気になる女優たち


筑波久子

『海底から来た女』(1959年・日活/監督:蔵原惟繕)

 

海のそばの別荘で暮す内気な青年(川地民雄)が、彼のヨットで寝ていた女(筑波久子)と知り合い、愛するようになるが、女は鱶の化身だった……

石原慎太郎の小説『鱶女』が原作の怪談?映画。

筑波久子のグラマラスな肢体が当時話題になった作品。とはいってもヌードシーンはありませんよ。長い髪で胸を隠し、腰にはワカメを巻きつけています。現在の視点で見ると、どうってことはないのですが、当時としてはこれだけでも扇情的だったんでしょうね。

それにしても、鱶女が後年アメリカで世界的にヒットした“ピラニア”を製作したのは何かの因縁かなァ。

 

重山規子

 パンチ、センチ、ピンチと呼ばれる三人娘の歯切れのよい行動をコミカルなタッチで描いたセクシー・コメディ・シリーズに“お姐ちゃん”シリーズというのがあります。1959年の『大学のお姐ちゃん』から1963年の『お姐ちゃん三代記』まで全部で8本作られています。

パンチが、“アンパンのヘソ”とあだ名されたキュートな顔の団令子。センチが、踊りが上手い美脚の重山規子。ピンチが、歌が得意で奇妙な声の中島そのみ。美人ではありませんが、個性的なトリオが、若さとお色気で男たちにせまりながら、青春を謳歌するので〜す。

 

『お姐ちゃん罷り通る』(1959年・東宝/監督:杉江敏男)

“お姐ちゃん”シリーズ第3作目。

園江敏子(団令子)は、友人の前原(江原達治)に頼まれて、ダンサーとして活躍している親友の秋山重子(重山規子)を引き抜き、香港公演に誘う。重子は踊りのパートナーである清川(山田真二)とケンカしたことから重子の誘いに乗るが、敏子が重子のマネージャーを買って出たことから、敏子は前原とケンカ別れをする。敏子・重子の親友である中原美津子(中島そのみ)は、見合いの相手(久保明)とケンカし、二人の乗った船にこっそり乗り込む。香港に着いた三人は、一緒に公演する香港の人気歌手と仲良くなるが、重子はインチキ興行師にギャラを持ち逃げされ……

香港に向かう船で出会った紳士(池部良)に敏子と重子がポッとしたり、密航がバレて領事館員に美津子が追われたりと、親に結婚を反対されている歌手とその恋人の仲を三人が取り持ったりと、何やかやあって、結局三人はケンカした相手と仲直りしてメデタシ、メデタシの他愛ないお話で〜す。

 

『お姐ちゃんはツイてるぜ』(1960年・東宝/監督:筧正典)

“お姐ちゃん”シリーズ第6作目。

淡涼子(団令子)には化粧品会社の宣伝担当(高島忠夫)が、長島園江(中島そのみ)にはボクサー(瀬木俊一)が、景山季里子(重山規子)には前衛舞踊家(岡田真澄)が恋人にいるが、季里子が仮免練習中に車をぶつけたことから……

三人がそれぞれ恋人たちとケンカし、三人の仲も気まずくなるが、何やかやありまして、最後は元の鞘に納まるという他愛ないお話で〜す。

三人の愛称は同じでも、役名は作品毎に少しづつ違っているんですねェ。

 

でもって、三人の中で私の一番のお気に入りは重山規子。

“お姐ちゃん”シリーズはリアルタイムでは観ておらず、私が彼女の名前を知ったのは、1967年に放送されていたテレビ時代劇の『おせん捕物帖』です。

重山規子が演ずるところの岡引きの娘・おせんは、普段は普通の着物姿なんですが、悪人と戦う時は何故か左図のような扮装。剣術の達人である恋人の浪人(沢本忠夫)のチャンバラなんか見ておらず、私は彼女の脚ばかり見ていましたよォ。

主題歌も、“♪おせん お転婆 目明し娘〜”というフレーズだけは憶えていま〜す。

 

梶芽衣子

『怪談昇り竜』(1970年・日活/監督:石井輝男)

 

剛田組に殴り込みをかけた関東立花組二代目・立花明美(梶芽衣子)は、剛田を斬り殺すが、はずみで剛田の妹・藍子(ホキ徳田)の両眼まで斬ってしまう。藍子が飼っていた黒猫が、藍子の鮮血を舐めまわし、刑務所に入った明美は黒猫の悪夢にうなされる。三年後、出所して組に戻ると、子分たちが次々に両眼を斬られ、竜の刺青をした背中の皮を剥がされて殺される。立花組の縄張りを狙っている土橋組(安部徹)の仕業と考えられたが……

メクラやセムシなどのフリークスの登場や、残酷趣味にエロチズムといった石井輝男の世界が遺憾なく発揮されています。少し悪ノリのきらいもありますがね。

梶芽衣子の着物姿は冷たい色気があって、修羅雪姫の原点になっていま〜す。

 

『修羅雪姫』(1973年・東宝/監督:藤田敏八)

 

非業の最期をとげた両親の復讐のため、娘が犯人を求めて修羅の道を行く……

夫と子どもを4人の悪党に殺され、その内の一人を殺して無期懲役になった母親が、残り3人への復讐を託すために刑務所の中で産んだのが主人公の雪(梶芽衣子)なんですね。雪を育て、武芸を教えるのが西村晃の坊主。酒樽訓練(坂道を転がる酒樽の中から脱出する)なんて、凄いですよ。とにかく、キャラがぶっ飛んでいます。釈由美子の修羅雪なんて可愛いものです。

♪〜義理も情けも 涙も夢も

          昨日も明日も 縁のない言葉

             怨みの川に身をゆだね

                女はとうに捨てました

『修羅雪姫』の主題歌「修羅の花」で〜す。

 

『修羅雪姫・怨み恋歌』(1974年・東宝/監督:藤田敏八)

 

前作で両親の仇を討った雪は、凶悪殺人犯として捕らえられ、死刑の判決を受ける。しかし、護送中に特警長官の菊井(岸田森)の手の者によって救出される。菊井は保釈を条件に、アナーキストの徳永乱心(伊丹十三)が持っている手紙と命を奪うよう雪に命じる。雪は、乱心の家で住込みの女中として働いているうちに、乱心の革命家としての情熱に心がうたれはじめる。そして、菊井が乱心を逮捕したことから、雪は菊井を裏切り、乱心から預かっていた手紙をスラム街で医者をしている乱心の弟(原田芳雄)へ届けるが……

藤田敏八の演出は、ところどころにはハッとする映像がありますが、全体としては血しぶきドバッの旧態然のヤクザ映画と同じです。ただ、出演者の個性によって中身の濃いものになっています。特に岸田森がいいんだなァ。大臣の安部徹を影で操る冷徹なインテリ悪党がグッドです。配下に従える南原宏治や山本麟一のボスとして圧倒的な存在感をしめしていましたよ。

それにしても、この頃の梶芽衣子には、何か近寄りがたいゾッとするような冷たい美しさがありましたねェ。

 

 

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