アラモ

(1960年)


原題:The Alamo

製作:ジョン・ウェイン

監督:ジョン・ウェイン

脚本:ジェームズ・E・グラント

撮影:ウィリアム・H・クローシャー

音楽:デミトリ・ティオムキン

出演:デイヴィ・クロケット……ジョン・ウェイン

    ジム・ボウイ……リチャード・ウィドマーク

   ウィリアム・トラビス……ローレンス・ハーベイ

   サム・ヒューストン……リチャード・ブーン

    スミティ …… フランキー・アバロン

    フラカ …… リンダ・クリスタル

 

1935年11月、当時メキシコ領だったテキサスでは、早くからこの地に踏み入り、汗と血を流して開拓してきたアメリカ人に対してメキシコの独裁者サンタ・アナが軍政と重税で圧迫していた。テキサス開拓民はその圧政に耐えかねて、サム・ヒューストン(リチャード・ブーン)を指導者として自治政府を樹立し、メキシコからの独立を宣言する。激怒したサンタ・アナは7千の大軍を率いてテキサスへ攻込んでくる。

ヒューストン将軍のテキサス義勇軍はまだ体制が整っておらず、南テキサスのサン・アントニオで敵をくいとめて時を稼ぐ必要があった。ヒューストンは町はずれにある廃墟の僧院(通称アラモ)を砦として補強することを考えるが、一党を引き連れてやって来たテキサス大地主ジム・ボウイ大佐(リチャード・ウィドマーク)は籠城よりもゲリラ戦を主張する。そこで、ヒューストンは弁護士あがりの青年将校ウィリアム・トラビス少佐(ローレンス・ハーベイ)を大佐に昇格させ、砦の指揮官に任命して、募兵のため北へ出発する。貴族肌で規律重視のトラビスと約100人の子分を持つ親分肌のボウイとでは性格が合わず、ことごとく対立した。

監督ジョン・ウェイン

サンタ・アナの大軍がリオ・グランデ河を越えたという報せがもたらされた頃、鹿皮服に洗い熊の帽子の伝説の男デイヴィ・クロケット(ジョン・ウェイン)がテキサスの危機を聞いて、命知らずの22人の同志とテネシーから救援に駆けつけてくる。酒場に乗り込んだクロケットたちは、たちまち大騒ぎ。彼らの到着を聞きつけてやってきたトラビスやボウイを煙にまくのだった。

クロケットは偶然知り合った美しいメキシコ女性フラカ(リンダ・クリスタル)の危難を救い、彼女から町の教会に敵側の弾薬が隠されていることを教えられる。クロケットはボウイと教会に行き、サンタ・アナ一味を襲って弾薬を奪う。翌朝、フラカに礼を言いに行ったクロケットは、彼女に愛情を感じはじめるが、メキシコ軍が迫っているので、彼女を馬車に乗せて町から送り出す。町では住民の疎開が始まっており、メキシコ軍との戦いは刻一刻近づいていた。

ジョン・ウェインとリンダ・クリスタル

ここまでが前半ですが、全体に冗漫で退屈します。ボウイがトラビスと意見がくい違い、何度も対立するのですが、同じパターンの繰り返しで緊張感が昂まってきませんし、クロケットとフラカのエピソードも本道から外れていて必要のないものです。ウェインがリンダ・クリスタルに出演の約束をしたので、不用な役を作ったとしか思えないんですよね。前半最後のフラカと別れるシーンでのクロケットの長演説は陳腐なだけですよ。ところが、後半になると打って変って、名作といっていいほどの出来ばえとなっています。

姿を現したメキシコ軍がアラモ砦を遠巻きにし、巨砲から放たれた弾丸が砦に撃ちこまれ、一挙に緊迫感がみなぎってきます。巨砲破壊のためのメキシコ陣地夜襲、食糧確保のためのメキシコ軍の牛を強奪と、映画がどんどん盛り上がってきます。牛を暴走させて砦の中に追い込んでいく場面は、数ある西部劇のスタンピード・シーンの中でも屈指のものですね。牛を奪ってきたクロケットたちを砦の中に入れたトラビスが、悠然と拳銃をかまえて、追跡してきた馬上のメキシコ士官を撃ち倒すところは、実にカッコ良くて名シーンといえますよ。

そうした動の部分だけでなく静の部分も素晴しいですね。砦の全員が副官の幼い娘の誕生を祝う場面や、サンタ・アナ将軍の勧告を受け入れて砦の婦女子を撤退させる場面は情感が溢れていて、ウェインの演出にフォード・タッチを感じさせます。特に、老兵の盲目の妻が「夫も男だ」と言い放つところは、何度観ても涙腺がゆるんできます。こんな浪花節調のセンチメンタルが私は好きなんだなァ。

第1回目のメキシコ軍の総攻撃をテキサス軍が防衛した後、メキシコ軍が自軍の負傷兵や死体を収容する場面ではメキシコ側にカメラをすえ、死体にとりすがって泣くメキシコ婦人を撮ることにより、戦争の悲惨さが自然に滲み出ています。バックに流れる「遥かなるアラモ」が哀愁漂い、戦い前の最後の夜のシーンへとつながっていきます。音楽が映画におよぼす影響は大きく、この作品でも効果的に使われていますね。翌日、メキシコ軍は態勢を整え、太鼓をたたきながら整然と配置につきます。馬上のラッパ隊が「皆殺しの歌」を高らかに吹奏し、総攻撃が開始。

大津波のように殺到するメキシコの大軍を相手に、少数のテキサス軍が勇猛な戦いをします。彼らの最期は、どれも悲壮感がみなぎっており、短いショットながらも印象に残るものばかりです。とにかく、クライマックスの戦闘シーンは、大がかりな点といい、激烈さといい、見るものを圧倒しましたね。膨大なエキストラと多くのスタントマンを使った人海戦は、CGでは絶対に味わうことのできないものですよ。70ミリでリバイバル上映されたら、私は絶対観に行きま〜す!

 

ジョン・ウェインとジョン・フォード

 

 

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