『夕陽の用心棒』(1965年/監督:デュチオ・テッサリ)
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二人の男が向かい合って決闘かと思いきや、「メリークリスマス」と言って離れていくオープニングで、コメディタッチの作品とわかるマカロニです。エンジェル・フェイスことリンゴ(ジュリアーノ・ジェンマ)が釈放されたことを手紙で知った保安官(ジョージ・マーティン)は、リンゴをつけ狙う一味が殺されるのを防ぐために、リンゴの隠れ家に行きます。しかし、すでに一味はリンゴの早撃ちで殺されており、保安官はリンゴを逮捕します。正当防衛だったのですが、裁判にかけるためでしょう。 メキシコの山賊サンチョ(フェルナンド・サンチョ)の一味が町の銀行を襲い、保安官たち自警団に追われて保安官の恋人(ロレッラ・デ・ルーカ)がいる農園に逃げ込みます。メキシコへの逃亡を条件に、一味は人質をとって立て篭もるんですが、農園の人間を情け容赦なく殺すところは本場の西部劇にないマカロニの特質が出ています。でもって、留置所にいるリンゴが奪われた金の30%を報酬として、山賊一味に潜入して人質救出することになるんですな。 ジェンマがマカロニに初出演(主演)した作品で、彼らしい明るいキャラと颯爽とした動きを見せてくれます。冒頭、子供たちとケンケンして遊んでいたジェンマが、彼の命を狙いにきた無法者を鮮やかなファニングで倒すところや、ラストのサンチョ一味との銃撃戦はジェンマの真骨頂といえますね。鐘に写るサンチョめがけ、単発銃でのクッション射ちは、マカロニらしいガンプレイで嬉しくなりますよ。 内容的には、ジェンマとサンチョのやりとりや、山賊一味の女(ニエベス・ナバロ)に惚れてしまう農園主(アントニオ・カサス)の扱いなどに今イチ緊張感のない作品で、劇場未公開が頷けるのですが、モリコーネの音楽を聴きながらノンビリ楽しむ分には充分といえま〜す。 |
『復讐のダラス』(1969年/監督:トニーノ・ヴァレリ)
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ケネディ暗殺をヒントにしたマカロニウエスタンです。南北戦争直後のダラスで大統領(バン・ジョンソン)が暗殺されるんですな。大統領暗殺の陰謀を知っていた父を殺され、親友の黒人が暗殺犯にされたビル(ジュリアーノ・ジェンマ)が真相究明のために行動を開始します。 副大統領の弱みをネタに権力を牛耳ろうとする資本家(フェルナンド・レイ)や、再び南北戦争を起こそうとしている過激無法集団が背後で暗躍しており、裏切りなんて日常茶飯事ね。 作り方次第では、もっと面白くなったと思うのですが、全体的に展開がモタモタしており、歯切れが悪いです。ポイントを絞り込んで、115分の長さを90分前後にしたらパンチが出たと思いま〜す。 |
『魔境のガンファイター』(1985年/デュチオ・テッサリ)
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テキサス・レンジャーを辞めてインディアンと暮らしていたテックス(ジュリアーノ・ジェン マ)が、キット・カースン(ウィリアム・バーガー)の依頼で再びレンジャーとなり、メキシコ国境で奪われた300挺のライフルを捜索するマカロニウエスタンね。原作は1948年より連綿と受け継がれているイタリアの人気コミックで、2008年現在、80巻以上が刊行中とのこと。内容も毒矢に射たれて一瞬のうちにミイラ化したり、古代アステカの子孫が出てきたりで、コミック的と云えます。 マカロニとしては比較的新しい1985年製作の作品で、ジェンマは47歳。マカロニ全盛時のジェンマの動きと比較すると、ワン・テンポ動きが鈍くなっていました。飛んだり跳ねたりも、反動をつけていましたからね。本場西部劇も1980年代は消滅状態で、マカロニも同様な状態でした。本場西部劇は細々と現在でも製作されていますが、マカロニは完全に消滅しましたねェ。 |
『ケオマ・ザ・リベンジャー』(1976年/監督:エンツィオ・G・カスティラーリ)
インディアンとの混血のケオマ(インディアンに全然見えないフランコ・ネロ)が南北戦争から故郷の町に帰ってくると、町は無法者の集団に支配されているんですな。伝染病が流行しており、患者は鉱山に隔離しているんですが、身内に患者がいるというだけで鉱山に引き立てられる妊婦をケオマが救出します。育ての父(ウィリアム・バーガー)や使用人だった黒人(ウッディ・ストロード)が味方につき、伝染病患者を救うために無法者集団と壮絶な銃撃戦が展開するのです。 浪曲時代劇の如く歌入りストーリー展開や、フラッシュバックを多用したカスティラーリの演出は、単純な撮影が多いマカロニの中にあっては珍しいものですね。アクションシーンはカスティラーリの本領を発揮しており、マカロニの中では上出来といえるでしょう。 |
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『真・西部ドラゴン伝』(1974年/監督:アンソニー・M・ドーソン)
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家族のために皇帝の命令でワン(ロー・リエ)はアメリカ西部にやってくる。ワンの叔父がアメリカ西部に隠したという宝を探すためだ。宝の場所は叔父が4人の女性のお尻に彫った刺青に記されており、女性の居場所を捜すことになる。 叔父の死に立ち会った泥棒ガンマン(リー・ヴァン・クリーフ)がワンの案内人となるが、宝を横取りしようとする異常性格の伝道師と子分の屈強なインディアン、それにメキシコ山賊一味が現れ…… お色気・お笑い・アクションと娯楽映画の要素を盛り込んでいますが、歯切れの悪い演出で面白さが出ていません。クリーフとロー・リエの珍道中(カルチャー・ギャップ)なんか、扱い方次第でもっと笑えるものになったと思うんですがね。 行く先々で繰り広げられるカンフーアクションも工夫がなく印象に残りません。クリーフが2頭の馬の間に機関銃をくくりつけ、バリバリ射ちまくりながら疾走するシーンが、唯一の見せ場かな。 主演のロー・リエは、ヒーローの顔をしていない。田舎のイモ兄ちゃんですよ。カンフーアクションにも鋭さが感じられず、マカロニらしい荒唐無稽さもありません。悪党も魅力がなかったなァ。 マカロニ末期のクリーフは、コメディーっぽいものが多く、初期の頃の凄みがなくなっていますね。一抹の憐れさを催します。ちなみに、香港でのリー・ヴァン・クリーフの表記は李雲奇理夫だったそうで〜す。 |