音楽映画


『君も出世ができる』(1964年・東宝/監督:須川栄三)

旅行会社に勤める山川(フランキー堺)は出世一筋にガンバっているが、同僚の中井(高島忠夫)はノンビリ型。アメリカ留学していた社長の娘・陽子(雪村いずみ)が、世界最大の観光会社と提携のために外遊していた社長(益田喜頓)と帰国する。陽子は山川たちと働くことになり……

谷川俊太郎:作詞、黛敏郎:作曲よる本格ミュージカル映画です。前年の東宝劇場における『マイ・フェア・レディ』の上演の成功により、日本でもミュージカルはヒットするとの想定の基に、映画用に作られたオリジナル作品でしたが、見事にコケました。

出世3ヶ条(1.社長の娘と結婚すること。2.労働組合の幹部になること。3.社長の弱みを握ること)なる面白いネタが、ドラマとして活かされていないのが致命的でしたね。それと、フランキー堺は歌に踊りに上手さを出していますが、邦画ファンにミュージカルを楽しむ土壌がなかったのと、フランキー堺がコメディアンとして笑いがとれなくなっていたのも要因でしょう。時代は、フランキー堺から植木等に変わっていましたからね。

舞台の方はヒット・ミュージカルが続くのですが、シネ・ミュージカルは日本では終に定着しませんでしたねェ。

 

『銀座カンカン娘』(1949年・新東宝/監督:島耕二)

お秋(高峰秀子)とお春(笠置シズ子)は、映画の撮影現場で知り合った白井哲夫(岸井明)と組んで銀座のバーで流しを始める。お秋は画家に、お春には声楽家になる夢があり、そのためにお金が必要だったからだ。しかし、下宿先の老夫婦(古今亭志ん生・浦辺粂子)が借金で困っていることを知り、日頃の恩返しに金を用立てる。老夫婦の甥・武助(灰田勝彦)も会社を首になり、流しに加わる。お秋と武助は、カンカンブギウギのリズムとともに親密さを増していき……

主題歌だけはよく耳にして知っており、興味のあった映画です。ドラマチックなシーンがあるわけでなく、笠置シズ子と灰田勝彦の歌を楽しみ、志ん生の落語を楽しむだけの作品ですね。

 

『素晴しき男性』(1958年・日活/監督:井上梅次)

ショーガールの陽子(北原三枝)は舞台監督の武男(石原裕次郎)が好きだったが、結婚相手は金持ちの男性と決めていた。そんな陽子の前に理想の男性・秀男(待田京介)が現れプロポーズされる。秀男の母親は陽子の家柄に難色をしめすが、秀男の姉・麗子(月丘夢路)の協力もあって婚約することになる。武男は陽子の婚約を聞いて驚く。秀男は武男の弟だったのだ。武男は家柄や格式にこだわる家風が嫌で、弟に跡取りを譲って家を出ていたのだ。愛する男と別れて家柄のよい男と結婚した麗子は幸せになれず、貧しいながらも愛する人と幸せに暮らす姉夫婦(山岡久乃・大坂志郎)や友人夫婦(笈田敏夫・白木マリ)を見て陽子は自分が間違っていたことに気づき……

幸せな結婚はお金よりも愛情という他愛ない物語。ミュージカルの夢のシーンに始まり、劇団員たち(笈田敏夫・柳沢真一・田端義夫・白木マリ等)の歌と踊りが途中にはさまり、ミュージカルの公演シーンで終るという音楽映画です。数多くの音楽映画を作っている井上梅次としてはミュージカル映画の演出が生きがいだったかもしれませんが、ミュージカル映画への挑戦という心意気はあっても、当時の洗練されたハリウッドミュージカルを観ていたファンには陳腐なもの見えたでしょうね。歌えても、踊れるスターがいませんでした。

 

 

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