雑学講座その3・精密検査への道のり’99

 事の始まりは99年1月、会社の総務部から一通の封筒を渡された時から始まりました。
「ん?あぁ、去年やった健康診断の通知か。」
 そう思いながら軽い気持ちで封筒を開ける俺。そこに刻まれた『要精密検査』の5文字!!

ズガァーーンッ!!

 …えぇ、そりゃショックでしたさ。今まで身体の頑丈さが唯一のウリだったこの俺。マックでバイトしてた時にM島さんに頭上から熱湯を浴びせられた時も、会社にてO津さんに毎日ローリングソバットの練習台にされても平気のヘイザな俺だっただけに、コレはショックでした。

「お、俺、ビョーキなんか!?」


 そう思いながら、俺はその診断結果に目を通します。なになに…?どうやら俺は一般人の平均値より、白血球の数が多いらしいですね。で、白血球が人より多い場合に発見できる病症は…

「白血病・各種感染症」

ノォーーーーッ!!

 聞きました、奥さん?白血病ですって??血が白い病気なんですよっ!?デビルマンでさえ血が青いんですよ?単なる出来損ないね!!
 まぁ、万が一白血病ではないにしても、「各種感染症」ですよっ!?この「各種」ってところに余計に恐怖を感じます。何しろ一種類とは限らないんですから!複数併発してる可能性も有り!最悪の場合には「白血病」とも併発してるかも!怖いよ!!
 そういうわけで、俺は腰が引けつつも病院に精密検査に行く事になりました。俺、目茶苦茶ビビってます。なにしろ、検査結果しだいでは

結果最悪 → 入院 → 手術 → 失敗! → 死亡


 という、5Hitコンビネーションを食らうかもしれないですから。でもその反面、ちょっとだけワクワクしてます。なにしろ俺は前述通り身体の頑丈さだけがウリ。それゆえ病院などには20年位行った事が無いのです。
(例外としては歯医者と、数年前に100Kgのデブに押し潰されてアバラにヒビが入って整骨医に行ったくらいです。)
 数年前に39度の熱を出した時も、病院には行かないで気合いで直しました。皆さん知ってます?39度位の熱になると、鼻息がまるでドライヤーの様に熱いんですよ?!
 久しぶりの病院!充満する消毒液のニオヒ!!俺の身体を弄るCTスキャンや心電図のハイテク機械!大事を取って検査入院する俺(入院未経験)!そんな俺に優しく微笑みかける看護婦さん達!芽生えるロマンス!

 …なんだかスンゴク楽しみになって来ましたね。ビバ看護婦精密検査!!そういう訳で当日、病院に向けて出発したんです。

1時間後…

 え〜、俺は今、道に迷ってます。それというのも、俺が道を聞いた農作業してるババァにウソ教えられたからです。あのババァはいつか殺します。えぇ、ジッチャンの名にかけて。そりゃ事前に病院の場所を調べておかない俺も悪いんでしょうが、正反対の道を教える事は無いでしょう。ウソつくと地獄に落ちますよ?
 そんな事で半泣き状態な俺の前に、公民館が見えました。天の助けです。さっそく俺は中にズカズカと入り、受付に座ってるお爺さんに聞きました。
「あ〜、それだったら、ココから右行って…(中略)…踏切渡ればすぐだよ。大体歩いて10分くらいの距離かなぁ?」
 センキューお爺様。サワヤカにお礼を言い、俺はその通りに道を進みます。

…40分かかりました。

 厚木はウソつきばかりだよっ!!つうか俺は病人ですよ!!何故に検査する為に1時間40分も歩かされますか?こうなりゃ公民館のジジィにも渡してあげます。引導を。

 そんな訳で苦労して、ようやく辿り着きましたT・A病院。この中で、白衣の天使が俺を待ってる訳ですね。さっそく中に入ってみましょう。

「ぬおっ!!」

 入り口を通ったところにある受け付けには、ジイさんバアさんがウジャウジャいます。待合室の座席も、全部ジイさんバアさんで埋まってます。俺はこれまでの人生で、これほどの高密度のご老人は見た事ありません。まさに『ご老体☆詰め合わせギフト』という感じです。
 とりあえず俺は受付に行き、番号札を貰いました。俺の番号は「37番」です。現在診察中の番号は「20番」。結構待たされそうですね。でも安心です。こんな事もあろうかと思って、ちゃ〜んとゲームボーイをポケットに忍ばせていたからです。さっそくドラクエモンスターズをプレイするも、滅多に仲間に出来ない『はぐれメタル』が運良く仲間になり、思わず公衆の面前で

