特定行政庁・建築主事って何だ?

 

○特定行政庁とは?
建物を建てようとするときには、ごく小規模のものを除いて『確認申請』をおこなって建築主事の確認を受けなければならないことはご存じでしょうか?
このときに確認申請書を提出するのが【
特定行政庁】と呼ばれる行政機関なのです。
特定行政庁(建築基準法第2条第三六号)

 建築主事を置く市町村の区域については当該市町村の長をいい、
 その他の市町村の区域については都道府県知事をいう。
 (以下略)
条文で読むと難しいですが、要は建築主事がいる行政機関のことなのです。お住まいの市町村の建築の課に建築主事がいればその市町村は特定行政庁であり、建築主事がいなければ都道府県の関係事務所が特定行政庁ということになります。ですから、市町村がそのまま特定行政庁であるとは限らないわけです。


○建築主事とは?

では、頻繁に出てくる『建築主事』とはどんな人なのでしょうか?
簡単に言ってしまえば、『確認に関する事務を司る人』のことです。特定行政庁には建築主事以外にも、区域ごとに審査する担当者がおりますが、建築主事は担当者の審査した内容について最終責任を負う役目を持っています。

もちろん申請された全物件をチェックしなければならないわけですが、建築主事も人間ですから一つ一つを細かく見ているわけには行きません。そこで建築主事の業務を各区域担当に代行させ、建築主事自身はそれらの最終チェックをおこなっているのがほとんどのようです。

そのため、私たち設計者や申請手続きにおける代理者は直接建築主事と話すことはほとんどなく、各区域担当とのやりとりとなっています。


○建築主事はどんな市町村にいるのか?
建築主事を置く基準は次の条文によります。
建築主事(建築基準法第4条)




政令で指定する人口25万以上の市は、その長の指揮監督の下に、(中略)確認に関する事務をつかさどらせるために、建築主事を置かなければならない。




市町村(前項の市を除く)は、その長の指揮監督の下に、(中略)確認に関する事務をつかさどらせるために、建築主事を置くことができる。

(以下略)

政令(人口25万以上の市を指定する政令)で指定された市については、条文の通り建築主事を置かなければならない(義務)ため間違いなく特定行政庁ですが、それ以外の市町村については任意のため、実際に役所の建築課に問い合わせるのがよいでしょう。

お住まいの市町村が特定行政庁であってもなくても、申請する窓口が違うだけで建築実務上何も変わることはありませんのでご心配なく。ただし行政指導の内容は各特定行政庁ごとの“内規”によって変わってきますが.....
  
ちなみに、現在では確認申請という公の事務手続きも民間にも開放されているため、開放前に比べて特定行政庁に申請するケースは減っているようです。民間の指定確認検査機関が行った確認も“公の事務”であり、その効力(=確認の責任)も特定行政庁が行った確認と変わりません。

なお建築の許可を要する場合(例:法43条ただし書きを適用して接道要件を満たすために許可を得る場合)は、特定行政庁でなければ許可を出せないため、民間に申請するのであればこの許可を取得してから、となります。  




よく「確認が下りる」とか単に「建築許認可」などというような言われ方をしますが、建築確認申請をして確認済証を取得することは「建築の許可を得た」ことではありません。あくまでも工事前に建築主事(=特定行政庁)や指定民間確認検査機関が設計内容を「確認」するだけのものです。