ビデオで観たRKOのB級西部劇


家庭用セルビデオとして3千円代の廉価盤ビデオが発売されはじめた1990年頃、(株)ジェットなる会社がRKOのB級作品ばかりを集めて、「RKO Legend Collection」というシリーズ(全部で56本)を発売しました。

その中に、『ブッラクストーンの決闘』(未公開)、『アニー・オークレー』(公開時の題名は『愛の弾丸』)、『群盗の町』(未公開)、『高原の女』、『峡谷の銃声』(公開時の題名は『渓谷の銃声』)、『拳銃往来』、『拳銃街道』、『太陽の谷間』(未公開)という西部劇が8本ありました。

 

『ブラックストーンの決闘』(1948年/監督:レイ・エンライト)

1889年のオクラホマ、ビル・ドーリンをリーダーとするギャング団がブラックストーンの銀行を襲撃する。町の連中がそれに気づき反撃するが、町の財産は全て奪われてしまう。銃撃戦で傷ついたビル・ドーリンの姪シャイアン(アニー・ジェフリーズ)は、逃げる途中で落馬し元テキサスレンジャーのバンス(ランドルフ・スコット)に助けられる。バンスに命を助けられたシャイアンは自首する。ランドラッシュにより土地を得たブラックストーンの町民は、新たにガスターの町を築く。バンスがUSマーシャルに任命され、仮釈放されたシャイアンが事務所で働くようになる。バンスはビル・ドーリンを捕らえることに成功するが、仲間のサンダンス・キッド(ロバート・ライアン)は逃してしまう。キッドは、シャイアンにドーリン脱獄の手引きを要請するが、断られたためにシャイアンを殺してしまう。怒りに燃えてバンスがキッドの後を追うが……

ヤンガー兄弟、ダルトン兄弟、ビリー・ザ・キッドと賑やかに登場しますが、ランドルフ・スコットと対決するわけでなく登場するだけです。スコットと対決するのがサンダンス・キッドなんですが、実在の人物だけにラストの決着が歯切れの悪いものとなっています。そのためスカッとしたものにならず、総合点は低くなりますね。

インディアン役のチャールズ・スティーブンスや、懐かしの悪役トム・タイラーとか、レックス・バーガー(エメット・ダルトン)の顔を見つけた時は嬉しくなりました。タイトル・クレジットにジェースン・ロバーツの名があったので、注意していたのですが出てきません。後で調べたら父親(判事役)の方でした。

珍品西部劇として記憶しておきましょう。

 

『アニー・オークレー』(1935年/監督:ジョージ・スティーブンス)

戦後は押しも押されもせぬ名監督ジョージ・スティーブンスが、監督として、やっと注目されはじめた頃の作品です。公開時の題名は『愛の弾丸』で、ハート・ウォーミングな西部劇になっています。主演はバーバラ・スタンウィック。当時は悪女役のほうで有名でしたが、ここでは後年のウエスタン・クイーンの片鱗を見せる西部女を好演していますよ。

野鳥射ちで家族の生活を支えている田舎娘のアニー(バーバラ・スタンウィック)が、巡業にきたバッファロー・ビルのワイルド・ウエスト・ショーの射撃名人トビー・ウォーカー(プレストン・フォスター)に一目惚れ。彼と腕くらべをし、その腕前を認められてバッファロー・ビルの一座に入り、人気スターとなる。彼女にショーのテクニック(例えば、口に咥えたタバコを射ち落とす)を教えているうちにトビーもアニーを愛するようになる。しかし、事故がもとで目を悪くしたトビーは、射撃ショーでアニーの指を傷つけてしまい、黙って一座を去る。アニーはヨーロッパにまで巡業して大成功をおさめるが、トビーへの想いは変わらず、最後にトビーと再会して結ばれる。

バッファロー・ビル、ネッド・バントライン、シッティング・ブルという実在した人物が登場しますが、中でもシッティング・ブル(チーフ・サンダーバード)の描き方がよかったですね。