「よっしゃぁぁぁ〜!!」

 と、デカイ声あげてガッツポーズを取ってしまう俺。
 …気まずいです。顔を赤らめつつも周りを見ると、全員が全員、俺から視線を逸らします。まさに「腫れ物待遇」です。せめて白い視線でも浴びせてくれれば、アイソ笑いでその場をしのげるんですが、それさえ出来ません。もう死にたいです。

 寒い空気に堪え忍んでいると、ようやく俺の番が近づいたので診察室の近くに逃げました。すると、5つある診察室の中から

「うわぅわぁぁぁぁ〜っ!ヤダよ〜っ!痛いよぉ〜っ!」
「助けてお母さ〜〜んっ!ウギャーーー!」

 というガキの悲鳴が、まるで輪唱の様に聞こえてきます。俺の隣に座ってたガキも、それを聞いてつられて泣き出してしまいました。まるで阿鼻叫喚のガキ地獄です。否応がなしに高まる不安。もう帰りたいよっ!!

「かざみさ〜ん、どうぞ〜!」
 …ついに呼ばれてしまいました。俺は両手で頬を張り、気合いを入れます。ここでナメられたら負けです。心の中で「よっしゃ!」と叫び、診察室に入りました。
 中にいたのは医者らしい40歳後半くらいのオジサマと、看護婦さんが1名。看護婦さんをじっくり観察しようとする俺を、オジサマはニコニコと微笑みながら見守っています。
(ん?もしかして俺に惚れましたか?)
 と思ってると、オジサマは笑いながら言いました。
「かざみくんは…白血球が多いみたいだねぇ…。大丈夫!こんなもん、ちょっと体調が悪い時にはこれ位すぐイっちゃうから(笑い)!」
 …どうやら、俺の心配事は「こんなもん」程度だったらしいです。なんかハラが立ってきますね。
「まぁ、とりあえずもう一回検査しとこーか(笑い)。」
 そういって俺を診察室から追い出すオッサン。どうやら別室に行け、という事らしいです。別室に入ると、看護婦さんが一人。愛の個人診察どうやら、机の上に腕を出せ、という事らしいです。袖をまくり、大人しく言う事を聞く俺。すると看護婦さんは、

「では、腕に思いっきり力を込めてください。」

 というじゃありませんか。さすがです。この看護婦さんは、『男の価値は上腕二頭筋で決まる』って事を知ってるみたいですね。どうやら俺は品定めされてるようです。ならば見せてやりましょう!!マグロ漁船で鍛えたこの腕を!!

ヌオリャァアァアァッ!!

「あ…あの…。」
 ん?何ですかお嬢さん?
「う…腕は伸ばしたままで…お願いします…。」
 え?そうなんですか?まいったな…。腕を伸ばしたままだとチカラコブ出しづらいのに…。それに、何故か俺への視線が更に冷たくなった気がするのは気のせいでしょうか?まあいいでしょう。ウリャ!

「あの…も…もうちょっと力緩めてください。」

 何ですか?さっきは「思いっきり」って言ってたのに…。結構ワガママなんですね、チミは。

 その時!看護婦さんは俺の腕に一本のゴムチューブを巻きつけ、注射針を突き刺したぢゃありませんか!?空の注射器に、次々と注ぎ込まれる俺の血液!痛いよ!!それならそうと言ってよ!!でも、『俺の血は赤い』という事を再確認出来て、なんだか得した気分。
 さて、俺はこうしてマンマと注射器一本分の血を取られてしまいました。血を取られた後は、やっぱりヤクルトですよね?俺は、いつ看護婦さんがヤクルトを持ってきてくれるのかを大人しく待っています。…オカシイですね?まだ飲ませてくれないんですか?

「あの…もう終りですから…。」

 ヤクルトはオアヅケですかっ!…何?『終り』ですって!?血ィ取って『終り』だと?CTスキャンは?心電図は?検査入院は?俺のロマンスはっ!?

「来週になったら結果が出ますんで、その時また来て下さい。」

 …ハイ。

 こうして俺は、北風を背負いながら病院を後にする事になってしまいました。ちょっと寂しいです。
 気づいたら、俺の靴紐が綺麗に真っ二つに切れてました。道端ではカラスが死んでます。…ま、まぁこれは見なかった事にしましょう!!きっと検査の結果はウマくいってますからっっ!


 一週間後、再び俺はこの病院を訪れました。もちろん結果を聞く為です。

 …結果は「全然問題無し」との事です!『ちっ…』ん?誰ですか今舌打ちしたのはっ!?君かっ!?お前かっ!?それともアンタかぁっ!?

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Writen By Dai.Kazami