性典映画


現在の視点で観ると、内容はどうってことはないのですが、思春期もののはしりとしてヒットし、レギュラーの若尾文子と南田洋子は性典女優と呼ばれたことがありました。

それにしても、現代感覚からすると、性に対して滅茶苦茶ギャップを感じます。貞操観念の強かった昔の女性に魅力を感じますねェ。

 

『十代の性典』(1953年・大映/監督:島耕二)

去に暴行を受けて非処女の女学生(沢村晶子)が、恋人の大学生と肉体関係を持つことを拒絶し、自殺してしまうという、現在の倫理観では考えられないような物語です。

若尾文子は、沢村晶子とエス関係(女学生の同性愛、現在では完全に死語)にある下級生。「お姉さま、お姉さま〜」と言って、沢村晶子に甘えるんですな。ただ、それだけ。

南田洋子は、生理の影響でフラフラと万引きしてしまう若尾文子の同級生。万引きしているところを、悪い男に目撃されて……

当時としては、女子高生の生態を描いた作品としてヒットし、『続・十代の性典』、『続々・十代の性典』、『十代の誘惑』と立て続けに製作されました。

 

『続・十代の性典』(1953年・大映/監督:佐伯幸三)

従兄弟の大学生(根上淳)に恋心を抱く女子高生(南田洋子)が、母親の再婚話にショックを受け、さらに同級生(若尾文子)の家庭教師となって彼女と仲良くしている従兄弟の姿を目撃して、好きでもない不良学生と肉体関係を持ってしまう。その結果、妊娠してしまい……

南田洋子が鏡に自分の身体を写して、妊娠の兆候を調べるシーンにはドキッとしましたね。ヌードシーンではないのですが、そのものズバリより、かえって興奮しましたよ。

瑳峨三智子が彼女たちの同級生役で出演しているのですが、セーラー服姿の艶かしかったこと。女子高生には、とても見えなかったで〜す。

 

『続々・十代の性典』(1953年・大映/監督:小石栄一)

親が決めた結婚相手の大学生(根上淳)が気に入らない女子高生(南田洋子)が、同級生(若尾文子)たちとキャンプに出かける。根上淳も友人(船越英二)とキャンプにやってくるが、ひょんなことから南田洋子は船越英二と肉体関係ができてしまい……

若尾文子の水着姿が可愛いのだ。若尾文子の姉役の沢村晶子がキレイなのだ。教師役の小林桂樹が若々しいのだ。坊主頭の高校生役の毒蝮三太夫が笑えるのだ。

それにしても、娘が処女でなくなり、恥ずかしくて学校へやれないと考える当時の親の心境って、普通だったんですよね。女の子に対する現在の家庭教育で一番欠けているのが、貞操観念だと考える私は、やっぱり古い人間なのかなァ。

 

『十代の誘惑』(1953年・大映/監督:久松静児)

小説家志望の女子高生(青山京子)が、修学旅行にきた京都で、夜の街を楽しもうと無断で旅館を抜け出す。テンプラ学生(衣だけの偽学生、現在では完全に死語)に襲われかけたところを、追いかけてきた同級生(若尾文子と江原達治)に助けられる。しかし、想像豊かに二人のことを小説に書いたことから、若尾と江原の関係が誤解を受けるが……

 南田洋子は不治の病で入院している若尾文子の同級生。したがって、セーラー服姿はなし。若尾文子は天真爛漫な女子高生役。美人女優というよりアイドル系ですね。美人女優といえば、女教師役の山本富士子だな。日本の歴代美人女優のトップ・テンに入ると思いますよ。

古い学校の体質に反対し、学生に理解のある教師が菅原謙二。これまでの“性典シリーズ”が処女性をテーマにしていたのに対し、この作品は“青い山脈”になっています。明るい内容になった分だけ、性に対する悲劇性はありませ〜ん。

 

 

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