(1944年)
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原題:Buffalo Bill 監督:ウィロアム・A・ウェルマン 原作:フランク・ウィンチ 脚本:イーニーアス・マッケンジー& クレメンツ・リブリー& セシル・クラマー 撮影:レオン・シャムロイ 音楽:デビッド・バトルフ 配役:バッファロー・ビル(ジョエル・マックリー) ルイザ・コディ(モーリン・オハラ) ドーン(リンダ・ダーネル) ネッド・バントライン(トーマス・ミッチェル) イエロー・ハンド(アンソニー・クイン) チップス軍曹(エドガー・ブキャナン) |
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インディアンのシャイアン族に襲われた馬車を救ったバッファロー・ビルは、ルイザと知りあい、互いに心が惹かれあう。ルイザの父フレデリシ議員は実業家のヴァンダーヴァとシャイアン族の土地に鉄道を敷こうと計画していた。シャイアン族の酋長の息子イエロー・ハンドはそのことに怒り、フレデリシ議員を拉致する。ビルは単身シャイアンの部落に出かけフレデリシを救出し、イエロー・ハンドの提案を仲立ちしてシャイアンとの和平をもたらす。しかし、それも長くは続かなかった。野牛の毛皮が高値で売れ、それがきっかけとなって“野牛狩り”が大流行する。乱獲による野牛の急減はインディアンにとって死活問題で、シャイアン族はスー族と手を握って蜂起する。カスター将軍の第七騎兵隊がスー族によって全滅させられ、シャイアン族はスー族と合流しようとしていた。シャイアン族鎮圧のために、ビルは騎兵隊の案内に立つが、ビルと結婚して愛児が生まれたルイザは平和な生活を願って東部へ帰ってしまう。ビルの作戦により、ウォーボンネット谷でシャイアン族を撃滅に成功し、ビルは大統領から勲章をもらうことになる。東部にきたビルは、インディアンの蜂起は白人にも責任があり、インディアンの保護を力説するが、逆に嘘つき扱いされ彼の人気は凋落してしまう。しかし、知己の新聞記者バントラインや妻ルイザの助力で、“ワイルド・ウエスト・ショー”を組織し、西部の精神や風俗を紹介し再び人気を高める…… 西部の英雄バッファロー・ビルの半生を描いた作品。評価が分かれるかもしれませんが、私は傑作だと思っています。 この手の英雄史を描くには、普通150分以上の尺数を必要とするのですが、90分で収めています。そのため、どうしても喰い足らないところが出てくるのは仕方ないでしょうね。ビルに恋心を抱いていたイエロー・ハンドの妹ドーンとビルの絡みなどは実にアッサリしたものです。 だけど、90分の中にスペクタクル・シーン(ウォーボンネット谷での騎兵隊とインディアンの激突は圧巻)あり、インディアンの悲しみあり(原野に散らばる野牛の白骨を見たら、誰だってインディアンに同情したくなります)、ビルの妻への愛情(求婚シーンの盛上げ方は見事)と愛児を失った悲しみありと、詰め込めるだけ詰め込んでいます。それらを場面処理のたくみさで、表面的に流れることなく感動を持って網羅していくところは、さすがにウェルマン監督の力量といっていいでしょうね。 最近のやたらダラダラ長い映画を観ると、この映画の素晴しさを改めて認識させられましたよ。 |
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バッファロー・ビル |
ところで、ビルとバントラインの関係ですが、バントラインが禁酒講演のため(この作品に出てくるように彼は酒を飲みながら喋ったそうです)の西部旅行のかたわら、小説のネタを探すべく第五騎兵隊を訪ねた時にビルに会います。バントラインはビルの堂々たる風采と臆することなく喋りまくる冒険談に魅せられ、その話に尾ひれをつけて書いたのが「辺境の王者バッファロー・ビル」でした。ダイム・ノベルの出版社ストリート・アンド・スミスから出ていた雑誌「ニューヨーク・ウィークリー」に掲載(その後、何度か単行本になった)されるや、爆発的な人気を呼びビルの名前は全国的に有名になりました。列車を降りたビルが新聞スタンドで売られている「辺境の王者バッファロー・ビル」を見て不思議に思っていたら、本物のバッファロー・ビルだと言って人がいっぱい集まってくるシーンがこの作品にもありましたね。 その後、バントラインは芝居の台本を書き、ビル自身が出演して主役を演じています。一時的にはビルの友人ワイルド・ビル・ヒコックも出演しているんですよ。しかし、一人息子の死によって芝居を続けることが耐えられなくなり、西部に戻ります。古巣の第五騎兵隊のスカウトをしている時に、第七騎兵隊の全滅が伝えられます。その3週間後、第五騎兵隊はスー族本隊と合流しようとするシャイアン族の一隊と遭遇し、ビルはイエロー・ハンドと決闘するんですね。映画の方は、順序がいりくっていましたけど。 イエロー・ハンドとの決闘で名声があがったビルは、バントラインの示唆で東部に戻り、大野外ショー“ワイルド・ウエスト・ショー”を開催し、大成功を収めます。“ワイルド・ウエスト・ショー”におけるビルとバントラインの泥々した関係を描いた映画に『ビッグ・アメリカン』(1976年/監督:ロバート・アルトマン)がありますが、それは別の機会に…… |
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