トップ屋取材帖


水島道太郎

上映時間が1時間に満たない、2本立ての添え物として製作されたSP(シスター・ピクチャー)映画。1959年から60年にかけて全部で6本作られています。

島田一男の原作を井田探が小気味のよい演出で、小粒ながらもピリッとした作品に仕上げています。最近の冗漫なテレビの2時間ドラマ(サスペンス)なんかと違ってテンポがあり、格段に面白かったですよ。

全作品に出演しているのは、主人公のトップ屋黒木役の水島道太郎と、助手役の葵真木子。水島道太郎が渋くていいんだなあ。戦争中は特務機関兵だった陰ある中年男を好演。

後は2作品ずつ、主要な出演者は同じ顔ぶれとなっています。公開日から考えておそらく2作品ずつまとめて製作されたんじゃないかなァ。

ところでトップ屋というのは、週刊誌のトップ記事を狙って独自に取材したものを売り込むフリーの記者のことで、1960年当時、週刊誌の発刊ラッシュと相俟って社会的に話題となった存在でしたね。

 

『迫り来る危機』(1959年・日活/監督:井田探)

 昔馴染みのクラブのママ(白木マリ)に頼まれて仕事を手伝うことになったトップ屋の黒木は、背後に麻薬密輸をめぐる組織内対立があることを嗅ぎつける。彼は取材のため、組織に潜入するが……

フィルム・ノワール的雰囲気を持った陰影にとんだ作品。悪女の白木マリ、白木マリに純粋な恋心を抱く醜男の高品格。B級ながらも、いい味を出していました。

 

『拳銃街一丁目』(1959年・日活/監督:井田探)

偽名刺の印刷を商売にしている老人が殺され、彼に客を紹介した女(南風夕子)も命を狙われる。老人を取材していたトップ屋の黒木が、女を守って殺し屋と対決する……

黒幕の意外性が、とってつけたような感じになっているのが難点。週刊誌の編集長役は、前回と同じ西村晃です。

 

『悪魔のためいき』(1960年・日活/監督:井田探)

陸送するトラックを強奪する強盗団に潜入したトップ屋の黒木は、背後に国際密輸団が存在することをつきとめるが……

筑波久子がグラマラスな肢体を見せてくれて満足、満足。二本柳寛が悪党役を好演。

 

『影のない妖婦』(1960年・日活/監督:井田探)

戦時中、大陸で日本のために一緒に戦った馬賊・千里の虎(二本柳寛)が処刑されたことを、黒木は虎の妹という女(筑波久子)から知らされる。しかし、女を売買する国際的犯罪組織を追っていた黒木は、千里の虎がその黒幕と考えていた……

千里の虎の妹、実は愛人という筑波久子の悪女ぶりがいいんだなァ。主人公を色仕掛けで篭絡しようとするB級アクションの悪女はグラマーな女がよく似合います。

 

『影を捨てた男』(1960年・日活/監督:井田探)

整形手術のネタを黒木のところへ売りにきた情報屋が殺される。情報屋が残していった写真から、警察に追われている犯罪者の顔を整形する国際的な組織が背後にあることを黒木はつきとめるが……

黒木を誘惑するヴァンプ役が香月美奈子になり、週刊誌の編集長役が佐野浅夫になります。西村晃から佐野浅夫になるのは、水戸黄門だけじゃなかった。岡田真澄が謎の整形外科医を好演。

 

『消えた弾痕』(1960年・日活/監督:井田探)

拳銃密売団の一味が襲われ、残された死体から銃弾が発見されなかった。この謎をつきとめるため、黒木は密売団と関係のありそうなクラブを探るが……

佐野浅夫、香月美奈子、岡田真澄、嵯峨善兵が前作に続いて出演しています。香月美奈子が筑波久子ほど有名にならなかったのは何故だろう。彼女も肉感的ですよ。

 

 

 

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