劇場未公開西部劇


『無法の拳銃』(1959年/監督:アンドレ・ド・トス)

冬のワイオミングの開拓村、牧場主のブレイズ(ロバート・ライアン)は、土地を巡って農民たちと一触即発の危機にあった。そこへ、軍の金を奪った無法者の一団がやって来る。首領のブラフ(パール・アイブス)は負傷しており、治療の間、町を支配する。町を無法者から守るために、ブレイズは無法者に追手から逃れる山越えの道を案内するが……

無法者の一団はブラフによって統率されていますが、彼がいないと本能のままに行動するならず者たちです。ブラフの死は迫っており、それがスリルを生んでいますね。ラストの処理にも満足、満足。

主人公(ロバート・ライアン)が決して正義感あふれる人物でなく、悪党(バール・アイブス)も単純な悪でなく、閉ざされた空間を舞台にサスペンス溢れる西部劇になっています。

出演スターは地味ですが、撮影が『リオ・ブラボー』などのハワード・ホークス作品で有名なラッセル・ハーラン、脚本が『大砂塵』などで一癖も二癖もある人物描写したフィリップ・ヨーダンという一流スタッフが担当していますので、B級西部劇といえども骨のある作品に仕上がっていま〜す。

画像は無法者一味のジャック・ランバート(左)とフランク・デ・コバ(右)です。この二人の最期は強烈な印象を残します。

 

『西部に来た花嫁』(1973年/監督:ヤン・トロエル)

ザンディ・アレン(ジーン・ハックマン)は、嫁入り希望の新聞広告を見てハンナ(リブ・ウルマン)を嫁に迎える。ザンディの結婚目的は子どもを作ることで、ハンナの年齢が32歳だったことにガッカリする。新聞広告では26歳となっていたのだ。家に着いたその日から強引に迫ってくるザンディの野蛮な態度にハンナもガッカリするが、ザンディの生活を変えていこうと決意する。ザンディもハンナの料理・洗濯・掃除に満更でもなく……

貧乏だけど東部で暮らしていた女性と西部の荒くれ男の結婚生活におけるカルチャー・ギャップを描いた作品。原作が女性作家(リリアン・ボス・ロス)なので、最終的には男が妥協する内容となっています。西部劇というよりハーレクイン・ロマンの世界ですね。

それと、西部といってもカリフォルニアが舞台なので海が出てきます。冒頭でハックマンがウルマンを迎える駅亭から海が見えたのには、やっぱり西部劇として違和感をもちました。殆どハックマンとウルマンによる芝居ですが、ハックマンの昔の女役のスーザン・ティリエルは下品な女を演らせたら巧いなァ。結論としては、“話の種”程度の作品で〜す。

 

『セラフィム・フォールズ』(2006年/監督:デビッド・フォン・アンケン)

ネバダの雪山でキャンプしていたギデオン(ピアース・ブロスナン)は何者かに銃撃されて傷を負う。襲撃者はカーヴァー(リーアム・ニーソン)と4人の男だった。ギデオンは追跡者の一人を倒して逃れるが、彼らの追撃は執拗だった……

劇場未公開の西部劇です。雪山から砂漠でのラストの二人の対決までの過程を、説明的セリフを使わずに映像で表現していく手法には好感を持ちましたね。衣服が薄くなっていくように、ブロスナンがニーソンに何故追われるかは徐々にわかっていきます。そしてそれは、固く閉ざされた二人の心情が吐露されていく過程の具現化にもなっているんですね。戦争による心の傷というメッセージ性の強い映画で、劇場公開されなかったのは一般受けしないからでしょう。映画的には悪くありませんが、西部劇らしい爽快感はありませ〜ん。

 

『四十挺の拳銃』(1957年/監督:サミュエル・フラー)

連邦保安官のグリフ(バリー・サリバン)は、弟たちと両親の住むカリフォルニアに向かう途中、40人の部下を率いたジェシカ(バーバラ・スタンウィック)と出会います。バーバラ・スタンウィックを先頭に騎馬の群れが走り抜けてゆくシーンが凄いです。最初に観客を驚かせるのは、サミュエル・フラーの得意とするところなんですが、それがわかっていても、この映画の出だしは素晴らしいの一語につきますね。

町に着くと、ジェシカの弟ブローキー(ジョン・エリクソン)が酒を飲んで暴れており、止めに入った保安官(ジョン・フォードの西部劇でお馴染みのハンク・ワーデン)がブローキーに射ち殺されます。グリフはブローキーを逮捕しますが、証拠不十分で釈放されます。大牧場主であるジェシカがシェリフ(ディーン・ジャガー)を始めとして町の有力者に圧力をかけたからなんです。

ジェシカの部下の中に郵便強盗犯がいることをつきとめたグリフは、ジェシカの牧場に乗り込んで逮捕します。そんなグリフにジェシカは惹かれ始めます。部下の口から税金着服を暴露されるのを恐れたシェリフは、殺し屋を使って部下を殺し、さらにグリフを狙いますが失敗し、ジェシカに咎められて自殺します。ジェシカとグリフは愛し合うようになりますが、ブローキーは自分たちの意のままにならないグリフを殺そうと考えます。グリフの弟ウエス(ジーン・バリー)の結婚式にやってきたブローキーは、誤ってウエスを殺してしまいます。逮捕されたブローキーは、面会にきたジェシカを人質にして脱獄しますが……

その後のグリフの行動が凄いんですよ。ジェシカの急所を外して射ち、ジェシカが倒れてブローキー身体が露になったところを情け容赦なく銃弾をぶち込みます。これは衝撃的なシーンといえますね。他にも短いカットとワンシーン=ワンカットの交錯、緊張感と倒錯感、思いきったイメージの省略など、フラーならではの演出が随所に見られます。

それから、それから、バーバラ・スタンウィックがいいですね。この映画に出演した時の年齢は50歳。多くの40年代のスターが引退していくなかで、スタンウィックはB級西部劇に誇りを持って出演しています。だから、映画の中でも輝いているんですね。年齢を感じさせませんでした。

B級西部劇ですが、秀作といえま〜す。

 

『アステカの秘宝』(1978年/監督:デビッド・ノーズ)

古代アステカ伝説にある黄金の車輪を探しに、船長(ボー・ブランディン)と女(マーゴット・キダー)がサンタフェにやってくるんですな。時代は1836年で、サンタフェはメキシコ領です。インディアンを殺して頭皮を剥いで売る無法者(ジェフリー・ルイス)や流れ者の元軍人(クリストファー・ウォーケン)が船長に誘われて加わります。秘宝の場所がナバホとアパッチが敵対しあっているインディアンの土地だったため、腕の立つ護衛が必要だったんですね。彼らはアパッチの襲撃を退け、黄金の車輪を見つけますが……

ビデオには1981年の作品となっていますが、IMDbでは1978年となっている劇場未公開の西部劇です。

クリストファー・ウォーケンの拳銃がコルト・パターソンで、映画では滅多にお目にかかれない物だったので嬉しかったですね。ジェフリー・ルイスの武器がボウガンというのもね。頭皮狩りの無法者というのも珍しいです。マーゴット・キダーは金で買われた女で、『征服されざる人々』や『高原の女』にも出てきましたが、19世紀初頭には白人奴隷女がいたんですね。時代にあった考証は褒められますが、演出面はウ〜ン。

主要人物がサンタフェに揃うまでは、緊張した展開でスリルがあるのですが、宝探しに出かけてからはダラダラと間延びします。緊迫感がなく、アクションも迫力なく、退屈です。竜頭蛇尾だァ。

 

 

 

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