バントラインがブルをショーに加入させようとして、ショーを見せるんですが全然反応しない。ところが、アニーの銃の妙技を見て、感激してショーに参加しアニーとの友情が生まれます。見かけでなく本物がわかる人物として描かれています。

第7騎兵隊のカスターの仇といって、ブルを襲う白人の客が出てきたり、町で酔っ払いにぶつかり、酔っ払いのカツラが取れて、それを拾ったところを目撃した通行人が、頭の皮を剥いでいると誤解して泡を食って逃げ出すシーンは、実際にありそうな話ですよね。

バーバラ・スタンウィックは、年をとってからも綺麗でしたが、この作品の頃が最高に綺麗な時じゃないかなァ。

 

『群盗の町』(1946年/監督:ティム・ウェイラン)

テキサス、ニューメキシコ、コロラド、カンザスと接するオクラホマ州クイントの町は、無法者が集まる群盗の町だった。法を後ろ盾として独善的な捜査をする連邦保安官ハンプトンと対立したロウリー(ランドルフ・スコット)は、ハンプトンに射たれて傷を負った弟を連れてクイントの町へやってくる。そこでロウリーは、有名な無法者たちと親交を結ぶが……

ジェームズ兄弟、ベル・スター、サム・バス、ダルトン兄弟といった実在した無法者が登場しますが、100%フィクション。

町の浄化のために新聞を発行しているアン・リチャーズとスコットが、互いに好意を持ちながら、意見のくい違いから着いたり離れたりするのは、この手の映画にはよくあるパターンですね。

内容的にはこの作品もトホホですが、スコットが西部男らしい動きのあるアクションを見せてくれましたので、満足、満足です。

 

『高原の女』(1948年/監督:ノーマン・フォスター)

 

妻に先立たれた開拓者デイヴィ(ウィリアム・ホールデン)が、家事と子どもの面倒をみてもらうために、白人奴隷のレイチェル(ロレッタ・ヤング)を買って、形だけの妻にする。そこへ、デイヴィの友人である猟師のジム(ロバート・ミッチャム)がやって来て、レイチェルを見初める。
 ギターを弾きながら歌うロバート・ミッチャムは中々の美声です。

ロレッタ・ヤングをめぐって、他愛ない三角関係の物語が展開するのですが、ロレッタ・ヤングがとび抜けた美人でなく、働き者の開拓時代の女を演じていたのが良かったですね。

『征服されざる人々』でもポーレット・ゴダードがイギリスから送られてきた白人奴隷でしたが、18世紀のアメリカには、こうした奴隷がいたんですね。

 

『狭谷の銃声』(1948年/監督:マーク・ロブスン)

若い牧場主のクレイ(ロバート・スターリング)は、弟スティーブ(クロード・ジャーマン・Jr)と馬をソノーラに運ぶ途中の町で、レドノフ(ジョン・アイアランド)が仲間二人と脱獄したことを知らされる。クレイは、レドノフが自分を恨んでおり、自分を狙ってやってくることを確信する。ソノーラへ馬を急いで運びたかったが、途中で馬車が壊れて難渋している酒場女のメリー(グロリア・グレアム)たち4人を同行する破目になり……

劇場公開時は『渓谷の銃声』という題名だったロード・ムーヴィ的な西部劇。

『チャンピオン』や『暗殺5時12分』などで切れのよい演出を見せたマーク・ロブスン監督の日本初登場作品です。冒頭でジョン・アイアランドがキャンプしている男たちを殺し、服を奪って囚人服を焼き捨てるシーンはマーク・ロブスンらしい切れ味を見せています。同伴者を守りながら、迫り来る脱獄犯と如何にして戦うかがポイントなんですが、サスペンスが今イチ盛り上がらないんですよねェ。部分的には感心させられるシーンはあるのですが、全体としてはダラダラしたものになっています。

蛇足ですが、有名になる前のマーサ・ハイヤーが酒場女の一人として出演していました。

 

『拳銃往来』(1948年/監督:シドニー・ランフィールド)

