劇場公開作品


『さすらいの一匹狼』(1966年/監督:トニーノ・ヴァレリ)

騎兵隊を襲って10万ドル強奪したサンチェス(フェルナンド・サンチョ)は、騎兵隊を装って金を届けるオマハの銀行を襲うように部下に命じ、自分は二人の部下と10万ドルと国境に向かう。しかし、一部始終を目撃していた賞金稼ぎのランキー(クレイグ・ヒル)が、サンチェスを倒して金を取り戻す。そして、オマハの町に先回りして銀行と保安官に連絡し、サンチェスの部下を一網打尽にする。ランキーの手際のよさに感心した鉱山主と銀行頭取は、ランキーにテキサス州政府に渡す10万ドルの金塊護衛を依頼する。金塊を狙っているのが兄を殺したケネベック(ジョージ・マーティン)と知ったランキーは……

ニコ・フィデンコの歌が流れ、夕陽を浴びて地平線からガンマンがやって来るオープニングから、銃声入りのテーマ曲にサイケなタイトルと続くところはマカロニウエスタンの魅力がいっぱいですが、トニーノ・ヴァレリの演出は少しモタモタしているうえに、主人公は悪党にリンチを受けることもなくスイスイ敵をやっつけ、全体としては緊張感のない内容です。

金を持って逃げたサンチェスを一晩待ってやっつけたランキーが、前日に出発している銀行襲撃部隊より町にどうやって先についたか疑問だし、決闘で壊れたスコープがラストでは直っていたりと、突っ込みどころが色々あって、マカロニらしい楽しみ方はできますけどね。

鏡で町の様子を探るコメディ・リリ−フ的な老人の存在や、町の人間が一緒になって無法者と戦うスタイルは、アメリカ西部劇に近い作りです。1966年くらいまでのマカロニは、『続・荒野の用心棒』のようなマカロニそのものといった作品もありますが、アメリカの味が残っている作品が多いで〜す。

 

『ミスター・ノーボディ』(1973年/監督:トニーノ・ヴァレリ)

引退を決意している老ガンマン(ヘンリー・フォンダ)の前に、ノーボディと名乗る若者(テレンス・ヒル)が現われ、老ガンマンの名声に恥じないような最後の活躍をやらせたいと考えて、ワイルドバンチの一味を焚きつけて老ガンマンを襲わせるが……

コメディタッチの中にマカロニらしいアクションを折り込み、上出来の作品になっています。主演のテレンス・ヒルは『皆殺しのジャンゴ』ではニヒルなガンマンを演じていましたが、とぼけた味わいのあるコメディが似合っています。

トニーノ・ヴァレリは、師匠であるセルジオ・レオーネの意思を酌んで、それを作品に反映していますね。それはハリウッド西部劇に対する挑戦なんですよ。レオーネほどハリウッド西部劇を意識している監督はいませんからねェ。このことは、フォンダ個人に対してなされているような、スターの座をさる老ガンマンへの敬意に表れています。ハリウッドに代って、フォンダの引退興行を行なっている感じがするんです。

名声の証明(最初に床屋で、フォンダが3人の無法者をあざやかに倒す)、名声に恥じない最後の活躍(ワイルドバンチを倒す)、幸福な引退生活(ヨーロッパへの旅立ち)、どうです、これほど見事な引退興行はないでしょう。それと、ワイルドバンチの全滅と、最後の西部劇監督ともいえるサム・ペキンパーの墓は、西部劇そのものの終焉のメッセージになっていますね。

 

『五人の軍隊』(1969年/監督:ドン・テイラー)

ルイス(ニーノ・カステルヌオーボ)、メシト(バッド・スペンサー)、オーガスタ(ジェームズ・ダリ)、サムライ(丹波哲郎)の4人は昔馴染みのダッチマン(ピーター・グレイブス)に雇われ、メキシコ政府軍の50万ドルの砂金強奪作戦に加わる。5人は処刑されようとするウエルタ政権に反抗するメキシコ革命党員を救い村人に歓迎される。計画通りに砂金を積んだ軍用列車を襲うが……

