルト(チャールトン・ヘストン)はローナ(アン・バクスター)という女性と知りあい結婚する。牧場は悪辣な税務長官に狙われていたが、牧童頭のイノセンシオ(ギルバート・ローランド)によって守られていた。コルトがローナを連れて長官に挨拶に行った時、ローナの過去を知る男が現れる。ローナは南部の貴婦人でなく、酒場女だったのだ。コルトはローナを追い出そうとするが、ローナは既に妊娠しており……

題名に反して内容はメロドラマです。誇り高い大牧場主のチャールトン・ヘストンの性格が陰性なのに対し、良妻になろうと努力しているアン・バクスターが堂々として魅力的です。良識人間のギルバート・ローランドは儲け役。トム・トライオンはヘストンの不肖の弟役ですが、ヘストンの方に弟の気持ちを理解しない(ラストでは、そのことに気づいたようですが)性格的欠陥があるような気がしますね。捻くれていても、性格が陰性でないので男性的魅力を発揮しています。

それにしても、アン・バクスターを逆さに抱き上げて揺するような芸当は、大男のヘストンならではですね。

 

『月下の銃声』

原題:Blood On The Moon(製作:1948年)

監督:ロバート・ワイズ、原作:ルーク・ショート

 

友人のテイト(ロバート・プレストン)に呼ばれてサン・ダストの町へやって来たジム(ロバート・ミッチャム)は、途中で牧場主のラフトン(トム・タイリー)や、その娘のエミー(バーバラ・ベル・ゲデス)と出会うが敵がい心を持たれる。ラフトンはテイトと敵対していたからだ。ジムはテイトの仲間に加わるが、テイトのやり方には疑問を持っていた。テイトはインディアン管理人のピンダレスト(フランク・フェイレン)と組んでラフトンの牛を安く買い叩こうとしていた。その為、開拓者のクリス(ウォルター・ブレナン)を騙して仲間にしたり、テイトに恋しているラフトンの長女キャロル(フィリス・サクスター)から情報を聞き出したりしていたからだ。キャロルの情報により、テイトは牛を移動中のラフトンを襲い、牛を暴走させる。その時、クリスの一人息子をテイトの用心棒が殺すにおよび、ジムはテイトと手を切り、ラフトンにテイトの企みを伝える。怒ったテイトは……

ロバート・ワイズ監督の初期の作品で、演出の冴えが見られない平凡な作品です。それでも、迫力あるスタンピードのシーンや、細かな気配りのある暗闇の格闘シーン(銃で狙っている手下が、どっちがどっちだか分からなくするために、主人公がランプを壊してボスと格闘)は見せてくれますけどね。

バーバラ・ベル・ゲデスは、添え物程度で魅力が発揮できていないし、ウォルター・ブレナンも平凡な役で存在感がありません。

パッとしない西部劇で〜す。

中央がロバート・ミッチャム

 

『街中の拳銃に狙われる男』

原題:Man With The Gun(製作:1955年)

監督:リチャード・ウィルスン、音楽:アレックス・ノース

 

ワイオミング州シェリダンの町へ、“町直し保安官”として名高いクリント・トリンガー(ロバート・ミッチャム)がやって来る。彼は3年前に娘を連れて彼のもとを去った妻のネリー(ジャン・スターリング)に会いにきたのだ。町はホールマンという悪牧場主が支配しており、暴力駆逐を決議した町議会からクリントは雇われ、保安官助手になる。クリントは町直しに乗り出し、違反する者は容赦しなかった。ネリーに会ったクリントは、娘が死んだことを告げられ、彼女から罵倒される。町を去る決意をしたクリントは、一挙にホールマン一味と決着をつけるために一味のレスコウ(テッド・デ・コルシア)が経営するサロンに行き、即時退去を告げる……

無法者が跳びかかってくる犬を射ち殺すオープニングは、かなり期待させてくれましたが、終わってみれば、ありきたりのストーリーでした。

クロード・エイキンズが帽子の中に隠したデリンジャーで、ミッチャムを殺そうとして逆にやられたり、アンジー・ディキンソンが自慢の美脚を披露したりと、嬉しくなるようなシーンはあるんですけどね。

それにしても、ミッチャムは街中の拳銃から狙われたりしないよ。ひどい邦題だなァ!

 

『アロウヘッド』

原題:Arrowhead(製作:1953年) 

監督:チャールズ・マーキス・ウォーレン、撮影:レイ・レナハン

 

騎兵隊のスカウトをしているエド・バーノン(チャールトン・ヘストン)は、アパッチの戦士を殺したことから、アパッチと平和協定を結ぼうとしていたウェブライト大佐からスカウトをクビにされる。しかし、ウェブライト大佐はアパッチに待伏せされ戦死する。バーノンはアパッチを信用するなと、後任のノース大尉(ブライアン・キース)説くが、大尉は大佐の意志を継いでアパッチとの和平を図ろうとする。東部の大学に行っていた酋長の息子トリアーノ(ジャック・パランス)が戻ってきて……

インディアンを徹底して敵視する人物というのは、普通の西部劇では悪党なのですが、この作品では主人公になっています。アパッチを信用する騎兵隊をバカ扱いしているんですからね。ヘストンの相棒のミルバーン・ストーン(懐かしや、『ガンスモーク』のドク)が、キースに向かって言うセリフ「大尉は賢明な人で、頭も切れる。だけどマヌケだ」に全てが表現されています。

内容はインディアン蔑視で好きになれませんが、映像だけは楽しめました。空間的な拡がりのあるカットは、50年代の西部劇では普通だったんですね。

 

 

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