実家が農家で、自家製そば粉・手打ちそば、という環境で育ったからかもしれんけど、おれ、関西人にしてはそばにはちょっと厳しいんかもしれん。讃岐の人間がうどんにはごっつ厳しいんとおんなじね。
そばに大切なのは、「挽きたて」「打ち立て」「ゆがきたて」の「3たて」。つまり、挽きたてのそば粉を使い、打ちたてのそばの、ゆがきたてを食べる、ゆうこと。
挽きたて、ゆってもその日のぶんだけ挽く、ゆうとこまでは要求せーへん。打ちたてゆっても、客の注文を受けてから打つところまでは要求せーへん。そやけど、客の注文を受けてからゆがく、これだけは譲られへん。
手打ちの生そばを客の注文を受けてからゆがいて、冷たい水で引き締め、客にさっと出す。これですわ。
そばゆうのはゆがいた後は風味が急速に落ちてくんです。そやから客は、そばを一気に食べなあかんのです。そば以外のものを注文しとっても、そばが来たら、そばを食べ切るまで他のもんは食べるべきやない。それがそば専門店でのマナーや、と思てます。
そばには流儀がいろいろあるけど、色で分けたら、蕎麦の殻まで挽き込むか、挽き込まないか、で分けられます。蕎麦の殻を挽きこまん流儀やと、色の白い上品な蕎麦に仕上がる。それに対して、蕎麦の実全体を挽いたら、色は黒ぉて香の強い蕎麦ができる。出雲蕎麦なんかがこの系統です。おれはどっちかゆったら、色が黒ぉて香りのあるのんが好き。あと、甘皮まで引き込んだら、色は白いけど蕎麦の香りや甘みは濃厚な蕎麦ができあがる。個人的はこのやり方が一番好きやな。
色の黒い蕎麦はそば粉の割合が多い、て思う人も多いみたい。けど、蕎麦の実全体を挽いたら色が黒ぉなるけど、つなぎをよーけ使とっても黒いもんで、黒蕎麦はつなぎの量をごまかすこともできるんですわ。要するに、蕎麦の色でそば粉の割合を見抜くことは素人には難しい、ゆうことみたいです。
そばの王道はざるそばやと思います。汁そばもおいしいけど、そば自体のうまさを味わうのはやっぱりざるそばですわ。
ざるそばゆったら、夏の涼味、ゆうイメージがあるみたいやけど、そばがとれるのは晩秋。そやからそばの一番美味しいシーズンは晩秋から冬なんですわ。外に雪が降っている中で、冷たい手打ちそばを食う。これが一番うまいんです。
(1998/12/13)
関西ナショナリストのおれでも、悔しいけどそばは東京の方がレベルが上やと認めますわ。これは文化の違いやからしゃーない。関西の蕎麦好きは苦労しまっせ。
大阪やと、下町の駅前の立ち食いうどんの店で、格安で手打ちうどんが食えたり、コブとカツオでとった上品なつゆをすすれたりする。トップレベルの店がある、ゆうだけやなしに、要するに、うどんの平均レベルが高い。
それとおんなじで、東京やと、手打ち蕎麦の店が山ほどある。とにかく蕎麦屋の平均レベルが高いわ。これでつゆがまともな味(ちゅうか、塩気が控えめ)やったら最高なんやけどなぁ。東京の蕎麦屋のつゆは塩辛すぎてたまらんのが多いわ。蕎麦の先をちょっとだけつゆにつける、ちゅうのが通や、ゆうことらしいけど、それは単につゆが塩辛すぎるだけちゃうのかな。おれは薄味のつゆに蕎麦をどっぷり浸けて食うんが好きやわ。
(1998/12/31)