住宅の換気について

 

○住宅の「健康」を考える

近年の住宅は部材精度が高く気密性もよくなり、冷暖房効率の高い快適な生活が送れるようになりました。
しかしその反面、気密性が高い故の問題も発生しているのです。
『気密性が高い』⇒『空気が流れない』⇒『空気が汚れる』といった問題がそれです。

もちろん、定期的に窓を開けて換気をすればよいことなのですが、冬の寒い日や真夏の暑い日に窓を1時間も2時間も開けっ放しにできるのはごくまれで、あまり現実的ではありません。

しかし私たち人間がそうであるように、住宅も適度な“呼吸”をしていないと各部の痛み方も差が出てきます。そこでクローズアップされるのが、住宅内に風の通り道を設けて窓を閉めながらに換気を促す方法です。

 

1.外気との換気
今日のアルミサッシは性能が良く、サッシ単体では気密性が非常に高いものとなっているため、いわゆる“スキマ風”とは疎遠になっていますが、実は昔の住宅はこの“スキマ風”があったことで木が腐りにくかったり中毒を起こしにくかったりしたものなのです。
そこで、サッシの上框部分や窓の上に開閉式のガラリを設けて換気を促しましょう。
2.内部の換気
「1.」の窓のガラリを有効にするには、空気が流れないと効果はあまり期待できません。そこで、各部屋の入口であるドアの下枠をなくし、空気が流れるようにしてあげるのです。また、ドアの下枠をなくすことで床段差もなくなり、つまづき防止にもなります。
3.床下(1階)の換気
床下は土に面しているため湿気が溜まりやすいため、外周の立ち上がり基礎に一定量以上の換気口を 設けるよう建築基準法で規定されています(防湿に有効な措置を施した場合はこの限りではありません)。
床下内の立ち上がり基礎にも換気のための穴をできるだけ大きく設けて換気を促すようにしましょう。

昨今の木造住宅では、基礎立ち上がり部分(外周部)に換気口を設けず、代わりに基礎天端と土台の間に特殊なパッキンを挟み込むことでより有効な換気を促進する工法(キソパッキン工法)が多くなってきています。この工法では基礎外周部に換気用の切り欠きをする必要がないため、部分的な基礎の耐力低下を招きません。
4.小屋裏の換気
小屋裏(天井裏)が密閉されていると日差しを浴びて非常に暑くなるため、2階の部屋の冷房効率は1階に比べて明らかに悪くなります。結果として電気も多く消費します。
そこで、屋根の軒裏部分に換気口の機能を持たせるようにするのです。軒裏材に有孔タイプのボードを張ったり直接換気口部材を取り付けたりし、屋根の棟頂部も有孔式の役物を用いて換気を促すようにします(防火指定のない地域の場合)。防火・準防火地域内においては別の方法としなければなりませんが........
5.外壁の換気
最近の住宅には外壁にサイディングを張るケースも増えてきました。サイディングメーカーによって様々ですが、“通気工法”でサイディングが張れる商品も増えています。工法的に可能であればぜひ検討してみて下さい。
  
○住まう人の「健康」を考える

平成15年7月1日以降、改正建築基準法の施行により建築物のシックハウス対策が義務づけられることとなりました。その中で換気に関しても大幅に強化され、居室を有する建築物は、居室部分に関して24時間常時換気を行う機械換気設備の設置が義務づけられました。

この背景には、急速に進んだ建築物の高気密化が影響しています。高気密化された建物が増えると同時に建材などに含まれている化学物質が逃げ場を失い屋内に閉じこめられることで、それまではあまり目立たなかった、いわゆる「シックハウス症候群」が表面化してきて大きな問題となりました。そこで建築基準法レベルでシックハウス対策を施す必要が発生したのです。

ここではそのシックハウス対策のうち、換気に関する項目を取り上げます。

1.24時間常時換気を行わなければならない居室とは?
24時間常時換気を行う場合における「居室」の定義は、建築基準法一般の居室定義と若干異なります。通常の居住室はもちろんですが、例えば採光計算上では居室とはならない(計画の仕方により居室扱いをされる場合もありますが)台所や厨房等に関しても、24時間常時換気の規制上では「居室」となります。
  

具体的には次の室が該当します。

・住宅 居間、食堂、台所、寝室、個室、和室、応接室、書斎 など
・事務所 事務室、会議室、守衛室 など
・病院 病室、診察室、手術室、薬剤室、受付待合室 など
・商店 売場、休憩室 など
・飲食店 客席、厨房 など
2.居室でなくても24時間常時換気をしなければならない室とは?
「1.」の室以外は24時間常時換気の対象室にはなっていませんが、その換気の経路に含まれる室については、居室と一体とみなされます。

上記の各室ごとに常時換気の給気と排気が完結している場合は、それ以外の室は対象外となりますが、例えば居間から給気された空気が廊下を伝って洗面所を経由し浴室の換気扇から排気される、という場合には、廊下、洗面所、浴室のいずれの室も24時間常時換気の対象室として、居室と一体であるとみなされます。
3.建具の工夫
「2.」のように居室だけでなく廊下など居室以外の部分も換気経路にすることは、建物全体で見た場合には、各室で換気が完結する方法よりもより健康な空気環境をもたらしてくれると思います。各室で完結する場合には各室は常に新鮮な空気が提供されてはいますが、それ以外の廊下等ではよどんだ空気が留まっていると思われるからです。

ただ居室以外の部分も換気経路にする場合には、室同士の出入り口である建具に注意をする必要があります。引き戸や折れ戸、ふすまの場合には十分な隙間が存在するため特に配慮する必要はありませんが、開き戸(ドア)の場合は隙間があるとはいえ他の建具よりも密閉性が高いため、換気ガラリを設けるかドアの下部1cmほど隙間を持たせたもの(アンダーカット)とする必要があります

このドアのアンダーカット、24時間常時換気にはとても有効なのですが、実生活においては少々問題があります。隙間が1cmも開いていれば音はそこそこ漏れますし、それになにより通気のための隙間なので空気が流れます。夏場はいいのですが問題は冬場です。暖房しても隙間のおかげで思ったより暖まらなかったり、逆に冷気が進入してきて寒い、という報告もあります。

そこで建築計画の段階から、できるだけ建具は引き戸などにするよう努めたり、どうしても開き戸にしたい場合にはその部屋だけで完結する換気計画として建具のアンダーカットを設けないようにするなどの工夫が必要になります。