スパイ大作戦よろしく、特技を持った仲間が集められます。ピーター・グレーブスは、もちろん作戦をたてるリーダーね。サーカス出身の軽業師ニーノ・カステルヌオーボ、力自慢の鉄道男バッド・スペンサー、爆破名人ジェームズ・ダリ、剣とナイフ投げの達人サムライ丹波哲郎といったメンバーの中で、丹波哲郎が儲け役です。この手の映画は仲間集めに見せ場があるのですが、一番目立っていたのがサムライ丹波です。

登場シーンの扮装が中国人的感じでとてもサムライには見えなかったですけどね。だけど、メキシコの村娘(ミス・イタリアのダニエラ・ジョルダーノ)に不埒なことをしようとしたメキシコ軍の司令官とその部下をバッサ、バッサと斬りまくるところはサムライです。当然、その美女と仲良くなります。列車から振り落とされ、その列車を追いかけて、走る、走る。男は黙って存在感を見せてくれました。

モリコーネの如何にもマカロニといったテーマ曲が流れ、メキシコ革命時の写真(サパタやパンチョ・ビラの写真もあるでよ)を使ったタイトルは気に入りましたね。ずさんな脚本が多いマカロニの中では、列車襲撃シーンなんか“スパイ大作戦”なみにキチッとしており、よくできた作品といえます。演出面に、もう少し切れ味の良さがあれば、言うことはないのですけどねェ。

 

『復讐のガンマン』(1967年/監督:セルジオ・ソリーマ)

賞金稼ぎのコーベット(リー・ヴァン・クリーフ)は、町の有力者ブロックストン(ウォルター・バーンズ)に頼まれて少女暴行殺人犯のメキシコ人クチーヨ(トーマス・ミリアン)を追うことになる。コーベットは何度もクチーヨを捕まえるが、抜け目のないクチーヨはその度に逃亡に成功する。クチーヨと接しているうちに友情が芽生え、彼が犯人でないと確信を持ったコーベットは真犯人の一味と対決に……

クリーフが利き手に持った拳銃の弾丸を射ちつくす前に反対の手に拳銃を移し、利き手で素早く弾丸のつまっている拳銃を抜き、連続して発射できる態勢を保つテクニックを見せてくれたり、ミリアンがライフルを足に引っ掛けて、上手にクリーフに渡すシーンがあったりと、西部劇らしいアクションが楽しめます。ラストのミリアンのナイフ投げもカッコ良かったですよ。細身のナイフは『荒野の七人』のジェームズ・コバーンのように、袖口からアンダースローで投げるのが合理的ですが、厚みのあるナイフは肩口から投げる方が迫力あっていいですね。

音楽はエンニオ・モリコーネで、一度聴いたら忘れられないような曲作りをしています。クリスティの歌声も印象的で〜す。

 

『ジャンゴ/灼熱の戦場』(1987年/監督:テッド・アーチャー)

ガンマン生活から身を洗い、修道士となったジャンゴ(フランコ・ネロ)のもとに、メキシコの独裁者(クリストファ・コネリー)に娘が拉致された連絡が入る。メキシコは皇帝マクシミリアンが倒された直後で混乱しており、独裁者は農民に圧政をしき、反抗者を容赦なく殺していた。ジャンゴは娘救出のために戦いを開始する……

『続・荒野の用心棒』の正統な続篇ですが、西部劇らしくないのが気に入りません。独裁者のアジトが軍艦で、水辺の風景が多いせいもあるけど、カッコいいガンプレイがないんですよ。ネロは例のジャンゴ機関銃(前作より銃口の数が少なく、小型になっている)をブッ放すだけですからね。西部劇なら拳銃を使わないとね。確かに“決闘”でなく、“戦場”です。戦争映画でなく、西部劇にして欲しかったなァ。

DVDに特典画像として公開時にカットされた幻のオープニング・シーンが収録されていたので、満足しよう。

 

 

 

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