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ろまんすv 沙月様 彼は重そうな紙袋を手に提げて家にやってきた。 「やあ、こんにちは、進藤くん」 「塔矢……? どうしたんだ、急に」 俺たちは些細なことで喧嘩中だったはずだ。 だが、そんなことを気にする風でもなく、塔矢は真面目な顔つきで話し始めた。 「今日は、布教に来たんだ」 布教!? こいつ、変な宗教でも始めたのか? 胡散臭い目で俺が見守る中、塔矢は紙袋の中から何かを取りだした。 DVDソフト? いや、違う。パソコンソフトだ。 「このゲームを薦めに来たんだ。是非やってみてほしい」 「……はい?」 パッケージに描かれているのは、ピンクの髪の女の子と長髪の男。 タイトルは「ファンタスティック・フォーチュン」というらしい。 女性向け恋愛シミュレーション……えーっ! 「シルフィスという子がとてもいいんだ」 「はぁ」 俺は塔矢と差し出されたソフトを見比べた。 冗談、ではなさそうだな。 「さあ、受け取ってくれ」 「ああ」 ついふらふらと、俺はそのソフトを受け取ってしまう。 恋愛ゲームだぞ!? 俺にこれをやれと……言うんだな! 俺が素直に置け取ったのを見て満足げに笑った塔矢。 「では、是非ともプレイして、この素晴らしいロマンスに浸ってくれたまえ」 「あ、ああ」 「では、失礼」 頭を下げ、塔矢は帰っていった。 何だったのだろう。 俺は残されたソフトをまじまじと見つめた。 真面目なやつだが、そういうやつが一つのことにのめり込むと恐ろしい。 俺は頭を振り、溜息を吐く。 塔矢、あのソフト、全部配って回るのか? |
| 沙月様のサイト『DESERT MOON』様の3周年&10万HIT記念企画で
リクエストして、書いていただいた作品です。 『シルフィス保護区』内でアップするのだから、ジャンルが違っても シルフィスが登場していなきゃ……と沙月様に言ったら、 無理を聞いてくださったのです。 次にリクエストする機会があれば、今回の逆を……つまり、 シルフィスが『ヒカルの碁』を読む話をリクエストします、 とメールに書きましたら、 『レオニス、碁にはまる』だって(笑)。 ぜひ、読んでみたいものです。 そのときはよろしくね。沙月さん☆ 2002年7月10日 春日小牧 |