『エノケンのとび助冒険旅行』(1949年・新東宝/監督:中川信夫)
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度重なる戦争により荒れ果てた京の町で人形使いのとび助(榎本健一)は、お福(ダイゴ幸江)という女の子と仲良くなる。戦争で母親と別れ別れになったお福は、母親がお福が生まれた日本一高い山のふもとに帰っていると思っていた。そこには頭が良くなる黄金の実が生えていると聞き、とび助はお福と日本一高い山を目指して旅立つ…… 分類としてはファンタジー・コメディ。旅の途中でいろいろなトラブル(土蜘蛛、鬼、妖怪に襲われる)にあいながら、やっとのことで目的地にたどりつき、女の子は母親を見つけ、男は知恵を授かるという他愛ない話で、ほのぼのとしていいものですよ。“がっかり沼”とか“苦しみ峠”というのは、『ネバー・エンディング・ストーリー』のイメージですね。 |
『エノケンの豪傑一代男』(1950年・新東宝/監督:荒井良平)
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分類としてはチャンバラ・コメディ。チャンバラならではのスラップスティックな可笑しさが部分的にはあるのですが、勘違いギャグは定型すぎてつまりません。 山本照子・和子という双子の女優さんは初めて見る顔で、他ではどんな作品に出演しているんだろう。気になる女優としてメモしておきましょう。 |
『エノケンの怪盗伝・石川五右衛門』(1951年・新東宝/監督:毛利正樹)
榎本美佐江 |
戦国時代の河内の国、鍛冶屋の五助(榎本健一)は野武士に母を殺され、恋人・小雪(榎本美佐江)も攫われそうになり、野武士に立ち向かうが、逆にコテンパンにのされてしまう。力を授けてくれるように、水垢離を取って願をかけたところ、怪老人が現れ不思議な威力を持つ杖を授かる。五助は仲間と共に、野武士や横暴な領主たちを襲ってこらしめ、貧しい民百姓に施しを与えるが…… 分類としてはミュージカル・コメディ。戦後再結成された“あきれたぼういず”(坊屋三郎、山茶花究、益田喜頓)を見たのが唯一の収穫。但し、彼ら本来の面白さは出ていなかったみたいですけどね。 塩カラ声のエノケンと、鈴を転がすような歌声(それも演歌)の榎本美佐江とのデュエットは完全なミス・マッチでした。 |
『エノケンの法界坊』(1938年・東宝/監督:齋藤寅次郎)
永楽屋の女将は大の骨董好きで、娘のおくみ(宏川光子)に惚れているスケベーオヤジの源右衛門(中村是好)からお宝の“鯉魚の掛け軸”を手に入れるため、娘を源右衛門に嫁がせようとするが、おくみは手代の要助(小笠原章二郎)と相思相愛の仲だった。そこへ、鐘楼寄進を名目に、金を集めては懐に入れていた破戒坊主の法界坊(榎本健一)が永楽屋の店先に現れて…… ♪〜ナムアミダーブツ、ナムアミダー〜のエノケンの歌で始まる傑作喜劇。 |
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この唄は、永楽屋の店先で、ほんの少ししか歌われていませんが、フィルムが紛失していて、向島・白鬚境内でエノケンが池の放り込まれる冒頭シーンと、永楽屋から放り出されたエノケンが彼にだまされた連中に見つかるシーンで歌われているそうです。日本映画専門チャンネルで放送したものを観たのですが、ゲストの天野祐吉さんが、この唄は6分ぐらい歌われていたような記憶があると語っていましたが、氏の記憶が正しいんですね。 おくみと要助が歌っていたと思ったら、次のシーンでは、いきなりエノケンの家におくみがいるという、ストーリーがつながらないブチ切れフィルムでしたが、歌のセンスがバツグンのエノケンを観ることができただけ是としましょう。 ところで、おくみと要助が歌っていた曲は、『モダンタイムズ』でチャップリンが歌っていた「ティティーナ」に日本語歌詞をつけたものでした。当時の著作権はどうなっていたんだろう? |
『エノケン・笠置のお染久松』(1949年・新東宝/監督:渡辺邦男)
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油屋の小僧・久松(榎本健一)は、番頭連中(山茶花究、益田喜頓、坊屋三郎)にいじめられているが、いつもかばってくれるのが油屋の娘・お染(笠置シズ子)だった。それが面白くない番頭連中は、三河屋の若旦那がお染に惚れているのを知って、お染と若旦那をひっつけようと画策するが…… “お染久松”の恋物語をミュージカル・コメディにしたもの。戦後のエノケン映画に、ろくなモノはないのですが、これは傑作です。 冒頭の祭りの駆けくらべからエノケンの動きは快調。エノケンと笠置が、唄と踊りで楽しく歩いていくシーンは二人の持ち味が出ていて、心ズキズキ、ワクワクさせてくれますよ。成功の大半はエノケンよりも笠置シズ子が占めていま〜す。 とにかく、この二人のリズム感が凄い!音楽は服部良一。 |