シャンハイ・ヌーン

(SHANGHAI NOON)


監 督:トム・ダイ

脚 本:アルフレッド・ガフ、マイルズ・ミラー

撮 影:ダン・ミンゲル

音 楽:ランディ・エデルマン

配 役:チョン・ウェン …… ジャッキー・チェン

     ロイ・オバノン…… オーウエン・ウィルソン

     ペペ姫     …… ルーシー・リュー

     ロー・ファン  …… ロジャー・ユーアン

     インディアン妻…… ブランドン・メリル

     連邦保安官  …… サンダー・バークレイ

     ウォラス    …… ウォルトン・ゴギンズ

     アンドリュース…… ジェイソン・コネリー

 

(2000年8月19日 有楽町東宝)

 

(解 説)

 

 コーラ片手にポップコーンを頬張りながら、カンフー映画として観てる分には楽しいのですが、西部劇として観た場合、内容的にはどこかで見たような西部劇のシーンを集めただけで、新しいところがないのが残念でした。

 それは、パクリとかパロディといったものでなく、西部劇ゴッコ(面白ければ、内容に関係なく、なんでも取り入れる)に過ぎないんですね。

 だから、物語の展開にアレレというところがあります。

 

 1881年、中国・紫禁城から王女ペペ姫(ルーシー・リューは、次回作『チャーリーズ・エンジェル』のメンバーの一人として出演するらしいが、私の好みではない。キツネ顔は本能的に好きになれないんですね。私の好みは、『天地風雲』のロザムンド・クァン)が、意にそわぬ婚約を嫌って、英語教師のアンドリュース(ジェイソン・コネリーは、ショーン・コネリーの息子だが演技は? 親が偉大だと息子はツライ)の甘言に乗ってアメリカへ逃亡します。

 しかし、これは、アメリカにいる中国人の悪党ロー・ファンが仕組んだ誘拐だったのです。アメリカ西部にいる誘拐犯に身代金・金貨10万枚を届ける使者の一行に、通訳を務める叔父の“かばん持ち”としてチョン・ウェン(チョン・ウェンは、ジョン・ウェインのもじりであることは明白、私は思わずニンマリ)が加わります。

 (当時の中国は、西太后支配下にあったのですが、その雰囲気は、この作品からは感じられません。むしろ『ラスト・エンペラー』に近いなあ。まあ、どうでもいいことだけど)

 

 7週間後、チョンら一行はネバダ砂漠を列車で横断中、ロイ・オバノン(オーウエン・ウィルソンは、どことなくロバート・レッドフォードに似てますね。それで『明日に向かって撃て!』が随所に出てくるのかな)率いる、にわか仕立ての強盗団に襲われます。

 新入りの強盗ウォラスに叔父を射ち殺されたチョンは彼らに戦いを挑みますが、列車をやむをえず切り離したため、使者の一行とはぐれてしまうのです。一方、ロイは金庫の扉を破るためにダイナマイトを爆発させますが、金庫まで列車の外にふっとびます。(お札がヒラヒラ空中を舞うのは、『明日に向かって撃て!』にありましたよね)

 ウォラスの裏切りで、仲間からも見放され、砂漠に首まで埋められていた(ワァオー! マカロニウエスタンだ)ロイから、目的地のカーソンシティの方角を聞き出したチョンは、途中でインディアンのクロー族から追われているスー族の少年を救います。

(森の中での、インディアンとの格闘はサイレント喜劇を想わせる面白さで、ジャッキーいまだ衰えずといった感じで、拍手したくなりました)

 スー族の英雄に祭り上げられたチョンは、インディアンの娘を妻(ブランドン・メリルはどこから見てもインディアンにみえなかった。『天地風雲』のインディアン娘より、よかったけど)にし、馬(この馬が、名優! 実に巧い演技をするんですよ)を贈られて、再び旅立つのです。

 ある町の酒場で偶然ロイと再会(埋められていたロイがどうやって助かったのか不明)しますが、予期せぬことから大乱闘となり、二人は留置場に放り込まれます。そこで、二人は互いを理解しあい友情が生まれるのです。(カンフーの達人とガンマンのコンビは、『天地風雲』に先例があるが、このコンビの方がキャラクターとしての魅力がありますね。『天地風雲』は、ジェット・リーがリッパすぎた)

 

 インディアン妻のおかげで二人は脱獄に成功し、カーソンシティにたどりつきます。身代金の横取りを考えている連邦保安官、誘拐犯ロー・ファンとの闘いは、もうマカロニゴッコの世界でした。

 チョンがロイを助けるために、保安官バッチを手裏剣にして連邦保安官に投げるのは、『星空の用心棒』でお馴染み。縛り首の縄をライフルで射って救出するのは、『続・夕陽のガンマン』で、棺桶に入って町から脱出するのは『荒野の用心棒』です。

 ラストの、ロー・ファン、使者、チョン、連邦保安官の四スクミ対決は『続・夕陽のガンマン』ですね。連邦保安官の名はネイサンとだけしか字幕表示されませんでしたが、エンドクレジットではヴァン・クリーフとなっており、ロー・ファンも劇中で連邦保安官をヴァン・クリーフと呼んでいました。これは、明かにリー・ヴァン・クリーフを想定しています。

 

 問題はこれからで、裏切り者の悪党ウォラスを倒すために、『明日に向かって撃て!』よろしく外へ飛び出したのはいいけど、あれじゃあ拍子抜け。

 チョンがペペ姫と結ばれるのも、どうもね……。インディアン妻がロイと仲良くなってくれたけど、ご都合主義ですね。

 ロイの本名がワイアット・アープだなんて、私はシラケましたよ。実在のガンマンの名前を出しても、ギャグになってないんですから。ロイの持ってる銃がバントラインとか、裏切った男の名前がクラントンとか、アープを感じさせるものがあって初めて笑いとなるんですよ。

「オレの本名はオバノンでなく、ロジャース」だと言ったら笑ったでしょうね。ついでに歌まで口ずさんだら大ウケだけど。

チョン・ウェンにロイ・ロジャース。だけど、このギャグが理解できる人って、殆どいないだろうな。

 

 西部劇コメディとしては不満が残りましたが、46歳という年齢を感じさせないジャッキー・チェンのアクションには、ただただ脱帽。

 格闘技(カンフー)における技の切れでは、『天地風雲』のジェット・リーの方が優れていると私は思っていますが、アクションが芸になっている点では、ジャッキーの方が上ですね。

 シリーズ化の予定があるみたいで、公開されたら、やっぱり観に行くでしょうね。

 

 

トップへ    シネマ館へ    目次へ