3時10分、決断のとき

(3:10 To YUMA)


(スタッフ)

監督:ジェームズ・マンゴールド

脚本:ハルステッド・ウェルズ、マイケル・ブラント、テレク・ハース

原作:エルモア・レナード

製作:キャシー・コンラッド

撮影:フェルドン・パパマイケル、A.S.C

美術:アンドリュー・メンジース

編集:マイケル・マカスカー、A.C.E

衣装:アリアンヌ・フィリップス

音楽:マルコ・ベルトラミ

キャスティング:リサ・ビーチ、C.S.A

 

(キャスト)

ベン・ウェイド(ラッセル・クロウ)

ダン・エヴァンス(クリスチャン・ベイル)

バイロン・マッケルロイ(ピーター・フォンダ)

アリス・エヴァンス(グレッチェン・モル)

チャーリー・プリンス(ベン・フォスター)

グレイソン・バターフィールド(ダラス・ロバーツ)

ドクター・ポッター(アラン・テュディック)

エマ・ネルソン(ヴィネッサ・ショウ)

ウィリアム・エヴァンス(ローガン・ラーマン)

 

2009年8月13日 新宿ピカデリー

 

本国では評判のよかった映画なのですが、日本では西部劇ということで敬遠され、公開が遅れた作品です。公開されても、上映館は少ないし、上映するホールも最小で、西部劇ということで不当な扱いされることに不満なんですが、営業サイドから見ればリスクは負えないのでしょう。昨年公開された『ジェシー・ジェームズの暗殺』なんか、ブラッド・ピット主演にも拘らず、近くのシネコンでは館内ガラガラで、1週間で打ち切られましたからね。今や一般受けしない西部劇ですが、この作品だけは偏見をもたずに、“男の生きざま”を描いた人間ドラマとして観てもらいたいです。

主人公は、悪名高き強盗団の首領ベンと家族で小さな牧場を営む男ダン。ベンが捕まり、ダンがベンを護送して3時10分のユマ行きの列車に乗せるまでがスリルとサスペンスに溢れ、二人の男の心の葛藤が観る者の心を揺さぶりますよ。

この作品は、1957年の『決断の3時10分』(監督:デルマー・デービス、脚本:ハルステッド・ウェルズ)のリメイクで、前作が93分だったのに対し、本作は122分と30分ほど長くなっています。ハルステッド・ウェルズの基本シナリオにマイケル・ブラントとテレク・ハースが前作の“夫と妻の絆”に変えて“父と息子の絆”を付加しています。前作にない冒頭の馬小屋を焼かれるシーンはそのためのものですね。火事騒ぎで逃げた牛を探しに行った荒野でダン父子は、ベン一味が駅馬車を襲撃するのを目撃します。駅馬車といっても、鉄道会社の資金を積んでおり、鉄板で覆われ、ガトリング銃を装備した輸送馬車で、この襲撃シーンは、この映画の中では最も迫力あるシーンとなっていますよ。

ダンは襲われた駅馬車の唯一の生き残りであるピンカートン探偵社の賞金稼ぎバイロンを助け、町に向かいます。バイロンの治療をするポッター医師が獣医だったというのは、笑いが漏れました。バイロンとポッターは前作には登場しないキャラクターで、ポッターはシリアスな展開の中で、心の和む存在となっています。

一方、町に来たベンは酒場の女エマと時を過していて、保安官にあっけなく捕まってしまいます。鉄道会社のバターフィールドはベンを裁判にかけるため、ユマへ連行することに決めます。途中で、ベンの配下が襲撃してくることが予想され、護送役を200ドルで募り、借金の返済に悩んでいたダンは護送団に加わります。ダンの家に集合した護送団は、ベンの配下を撒くために、駅馬車を囮にして、ダンたちはアパッチ族のすむ土地を通ってユマ行きの鉄道が通るコンテンションの町に向かいます。このコンテンションの町に着くまでの行程が前作と大きく異なる点でして、脚本のマイケル・ブラントとテレク・ハースの腕の見せ所になっていますね。

わずかな隙をついて護送団のメンバーを一人ずつ殺していくベン。ダンの危機を救ったのが、内緒でダンの後を追ってきた息子のウィリアムで、彼も護送団に加わります。お金のためだけに参加したダンが父親としての誇りに目覚める重要なシークエンンスとなっています。アパッチの襲撃、鉄道工事現場の民警団との抗争があり、コンテンションの町にたどりつくのは、ベンと彼を護送するダンとウィリアム父子、バターフィールドだけになっています。

一方、チャーリーをリーダーとするベンの配下は、駅馬車が囮だったと気づき、コンテンションの町に急行します。ベンを熱狂的に心酔するチャーリー(私は、『ワーロック』におけるアンソニー・クインのようなホモ関係と思っています)は、殺しの場面を一手に引き受け、ある意味では主役の二人以上に目立つ存在です。町に着いたチャーリーは、ダンに賞金をかけて町の住民を味方につけます。ベン護送応援にバターフィールドから頼まれた保安官もチャーリーたちに恐れをなして投降して殺され、ダンはたった一人でベンを連れて駅に向かいます。

最後の銃撃戦は迫力あるのですが、やりすぎの感じがしますね。町の住民が無法者たちに恐れをなして何もしないというのなら分かるのですが、お金のために手を貸すというのは、何でもありのマカロニならともかく、本場西部劇で見せられると不快です。7人の無法者の銃撃にさらされるだけでも十分面白くなったと思いますよ。細かなところでは、欠点はありますが、前作では消化不十分だった二人の男の心情の変化と友情が明確になっており、全体としては満足していま〜す。

 

 

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