お子さま時代劇


『伊賀の影丸』(1963年東映/監督:小野登)

織田信長が明智光秀に殺されたという知らせを受けた徳川家康は、堺から伊賀越えで浜松への脱出を図る。家康に味方する伊賀の百地三太夫は、阿魔野邪鬼(山城新伍)に率いられた明智の忍者・甲賀七人衆に襲われ、殺されてしまう。息子の影丸(松方弘樹)が家康を守って甲賀七人衆と戦う。
 原作は「少年サンデー」に連載されていた横山光輝の人気マンガ。中学時代の私の愛読書です。

マンガの『伊賀の影丸』は、忍者対忍者の集団戦(勝ち抜き戦)が魅力だったのに、単純な内容で完全にジャリ向け映画になっています。それと不死身の阿魔野邪鬼が不死身じゃないんですよ。

大人が見ても面白いものじゃないと、子どもだって喜ばないよォ。怒りの大放屁、チャブ台返し!

 

『風雲急なり大阪城、真田十勇士総進軍』(1957年新東宝/監督:中川信夫)

木村長門守の要請で大阪入城を決めた真田幸村は、十勇士を各地に派遣して動静を探らせる。猿飛佐助と三好晴海は、太閤秀吉が徳川家康に託した遺言状を取り戻すべく活動するが、遺言状は既に家康の手で改竄されていた。佐助は家康の首を狙って城中へ忍び込むが……

当時は大人も楽しんだのでしょうが、現在の感覚からすると忍術ドロンのお子さま映画。

佐助は、白塗りの付け睫ヒラヒラの典型的二枚目メーキャップだし、晴海入道は講談そのものの豪傑ステロタイプ。家康に内通する豊臣方の重臣を演った丹波哲郎だけがマトモで、却って印象に残りましたよ。

それにしても、この題名は長いなァ。社長の大蔵貢は、『風雲急なり大阪城、にっくき徳川家康、真田十勇士総進軍』という題名にしたかったそうですが、そうなっていれば題名だけが映画史に残っていたかも……

 

忍術水滸伝・稲妻小天狗』(1958年・東映/監督:松村昌治)

毎夜、稲妻道人(三条雅也)の悪夢にうなされる足利将軍・義種(千秋実)は、どんな妖術も破るという百蟹の絵巻を献上するように安芸の国の衛守左衛門(大河内伝次郎)に使いを出す。百蟹の絵巻は、隣国の白井縫之介(進藤英太郎)と将軍側近の細川高国(薄田研二)の悪計により将軍家に滅ぼされた三好元長から預かったものだった。左衛門の息子・右馬之介(東千代之介)は、三好家再興を条件に献上するつもりだったが、稲妻道人が現れ……

九字を切ったら、ドロンと消えたり、稲妻が放出されたりと、まさに忍術映画。これって、お子様向け映画だよねェ。

懐かしさと、無邪気な気分で、私としては大いに愉しめました。老化が進むと、どんどん子供に近づいていくというけど、そうなっているのかなァ。

 

岩見重太郎・決戦天の橋立』(1954年・東宝/監督:渡辺邦男)

猿神様の生贄と称して娘をかどわかしていた山賊を武者修行中の岩見重太郎(嵐寛寿郎)が退治する。その頃、重太郎の父が広瀬軍蔵(阿部九州男)に暗殺されたことを重太郎に知らせるために弟・重蔵(中川晴彦)と妹・お継(扇千景)が旅をしていたが、軍蔵一味に見つかり重蔵は返り討ちにあう。お継は通りあわせた塙団右衛門(月形龍之介)に助けられる。旅を行く女芸人の一座が、山賊たちに捕まるが居合わせた後藤又兵衛(大河内伝次郎)が助ける。そこへ、団右衛門と重太郎も来合せ、重太郎は父と弟が殺されたことを知る。重太郎とお継が軍蔵の後を追うが、軍蔵は丹後宮津藩に仕官していた。藩は軍蔵との立会いを許すが、軍蔵に500人の助太刀をつける。それを知った団右衛門と又兵衛は重太郎に助太刀し……

内容的には講談ネタのお子様時代劇なのですが、大人も楽しめるようになっています。場面転換ごとに宝塚歌劇団による女旅芸人の歌が流れるのは、娯楽映画としてのサービスのつもりなんでしょう。今日的視点で見ると、「なんじゃ、こりゃあ」ですけどね。

鉄棒をブンブン振りまわす月形龍之介の立回りはウーンですが、アラカンのチャンバラは悪くないですよ。能天気なお気楽映画で〜す。

 

『あんみつ姫』(1954年・東宝/監督:仲木繁夫)

前編が“甘辛城の巻”で、後編が“妖術競べの巻”

甘辛城のあんみつ姫(雪村いずみ)は、皆に愛されているお転婆娘。発明好きのお父さん・あわの団子の守(藤原釜足)が発明した何でも4倍にする4倍薬を隣国の黒雲城主が狙っています。黒雲城の城主は、自分の兄を殺して城を奪った悪い奴で、前城主の遺児(弓太郎・すみれ姫)の命も狙っています。あんみつ姫は武者修業から帰ってきた弓太郎(久保明)と仲良くなりますが、黒雲城主に雇われた妖術使い・不知火甚内(益田喜頓)はすみれ姫(松島トモコ)を捕まえて猿に変えてしまいます。あんみつ姫も甚内に捕まり……

音楽は浅井拳曄となっていますが、劇中で使われている歌は全て吉田正が担当しているのではないでしょうか。全体にシットリしていて、歌謡曲風なんですよ。英語の授業で、カステーラ先生(丹下キヨコ)とあんみつ姫が歌う「ABCの歌」だけがポップス調でしたが。

雪村いずみの歌唱力はバツグンですが、可愛くないんだよなァ。

でも、原作者の倉金章介さんの特別出演と、新人時代の天津敏のマヌケなお髭姿を見ることができて満足、満足です。

 

 

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