騎兵隊員が殺され、軍服70着が奪われるという事件が発生する。何か大がかりな犯罪が背後に隠されていることを感じた陸軍情報部は、ジョン・ヘブン(ディック・パウエル)を事件の起きた町に派遣する。ヘブンはチャーリーと呼ばれている町の顔役に訪ねると、チャーリーは女(ジェーン・グリア)だった……

ルーク・ショートの小説を映画化したハードボイルド西部劇。ルーク・ショートの小説を映画化した西部劇は『復讐の谷』と『月下の銃声』を観ていますが、この作品も捻りの効いた物語となっています。悪役が女ボスというのが珍しいでしょう。

ジェーン・グリアは女ボスを演るには、少し線が細すぎましたね。美人であっても、悪女の魅力が匂ってこないんですよ。

ディック・パウエルも西部劇をやるには動きが重い(グィン・ウィリアムスとの殴り合いは、ハードボイルド仕込で見られましたが)ので、早射ちには見えません。

パール・アイブスの歌が流れる毛色の変わった西部劇として記憶しておきましょう。

 

『拳銃街道』(1947年/監督:レイ・エンライト)

保安官がいない町へ、名保安官として評判の高いバット・マスターソン(ランドルフ・スコット)が招聘されてやってくる。町のボスで、土地の買占めを図る酒場の経営者は、農地開拓を進めるアレン(ロバート・ライアン)に殺人の濡れ衣を着せるが、マスターソンは犯人が他にいることを見抜き……

 スコットのバット・マスターソンは、らしくないです。山高帽をかぶっていなければ、杖も持っていないんですからね。ただ、ラストの「銃を捨て、ニューヨークへ行って、ペンで生活するんだ」のセリフは史実にあっていました。実際、マスターソンはスポーツ記者として活躍するんですからね。
 映画の方はというと、出来の悪いB級西部劇です。レディーに酒場女、お節介やきのオバサンに頑固爺さんと、馴染みのキャラクターが登場しますが、スコットの目立った活躍がないままにエンド。スリルもサスペンスもありゃしない。
 ライアンが物語の中心人物になっており、彼の方が主役みたいなものだなあ。

 

『太陽の谷間』(1942年/監督:ジョージ・マーシャル)

インディアンを逃がした罪で捕らえられたジョナサン(ジェームス・クレイグ)はピマ砦から脱走する。途中で駅馬車にタダ乗りしているところをインディアン管理官のジム・ソイヤーに見つかり、砂漠の真ん中で放り出される。インディアンに助けられ、やっとのことで町に着いたジョナサンは、クリスティン(ルシル・ボール)と出会い、心惹かれる。クリスティンがジムと結婚することを知ったジョナサンは、ジムへの恨みから結婚を妨害する。ジムはクリスティンとツーソンで結婚式をあげようと駅馬車に乗るが、ひょんなことからジョナサンが同乗する。そこへアパッチが襲撃してきて全員アパッチに捕らえられる。アパッチたちは、ジムがインディアンへの配給物資を搾取していることを知っており、彼を殺そうとするがジョナサンが止める。ジョナサンさんは、アパッチの酋長コチーズからヤキスカマと呼ばれて信頼されており、搾取した配給物資の倍返しを約束してジムを助けるが……

戦前の作品では、ジェロニモは常に悪役として登場しますね。この作品でも平和主義者のコチーズに反対する好戦的なインディアンとして描かれており、主人公と和平を賭けて決闘します。インディアンが襲撃してくるシーンは躍動感があって、さすがジョージ・マーシャルです。

内容は、定番(インディアンに理解のある主人公、主人公を誤解している騎兵隊、私腹を肥やす悪党のインディアン管理官、結婚相手が悪だと気づき主人公と結ばれるヒロイン)ですが、アクションとユーモアがほどよく絡み合った一品となっています。この頃のルシル・ボールって、まだコメディエンヌでなく美人女優としてヒロインを演じていたんですね。『風と共に去りぬ』のスカーレット候補の一人だったことが理解できました。

 

 

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