大映時代劇


『悲恋の若武者』(1962年・大映/監督:西山正輝)

西南戦争間近の鹿児島、青雲塾で学ぶ天野駿太郎(橋幸夫)は塾長の娘・志保(三条江梨子)と互いに惹かれあっていた。西南戦争が始まり、駿太郎は塾長(石黒達也)から命じられて西郷軍に密書を届けるが、留守中に政府軍が塾を襲い、志保は政府軍に捕らえられる。志保を助けに政府軍の屯所に忍び込んだ駿太郎も捕まるが、隊長の成尾(天知茂)に助けられる。成尾は、それとは知らずに駿太郎が昔助けた密偵だった。成尾は時代の変動を説き、二人に上京するように勧めるが……

橋幸夫主演の歌謡映画です。だけど、この歌がヒットしたのか記憶がないんですよねェ。内容は西南戦争を背景にした純愛ドラマでして、物語展開からすると橋幸夫が死ぬ方が自然なのですが、何故か三条江梨子の方が死んじゃいます。橋幸夫が死ぬと女性ファンが納得しなかったからでしょう。はっきり言って三条江梨子は添物です。

画像は、橋幸夫と塾の下女役だった姿美千子。

 

人肌孔雀(1958年・大映/監督:森一生)

悪徳商人(沢村宗之助)と結託した悪徳勘定奉行(河津清三郎)によって7年前に取り潰された豪商の娘(山本富士子)が彼らに復讐する物語。

山本富士子が若衆姿などの三変化に加え、主題歌に踊りを見せる山本富士子の映画。歌は下手ではないけどキンキン声だし、立回りもお嬢さん剣法。当時の山本富士子ファンってどういった人たちなんだろう。アイドルではないし、オジさんたちに人気があったのかなァ。

市川雷蔵が応援出演しています。“緋牡丹博徒”で藤純子を助ける鶴田や健と同じような役回りですね。山本富士子の一枚看板では、集客に限界があったのかなァ。

 

人肌牡丹(1959年・大映/監督:森一生)

藩主が病弱なのをいいことに、実験を握ろうとする悪家老(田崎潤)の陰謀を防ぐために、藩主の異母妹(山本富士子)が加賀百万石に乗り込み……

元ネタは“加賀騒動”ですね。田崎潤が大槻伝蔵の役回り。でもって、『人肌孔雀』の姉妹編。山本富士子が歌って踊って、五変化を見せてくれます。ただそれだけの映画で、内容はどうってことはありません。

山本富士子の魅力って京人形のような美しさにありますね。美麗だけど、セクシーなところがありませ〜ん。

 

 

二匹の用心棒(1968年・大映/監督:三隅研次)

関の弥太郎(本郷功次郎)と箱田の森助(長門勇)は足抜けしたお清(赤座美代子)を助けるが、森助がお清を連れ去ってしまう。弥太郎が森助に追いついた時は、森助がお清に手をつけた後だった。弥太郎はお清を逃がし、森助と斬りあいになるが勝負がつかず別れわかれとなる。弥太郎は旅籠で父娘と相部屋になり、サイフを盗まれる。追いついてサイフを取り返すが、斬りあいで傷ついた父親は娘のお小夜を弥太郎に託して断崖から身を投げる。弥太郎はお小夜を、お小夜の母の実家・沢井屋へ連れて行くが……

原作は長谷川伸の『関の弥太っぺ』で、これまで何度も映画化されていますが、弥太っぺと同じくらい森助に比重をかけている点が目新しいですかね。その分、弥太っぺとお小夜(高田美和)の情の部分が希薄になって、長谷川伸の世界が失われています。

中村錦之助が主演した『関の弥太ッぺ』(1963年・東映/山下耕作)という最高傑作があるのに、この頃の大映は安易な企画で名作をやたらリメイクしていますね。会社が傾いていく時というのは、こういうものなんでしょう。

毛利郁子が弥太っぺに惚れている居酒屋の女の役で出演していたことだけで満足しましょう。

 

忍びの衆(1970年・大映/監督:森一生)

秀吉からお市の方(藤村志保)を救い出すように密命を受けた伊賀忍者の四人(松方弘樹、峰岸隆之介、本郷功次郎、安田道代)が、柴田勝家の居城・北の庄へ向かう。途中、賤ケ岳で敵の忍者・愛染明王に襲われ……

司馬遼太郎の『伊賀の四鬼』が原作。警戒厳重な北の庄城の“鉄の密室”から如何にしてお市の方を連れ出すかが見どころです。忍者の非情性(松方や本郷ではキャラ的に無理だったかも)はあまり感じられず、ゲームのような感覚ですね。内容的には甘いのですが、センベイを食べながら観るぶんには気楽に楽しめる忍者映画でした。

 

 

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