『事件記者』は、1958年4月3日〜66年3月29日まで放送されたNHKの人気番組で、日活で“事件記者シリーズ”として10本映画化されています。また、放送終了後の1966年には、東宝でも“新事件記者”として2本製作されています。 テレビの『事件記者』の魅力は、記者クラブ内の和気アイアイとした家庭的な雰囲気と、同じようなパターンで繰り返される仕事ぶりとが、お馴染みの顔ぶれによる軽妙なセリフのやりとりと相俟って、リズミカルに茶の間に届けられたところにあります。 しかし、映画となると日常のリズムが出せたかというと疑問ですね。映画化ということで日活作品では沢本忠雄を、東宝作品では三上真一郎を記者の一人に加えて主演させたため、テレビの魅力だった記者たちのチームワークや言動が薄れてしまいました。 そうはいっても、日活のシリーズは二本立ての添え物として製作された1時間程度のSP映画ですが意外と内容は濃く、テレビ版の雰囲気と懐かしさがあって満足、満足で〜す。ただ、タイムスのアラさんこと清村耕次が出演していなかったのが気に入らないけど。 |
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『事件記者』(1959年・日活/監督:山崎徳次郎) ヤクザの親分が品川駅で襲われ、麻薬の入ったカバンを奪われる。敵対組織の仕業と思われた事件が、置引き常習犯のチンピラが殺され…… 東京日報の記者連中はテレビ版と同じメンバー。それに新人記者として沢本忠雄が加わります。宍戸錠が犯人役で出演。 『事件記者・真昼の恐怖』(1959年・日活/監督:山崎徳次郎) 闇採血者に血を売った娘が急死し、それを目撃した売春婦も血を抜かれて殺される。売春婦は梅毒に冒されていることがわかり…… 金を得るためだけの売血行為が、社会問題になっていたんだよなァ。 『事件記者・仮面の脅迫』(1959年・日活/監督:山崎徳次郎) 新聞の誤報で痴漢にされた男の変死体が見つかり、状況から自殺と考えられたが…… 誤報に対して現在の新聞社があれだけの対応をするだろうか。昔もドラマだけのことだろうか。犯人役は垂水吾郎。 『事件記者・姿なき狙撃者』(1959年・日活/監督:山崎徳次郎) 空き巣に入ったマンションでチンピラが拳銃を盗むが、それは殺人に使われた拳銃だった。チンピラは警察に捕まっている恋人の釈放を要求して、警官を狙撃するが…… 殺人犯と警察の、どちらが先にチンピラを見つけるか。結構スリルのある作品となっていましたよ。深江章喜が殺人犯役。 『事件記者・影なき男』(1959年・日活/監督:山崎徳次郎) 殺された男のズボンから偽ドル札が発見され、偽ドル偽造団の存在が明らかになり…… |
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新婚旅行先でも事件を追っかける伊奈記者(滝田祐介)の猛烈記者ぶりが併行して描かれます。事件のない時は、テレビを見たり、将棋をさしたりと、ブラブラしているが、事件がおきれば仕事一筋というのが、当時子ども心にもカッコ良いと思ったんだよなァ。 『事件記者・深夜の目撃者』(1959年・日活/監督:山崎徳次郎) クリスマスケーキを食べたタクシーの運転手が毒殺された同じ夜、特定郵便局に強盗が入り、住み込んでいた青年が殺される。 クリスマス・イブの夜は、お父さんたちは飲んで騒ぎ、家族の土産にクリスマスケーキを持って帰る。そんな光景がなくなったのは、何年頃かなァ。 『事件記者・時限爆弾』(1959年・日活/監督:山崎徳次郎) 女スリが盗んだシガレット・ケースから出てきたメモ通りに貨物船が爆破される。保険金目当ての犯罪とにらんだ警察と記者たちは…… 水上警察に捜査本部が置かれ、海上追跡シーンが見せ場です。水上警察の宣伝に一役かっているのかな。 『事件記者・狙われた十代』(1960年・日活/監督:山崎徳次郎) 公道で賞金を賭けたレースをしていた暴走族が、学生をはねる。背後でレースを仕切っていたヤクザが、はねた若者を脅迫し…… 当時、暴走族のことをカミナリ族と云っていたんですよねェ。今じゃ死語だ。それと、南部14年式の拳銃が出てきますが、あれは実銃ですね。 『事件記者・拳銃貸します』(1962年・日活/監督:山崎徳次郎) 拳銃を借りて質屋強盗をした二人組が、巡回中の警官を殺す。その拳銃が他の殺人にも使われたものとわかり…… 真実を全て記事にするのが記者の正義ではない。多感な少女の将来を考え、特ダネを捨てる記者なんて今頃いるだろうか。 『事件記者・影なき侵入者』(1962年・日活/監督:山崎徳次郎) 刑務所を出所した男からの脅迫状を受取った金融会社の営業所長が殺され…… 犯人が最後までわからないような演出をしており、ミステリー・タッチの作品となっています。といっても、観ていてすぐに犯人はわかるし、トリックもね。 |
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ラストの銃撃シーンは不要です。何で普通のサラリーマンが拳銃を持っているんだ。 『新事件記者・大都会の罠』(1966年・東宝/監督:井上和男) Qポン・ジュース主催の歌謡ショーで配られたジュースに毒物が入っており、飲んだ客が中毒をおこす。その頃、商事会社のOLが家で同じジュースを飲んで死亡するという事件がおきる。この殺人事件の背景には熾烈な企業間競争があり…… テレビと同じような、輪転機が回り、取材車が走るタイトルに始まり、日報の寺井記者役の三上真一郎を除き、記者や刑事はテレビと同じ顔ぶれ。 三上真一郎は“日活シリーズ”の沢本忠雄と同じような位置付けですな。犯人を追って捕まり、危うく殺されそうになるところもね。 “日活シリーズ”と違うのは、SP作品でなくカラーワイド版の通常作品となっています。出演者も金子信雄、平田昭彦、大空真弓、山本学、富田仲次郎といった中堅どころが顔を揃えています。 首を傾げたくなるような内容ですが、当時は産業スパイとかが話題になり、企業間の経済戦争がマスコミを賑わしていたんですよねェ。 『新事件記者・殺意の丘』(1966年・東宝/監督:井上和男) 東京郊外の分譲地にある別荘が焼け、男3人、女3人の死体が見つかる。警視庁捜査1課は現地所轄署に本部を置き、桜田クラブの事件記者の面々も現地に前線基地を置いて取材合戦が繰り広げられる…… 前作に出演した三上真一郎は登場せず、通信局の記者として芦田伸介が出演。これが実に渋くてグッド。犯人に脅される給食屋のオバサン・菅井きんもグッド。デビューしたばかりの松尾嘉代も端役で出ていたよォ。 在日韓国人の問題とか、テーマを広げすぎて中味が薄くなりました。この手の作品にカラーワイド版は似あいませ〜ん。 |