『毒婦高橋お伝』(1958年・新東宝/監督:中川信夫)
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舶来堂の伊兵衛(丹波哲郎)の店で宝石を万引きしたお伝(若杉嘉津子)は、警官の並河和馬(明智十三郎)に捕まるが、逆に色香で和馬の心を捉えてしまう。舶来堂の番頭・市三に見つかったお伝は、伊兵衛の情婦にされ人身売買の仲間になる。お伝には病身の夫・波之助がいたが、市三に殺される。市三はお伝に言い寄ったところを伊兵衛に殺され…… 高橋お伝は実在の人物で、山田朝右衛門によって斬首されたことで有名です。お墓は谷中霊園にあります。 映画の方は、病床の夫の治療費と、捨てた娘の養育費を稼ぐために悪の道に入ったお伝が、ふとしたことから運命に翻弄されていく物語となっています。毒婦というより、絶望的な情念あふれる愚かで哀れな女ですね。若杉嘉津子には、どこか退廃的な魅力があって、この手の役が似合っていま〜す。 |
『剣聖暁の三十六番斬り』(1957年・新東宝/監督:山田達雄)
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柳生十兵衛(辰巳柳太郎)から柳生流の秘伝を授かった荒木又右衛門(嵐寛寿郎)は、江戸の飛騨守(中山昭二)に伝える旅の途中で、渡辺靱負(林寛)とみね(前田通子)の父娘と知り合う。飛騨守に秘伝伝授した又右衛門は本多家に仕えることになり、みねと結婚して姫路に向かう。河合甚左衛門(竜崎一郎)という親友を得るが、甚左衛門の甥・又五郎(丹波哲郎)が靱負を殺害したことから義弟・数馬(和田孝)の助太刀をすることになり…… 奉書を使って飛騨守に柳生流秘伝を伝授するシーンから二刀を使っての36人斬りまでの、講談ネタを元にしたお馴染みの荒木又右衛門の伊賀上野での仇討物語。目玉の松ちゃんを初めとしてチャンバラスターなら一度は演じたくなるようですね。 アラカンは又右衛門を3回やっています。この作品の時は53歳で、動きは少し悪くなっていますが剣さばきは見事なものですよ。特に冒頭の辰巳柳太郎との立回りは見応えがありま〜す。 |
『夕焼け富士』(1952年・新東宝/監督:中川信夫)
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水谷縫之助(嵐寛寿郎)は復讐のために島抜けをする。18年前、馬場東慶(江川宇礼雄)によって公金横領の罪を被せられて父は切腹し、自分と母は遠島にされたのだ。縫之助は一味のひとり・稲田弥五衛門を襲うが、弥五衛門は罪を悔いており、命を助ける。しかし、弥五衛門の口から自分たちの悪事がバレるのを恐れた東慶一味は、東慶の倅・重四郎(伊藤雄之助)が弥五衛門を殺す。弥五衛門の娘・美穂(月丘千秋)は、重四郎から殺したのは縫之助だと言われて、縫之助を仇と狙う。しかし、美穂の兄で目付である友之丞(田崎潤)は父の受けた傷口から重四郎に不審の念を持つが…… 原作は大仏次郎の小説です。伊藤雄之助が目的のためなら手段を選ばない悪を演じて存在感を出しています。内容的には平凡な娯楽時代劇ですが、伊藤雄之助の怪優ぶりに満足、満足。 |
『稲妻奉行』(1958年・新東宝/監督:山田達雄)
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薩摩藩に関わる事件は、自藩の問注所で裁きをつけることが幕府から公認されていることをよいことに薩摩藩士の狼藉は目に余るものがあった。婚礼の土産物にする名刀が盗まれ、問注所の責任者・佐藤松太夫(江川宇礼雄)は、刀を預けていた相模屋の若主人・丹七(和田孝)を捕えようとするが、町奉行所筆頭与力の大岡忠右衛門(嵐寛寿郎)が丹七を助ける。薩摩藩は老中・水野忠信(高田稔)に10日以内に刀を見つけるように要請する。水野は問注所の撤廃を交換条件とし、見つからなかった場合は切腹することを約する。大岡は名刀を奪った謎の浪人(天知茂)をつきとめるが…… 若き日の大岡越前(嵐寛寿郎)の活躍を描いた娯楽時代劇です。期限までに事件が解決できない時は切腹という設定といい、横暴でスケベーな悪党(江川宇礼雄)が横恋慕した女(宇治みさ子)にふられた腹いせに大岡を逆恨みする状況といい、定番パターンで物語が展開していきま〜す。 ところで、盗賊(天知茂)の着物がリバーシブルになっていて、黒地の表から白地の裏に着替えて追ってきた捕り手から逃れるんですが、他の映画(テレビ時代劇だったかな)でも観たような気がします。リバーシブル着物というのは、昔から時代劇に使われていたんですねェ。 |
『風雲七化ケ峠』(1952年・新東宝/監督:並木鏡太郎)
郷里に帰る途中の母衣権兵衛(嵐寛寿郎)は、片目の男(富田仲次郎)に襲われている幸吉を助ける。しかし、幸吉は権兵衛が酒を飲みすぎて寝込んでいる時に殺され、責任を感じた権兵衛は幸吉の死に際の頼みをきいて土産の包みを、幸吉の妹・加代(三原葉子)に届けることにする。加代は七化ケ峠の奥に隠れており、誰も峠に寄せつけなかった。莫大な財宝を隠した父が何者かに殺されたからだ。財宝を狙う悪人たちは、幸吉の土産に隠し場所の地図があると考え…… 隠された財宝をめぐる娯楽時代劇ですが、誰の財宝かわかりません。財宝を狙っている連中が何者なのかもわかりません。全体的に説明不足で、登場人物がバタバタしているだけなんですよ。 三原葉子のデビュー作品ということで満足しておきましょう。 |
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