スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ

(SUKIYAKI WESTERN)


(スタッフ)

監督:三池崇史、脚本:三池崇史&NAKA雅MURA、撮影:栗田豊道、音楽:遠藤浩二

 

(キャスト)

伊藤英明(ガンマン)、佐藤浩市(キヨモリ)、伊勢谷友介(ヨシツネ)、桃井かおり(ルリ子)、香川照之(保安官)、石橋貴明(ベンケイ)、安藤政信(ヨイチ)、木村佳乃(シズカ)、堺雅人(シゲモリ)、小栗旬(アキラ)、クウェンティン・タランティーノ(ビリンゴ)、松重豊(トシオ)、塩見三省(ネイティブ老人)、石橋蓮司(村長)、香取慎吾(射たれるチンピラガンマン?)

 

(2007年9月26日 神保町シアター)

 

(感 想)

壇ノ浦の戦いから数百年後、平家の落人村に秘宝が隠されているという噂を聞いて、平家の末裔ギャングと源氏の末裔ギャングがやって来る。二つの組織が対立しているところへ謎のガンマンが現れ……といったストーリーは、映画を愉しむにはあまり重要ではありません。

皆で西部劇ゴッコをして愉しむ映画ですからね。それもマカロニ・ウエスタンね。ガンマンが村にやって来ると鳥居に首吊り死体がブラ下がっている構図は、『荒野の用心棒』の冒頭と同じです。棺桶の中から機関銃が出てきたり、馬のサドルバッグを開くと銃器が並んでいたりするのは、誰でもわかるネタね。

ちょっとわかりづらいのが、保安官の背中に突き刺さる十字架かな。少年がショックで言葉を喋れなくなるのは、未公開のマカロニ『GOD‘S GUN』にあったことや、老人が吹いていたのが『西部のリトル・リタ』でニニ・ロッソが吹いていたカンタービレだということがわかったのは、ディープなファンだけでしょうね。

それから、意外と気づかれていないのが、多くの無国籍アクションを世に出した日活へのオマージュにもなっていることです。ルリ子にアキラにトシオ(杉山俊夫を思い浮かべたのはオイラだけかなァ)だなんてね。「アキラの名はアニメオタクだったから」というタランティーノのセリフがありましたが、海外向けには小林旭じゃわかりませんからねェ。

「サヨナラだけが人生だ」は、日活で花開いた川島雄三の好きな言葉だったし、血まみれ弁天の立ち小便も、必ず便所ないし小便するシーンを作品の中に入れていた“日本軽佻浮薄派”と名乗っていた川島監督へのオマージュでしょう。

ところで、海外向けに全て英語のセリフというのが話題になっていましたが、説明的セリフが多くて外人にわかりますかね。源平の抗争なんて外人の知らない世界でしょう。わかる奴だけがわかればいいという感じで、セリフはできるだけ簡単にして外人が喜ぶ日本テイスト(オープニングの赤富士のような)を背景にドンパチだけを徹底したら良かったと思いますよ。

私は日本語版(日本語吹替えは本人たちがやっていますが、タランティーノの声は三池監督です。この吹替えバージョンは、DVD発売時の特典にするんでしょうねェ)で観たのですが、日本語のセリフを聞いていても途中でダルくなってきましたからね。

タランティーノの出演も海外を意識したものでしょうが、日本人の中にタランティーノのだけが異質キャストになり、浮いています。スキヤキの中にピーマンが入っている感じなんですよ。主題歌まで北島三郎が歌っているのだから、日本人で統一して欲しかったなァ。私としては日活へのオマージュとして、タランティーノの役は、やっぱり宍戸錠で〜す。佐藤浩市の股ぐらホルスターは、“ハレンチ学園”で宍戸錠が演じたマカロニ教師の格好をマネたものですよ。

てなわけで、私としては結構面白がって観たので〜す。

 

 

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