■サライ10/16号からの抜粋。

 

澄んだ海底に黒髪のようになびく昆布が

だし昆布の一級品と誉れ高い利尻昆布の天然ものは、細身だが肉厚で重く、陽光を吸って黒髪のような光沢がある。こくのある旨味と、濁りのない清澄なだしは、昆布だしにうるさい京都で喜ばれている。

たいやひらめなど、白身魚のお澄まし、白肌のさえる最高級の千枚漬けの味の秘訣は利尻昆布だそうだ。

リシリコンブは最北端の宗谷岬をはさんで日本海側は留萌まで、オホーツク沿岸は知床半島西岸までの寒冷な海で採れる。なかでも暖流と寒流が出会うところに育つ、利尻島、礼文島産の天然物は上質とされている。

利尻島仙法志の昆布漁は、7月15日から9月まで続く。ところが漁期は丸2カ月あっても漁に出られる日はそう何日もないという。海が凪いでいること、日照があることが出漁の条件だ。

磯に立つと、澄んだ海底に黒髪のようになびく昆布が見える。

2年ものの最上の昆布が採れるのは7月中旬から盆過ぎまで。8月中は走りと呼ばれるが、寒さとともに枯れて、9月10日を過ぎると後採りといって、昆布の値も下がる。半袖を着るのも年にせいぜい5日。空を眺めて気をもんでいるうちに、利尻の短い夏とともに昆布の旬もそそくさと過ぎていってしまう。

「陽がささねばだめなんだ」

朝5時。久々に仙法志の浜に旗があがった。まだ明けやらぬ小高い丘の上に翻る赤い小旗が目にしみる。朝凪の海に昆布採りの小舟が200は出ているだろうか雲の切れ間から時折光の筋がこぼれる。

足で櫂を操り、船のへりに寝そべって、箱メガネで海底を覗く。長いねじり棒の先を根元に差し込み、2メートルもある昆布を5、6本一気にねじって引き上げるのだ。

こぼれそうに昆布を積んだ小船が浜に戻ると、浜にうずくまっていた数十人の干し手たちが、一斉に動き出す。盆や夏休みで帰省している子や孫たちまで、一家総出である。背丈より長い帯のような昆布が、頭(根)を上に敷き詰められていく。

「陽がささねばだめなんだ」半日でいいから太陽の光がほしい。晴天なら4、5時間で黒くつやよく乾く。陽がささないと白粉を吹いて確実に等級が下がり、雨に当たれば二束三文の等級外である。

採ったその日に乾くと最上の昆布になる。重さ、長さ、切り口の幅、光沢を見て等級ごとに切りそろえ、一晩重石をしてしわをのばす。・・・・・・・・

 
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