連続チャンバラ活劇


『まぼろし城』(1940年・日活/監督:組田彰造)

 

3部からなる連続チャンバラ活劇。

飛騨一帯を荒らしまわるまぼろし団の探索に公儀隠密の木暮月之助(原健策)が薬売りに変装して高山にやってくる。しかし、月之助の報告によって将軍・家光から高山に蟄居させられた松平忠輝(河部五郎)の家臣・乾大八郎(戸上城太郎)に見破られ、月之助は大八郎に命を狙われる。まぼろし団は幕府転覆のために忠輝を担ぎ出し、徳川政権に反感を持っている外様大名を味方に引き入れようと画策する一方、平家の落人部落に伝わっている山絵図を狙っていた。山絵図があれば、街道を通らずに山々に巡らせた秘密の間道を通って江戸まで行くことができるのだ。月之助は落人部落の長・霧右衛門(香川良介)を訪ねるが、山絵図は霧右衛門の子・桐作(島田照夫)が郡代・大司五郎左衛門(上田吉二郎)の頼みで持ち出していた。月之助は、谷の向こう側で桐作がまぼろし団に襲われているのを目撃する。ゴンドラに乗って谷を渡る途中で、大八郎に綱を切られ月之助は千尋の谷へ……(ここまでが第1部)

月之助は綱につかまってターザンの如く谷を渡り、桐作を助ける。山絵図は奪われなかったが、山絵図を収納している手箱の鍵を桐作は落としてしまう。その鍵をひろったのが、まぼろし一味の韋駄天お澄(香住佐代子)で、お澄は月之助に惚れている。霧右衛門の娘・百合(橘公子)に横恋慕している落人部落の男が裏切って山絵図の隠し場所をまぼろし団に教えたので、まぼろし団が部落を襲うが、逆に駆けつけた月之助によって斬りはらわれる。逃げるまぼろし団の首領を月之助が追うが……(ここまでが第2部)

月之助の追跡を邪魔するのが、またしても大八郎。月之助は忠輝の屋敷に乗り込み、家光の真意を忠輝に伝えると、忠輝は自分の不明を恥じ改心する。まぼろし団は裏切り者の忠輝を襲うが、大八郎が忠輝を守って斬り死にする。一方、月之助は将軍献上馬を盗みにきたまぼろし団一味に潜って、本拠地まぼろし城に乗り込むが……

 

戦前の少年雑誌『少年倶楽部』で大人気だった高垣眸の小説の映画化です。まぼろし城にそびえる巨大な邪神像や、猿男や傴偃男といった怪人物の登場は、見世物的雰囲気があって嬉しくなりますね。

主演はテレビ版で霧右衛門を演じていた原健策で、戦後は傍役ばかりですが、戦前は主演作品が結構あるんですよ。これといって特徴がないので、河部五郎や上田吉二郎が目立って、主役をアピールできていませ〜ん。

 

 

『月の影法師』(1958年・大映/監督:弘津三男)

『月の影法師・消ゆく能面』

夜叉王が作った小面と般若の能面は、二つが一緒にあると天下に騒乱をもたらすと云われ、徳川家康は小面を伊達藩に、般若を薩摩藩に授けた。家光の代になり、幕府は能面を奪って、伊達藩と薩摩藩を取潰そうと考える。

伊達藩恒例の能の会の幕府使者として密命を受けた長倉典膳(杉山昌三九)と隠密・河上虎之助(千葉敏郎)が仙台にやってくる。河上虎之助が能役者の多生成清の屋敷を襲って小面を奪うが、小面を見せてもらうために屋敷に滞在していた薩摩藩の三世仙之助(梅若正二)が虎之助を追う。成清の妻と娘・美乃(三田登喜子)は成清を殺して子面を奪ったのは仙之助と疑い……

『月の影法師・山を飛ぶ狐姫』

美乃は小面を奪った黒幕が典膳だと知り、薩摩藩にある般若の面も奪われたことを仙之助に知らせる。一方、小面を奪った虎之助は狐姫(岸正子)を頭領とするむらさき党の疾風小僧に盗まれる。むらさき党は徳川に滅ぼされた真田の残党で、能面を奪って騒乱を引き起こそうと考えていた。能面を巡って、仙之助・典膳一味・むらさき党の三つ巴の争奪戦がはじまり……

ニッポン放送の連続ラジオドラマの映画化です。主演の梅若正二が大映を辞めたために、未完のままになっていますね。梅若正二は1957年の『赤胴鈴之助』でデビューし、人気スターになったのですが、態度がでかく評判はよくなかったようです。交通事故をおこしてブランクがあいたことから、1959年1月の『天竜の鴉』を最後に大映作品から去っています。その後、大蔵映画なんかに出演していますが、演技力がないので何時の間にか消えてしまいましたね。

 

『虚無僧変化』(1956年・大映/監督:弘津三男)

林成年

徳川末期、ロシアの脅威から蝦夷地を護るために北辺警備隊の任務についた小川達之助(林成年)と江見主税(夏目俊二)は、隊長の小野田喜内(杉山昌三九)が立石屋十兵衛(荒木忍)と結託して密貿易をしている事実を知る。秘密を知られた小野田は達之助を一人厳寒の宗谷に残し、主税は立石屋に暗殺を命じる。達之助は函館に向かう途中で疲労困憊して倒れるが、虚無僧の大和田月心(黒川弥太郎)に助けられる。一方、函館の地で立石屋一味に襲われた主税は、北海屋のお雪(角梨枝子)に助けられる。しかし、主税の生存を知った立石屋の追及は厳しく、お雪が別の隠れ家に主税を移そうとするが、立石屋に見つかってしまう。

拳銃に狙われる主税を救ったのが、達之助と月心だった。立石屋から奪った拳銃はロシア製で、密貿易の証拠となるものだった。達之助、主税、お雪の三人は小野田の悪事を暴くために拳銃を持って江戸へ向かうが、お雪に横恋慕していた番頭の小六(伊達三郎)が拳銃を盗んで、一足先に江戸にいる小野田に知らせる。小野田は、主税の妹で達之助の許嫁者でもある芳江を拉致して達之助を誘き寄せ……(前編)

達之助は月心率いる虚無僧集団に救われるが、芳江を救いだすことができなかった。一方、小六は小野田に斬られて証拠の拳銃を奪われる。そんな小六を助けたのが主税の恋人・照吉(阿井美千子)だった。お雪と巡り会い、心を入れ替えた小六は、芳江が囚われている場所を見つけ出し、虚無僧集団に知らせるが小野田に捕まってしまう。そして、主税とお雪も。達之助は、大目付に小野田の悪業を訴えるが、大目付も小野田の一味だった。達之助は、単身、小野田の屋敷に乗り込むが……(後編)

演出が悪いのか、スリルもサスペンスもありません。野球でいえばローテーションの隙間を埋めるような穴埋め的作品なので、適当に作られたのでしょう。

それにしても林成年は演技下手、チャンバラ下手。それでも主演しているのは“親の七光り”のお蔭でしょう。比較するわけではないですが、気丈な女の役が似合う角梨枝子と、繊細なサムライ役が似合う夏目俊二の存在が光りま〜す。

 

 

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