弥次喜多映画


弥次喜多道中記(1938年/マキノ正博)

役人に追われた鼠小僧(杉狂児)は料亭に逃げ込むが、そこで面をつけて踊っていた遠山金四郎(片岡千恵蔵)と出会う。金四郎のおかげで逃げることのできた鼠小僧はホトボリをさますために江戸を離れることにする。一方、金四郎も家督を弟に譲るため、家を出て東海道へ。二人は、ひょんなことから弥次・喜多となって旅をすることになるが……

真者の弥次・喜多が楠木繁夫とディック・ミネで、旅役者の座長が美ち奴、他にも服部富子など歌手が出演して、数々歌うオペレッタ調の時代劇。この下地があったので、翌年『鴛鴦歌合戦』という傑作ミュージカル時代劇が生まれたんですね。

偽の鼠小僧を暴くのが突発的ですが、笑いあり涙ありで、最後まで退屈しない娯楽作品に仕上がっていま〜す。

片岡千恵蔵・杉狂児・美ち奴

 

歌ふ弥次喜多(1936年・PCL/監督:岡田敬&伏水修)

徳山l・古川緑波

古川緑波の弥次さんと、徳山lの喜多さんが、娘っ子にチョッカイをかけながら東海道を旅するミュージカル時代劇。原作が古川緑波なので、舞台で上演したものを映画化したような気がします。

戦後の面白味のないロッパと違って、軽薄に浮かれて溌剌としていましたよ。徳山lって、「侍ニッポン」を歌っていた当時の人気歌手じゃなかったかなァ。顔はお笑い系ですけどね。

万華鏡のような振付で有名なバスビー・バークリーのミュージカルを真似たようなダンス・シーンもあり、満足、満足・

 

歌う弥次喜多・黄金道中(1957年・松竹/監督:大曽根辰保)

高田浩吉

お江戸日本橋を振出しに旅に出た弥次さん(高田浩吉)と喜多さん(伴淳三郎)は、黒船騒ぎの浦賀にやってくる。そこで、国際使節として外国に行くことになった母・お春(高峰三枝子)を捜しているおきんという少女(シリア・ポール)と知り合う。おきんに同情した二人は、お春を追って下田→清水→長崎へ……

高田浩吉にバンジュン、小坂一也、島倉千代子、藤島恒夫といったゲスト歌手が歌い、SKDのダンサーたちが踊るミュージカル時代劇。

ジョージ・ルイカー、トニー・谷、中村メイコ、花菱アチャコ、広沢虎造、堺駿二、東ケンジ、ミスワカサ・島ひろし、ミヤコ蝶々・南都雄二、東富士と賑やかに顔を揃えていますが、内容はありません。テレビが普及していなかった頃なので、こんな映画で大衆はバラエティーを楽しんだのでしょうね。

 

真夜中の弥次さん喜多さん(2005年/監督:宮藤官九郎)

弥次(長瀬智也)さんは、ホモ関係にある喜多(中村七之助)さんの薬物中毒を治すために、二人でお伊勢さん参りの旅に出る。お笑い狂の関所役人(竹内力)や、次郎長歓び組といった、変な連中と巡り会いながら旅を続けるが、弥次さんが旅に出たのには、もう一つ理由があった。女房(小池栄子)を過って殺してしまったのだ……

ホモ関係や薬物中毒といった現代の世相を浮かび上がらせるのに、時空を超えて現在の風景を点出させる方法は、20年前にアレックス・コックスが『ウォーカー』で演出しており、目新しいものではありませんね。時代劇の形を借りて、現代の風刺を試みているのですが、バカ騒ぎで終わっているような気がします。

宮藤官九郎の第1回監督作品は、作り手だけが面白がっている感じで、観ている側には、何の衝撃も与えません。こんな映画を喜ぶのは、浅学菲才な若者だけじゃないかなァ。

 

弥次喜多道中(1956年・大映/監督:斎藤寅次郎)

借金取りに押しかけられて長屋から逃げ出した弥次さん(市川雷蔵)と喜多さん(林成年)だったが、喜多さんがオランダ熱に罹って声が出なくなる。オランダ熱を治すことのできる医師・久庵(山茶花究)は、弟子の新之助(堺駿二)を伴って旅立っており、弥次喜多も久庵を追って旅に出る。運よく久庵に追いつき究理石の効能で喜多さんは声が出るようになるが、究理石を浪人の二人組に奪われてしまう。弥次喜多は究理石を取り返すために浪人を追うが……

ナンセンスというより低次元のギャグでアホらしくなります。タイトルで作品内容とは全然関係ない島倉千代子の歌(「りんどう峠」か?)を使ったりして、思いつきだけで演出している感じですね。映画の題名を羅列するギャグも、『凸凹巌窟王』でも使っており(当時、受けたのかな)、二番煎じの感がします。

斎藤寅次郎は喜劇の巨匠として邦画史に名を残していますが、戦後の作品には見るべきものがないですね。何かで読んだのですが、ピークは無声映画時代だったようです。可笑しいことを言って笑わせようとしても、それが全然可笑しくありませ〜ん。

それにしても、つまらない映画に市川雷蔵も出演したものだ。

 

 

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