ミュージカル映画


『ブロードウェイ・メロディー』(1929年/監督:ハリー・ボーモント)

ハンク(ベッシー・ラブ)とクィーニー(アニタ・ペイジ)の芸人姉妹が、ハンクの許婚者でブロードウェイの歌手でもあるエディー(チャールズ・キング)を頼ってニューヨークへやって来る。エディーはクィーニーが好きになり、クィーニーもエディーを好きになり……

毎度おなじみの三角関係のメロドラマです。似たようなストーリーはワンサとありますね。この作品の価値は物語性でなく、ミュージカル映画の発展過程における記念碑となったことです。“オール・トーキング! オール・シンキング! オール・ダンシング”を謳い文句にしたMGMの完全トーキーの第1作目でした。字幕にサイレント時代の名残りを見ることができ、サイレントからトーキーへの移行が感じられます。

この作品の成功によってハリウッド製ミュージカルの中心となるバックステージものが次々に作られていきました。MGMミュージカルの全盛を築いた名プロデューサーのアーサー・フリードは、この映画で作詞家として起用されているんですよ。

アニタ・ペイジは魅力的ですが、現在の女優と比べると、かなり太目です。だけど、私は太目の方が好きなのだァ。

 

『オズの魔法使い』(1939年/監督:ヴィクター・フレミング)

カンサスの農場で伯父夫婦と暮らすドロシー(ジュディ・ガーランド)は、竜巻に飛ばされそうになった愛犬トトをかばって頭を打ち、カラフルなオズの国に迷い込んだ夢を見る。ドロシーはマンチキンたちに出会い、カンサスへ帰る方法を知っているという万能の魔法使い(フランク・モーガン)に会いにエメラルド・シティに出かける。途中で脳のないカカシ男(レイ・ボルジャー)、心のないブリキ男(ジャック・ヘイリー)、臆病なライオン(バート・ラー)と一緒になり、黄色いレンガ道を行くが、悪い魔女(マーガレット・ハミルトン)の妨害にあい……

原作はフランク・ボームの童話。ジュディ・ガーランドの好演と、名曲「虹の彼方に」もさることながら、1939年という時代に、こんな素晴しいファンタジー・ミュージカルが作られたということに驚嘆しますね。

124人の小人が演じているマンチキンの可愛いこと。マーガレット・ハミルトンは、まさに魔法使いのお婆さんで、子供たちがすんなりメルヘンの世界に入っていけるように演出されています。子供に観せたい映画の一本で〜す。

 

『回転木馬』(1955年/監督:ヘンリー・キング)

天国で星磨きをしていたビリー(ゴードン・マクレー)は、残してきた妻子に会うため、1日だけ下界へ降りることが許される。彼は生前、遊園地の回転木馬の呼び込みをしていて町工場で働くジュリー(シャーリー・ジョーンズ)と恋するが、木馬の女経営者に嫉妬されてクビになる。二人は結婚し子どもができるが、悪友の船員(キャメロン・ミッチェル)に誘われて強盗を働き、失敗して誤ってナイフで胸をさし死亡する。それから15年後、悩んでいる娘を救うために下界へ降りるが……

リチャード・ロジャースとオスカー・ハマースタインU世のブロードウェー・ミュージカルをヘンリー・キングが映画化。原作は、モルナールの戯曲『リリオム』です。

シャーリー・ジョーンズが歌う「ユール・ネヴァー・ウォーク・アローン」や、スーザン・ラッキー(娘役)の幻想的な踊りは満足なのですが、全体的に演出が鈍重でカッタルイのが気に入りません。ミュージカルはやっぱりミュージカル専門の監督が演出した方が良いですね。

 

『ロシュフォールの恋人たち』(1966年/監督:ジャック・ドミー)

港町ロシュフォールは祭りで浮き立っていた。カーニバルの芸人(ジョージ・チャキリスとグローヴァ・デール)から、美しい双子の姉妹(フランソワーズ・ドルレアックとカトリーヌ・ドヌーヴ)が辞めたダンサーの代わりを頼まれるが……

双子の母がダニエル・ダリュー、楽器店の主人ミシェル・ピッコリ、画家志望の水兵ジャック・ペラン、有名ピアニストのジーン・ケリーといった豪華メンバーによるフランス・ミュージカル。音楽はミシェル・ルグランで、ウキウキ・ワクワクする素晴らしい作品です。

歌はダニエル・ダリューを除き、全て吹替え。ドルレアックは、この作品の後、事故死していますので妹ドヌーヴとの最初で最後の共演作となりました。

 

 

『恋の手ほどき』(1958年/監督:ヴィンセント・ミネリ)

ジジ(レスリー・キャロン)は、祖母のマミタ(ハーミオン・ジーンゴールド)に言われて祖叔母のアリシタ(イザベル・ジーンズ)の許へ行儀作法の稽古に通っていた。アリシタは、昔社交界でならした一級の貴婦人で、ジジを社交界の花形にしようと考えていたのだ。ジジの家には、マミタの古い友人であるラシュイユ(モーリス・シュヴァリエ)の甥ガストン(ルイ・ジュールダン)がよく遊びにきていた。ガストンは大金持ちで豪奢な生活をしていたが、社交界にも人生にも退屈していた。愛人のリアネ(エヴァ・ガボール)の浮気を知ったガストンは彼女と別れ、無邪気でお転婆なジジに惹かれはじめる。ジジもガストンを好きだったが……

コレット原作の舞台劇をミュージカル映画化。当初、映画入りする前にブロードウェイの舞台で主演したオードリー・ヘップバーンが予定されていました。しかし、ヘップバーンが新たな映画化に関心をしめさなかったので、ロンドン公演でジジを演じたレスリー・キャロンが選ばれたそうです。私は、レスリー・キャロンの魅力は踊りにあると思っているので、ダンスシーンが殆どないのが不満なんですがね。

だけど、お洒落で洒脱なモーリス・シュヴァリエが実に粋なんです。映画化に当っては、シュヴァリエの力量にあわせて重要な役に膨らませたそうで、人生の全てが快楽の対象となるという楽天家の味は彼でないと出せないでしょうね。

ルイ・ジュールダンが甘い歌声を聴かせる「ジジ」を初めとして、全体としてメロディーのきれいなミュージカルでした。

左から

モーリス・シュヴァリエ

レスリー・キャロン

ルイ・ジュールダン

ハーミオン・ジーンゴールド

 

 

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