イカン・パリ・パン ガン (赤エイの焙り焼き)

 フードコートの海鮮料理店に行ったら必ずある一品。赤エイの焙り焼き。シンガポール・マレーシアに行ったら一度は食べてみてほしい料理。
 赤エイを塩胡椒・ライムで味付けし、それにチリサンバルを塗って焙り焼き。チリサンバルていうのは、赤唐辛子、ニンニク、トマトペースト、干しエビ、ライム、砂糖、塩、胡椒なんかで作るマレーシアの基本的な辛くて酸っぱいソース。
 一番安い (小さい)のんで8$(560円ぐらい)もするフードコートの中では高級な料理。
  エイは日本でも魚屋で売ってることあるから試しに買って料理してみたことあるんやけど、水っぽぉてあんまりうまい魚やないなぁ、ていう印象やった。けど、 この料理はそういうエイのイメージを根本から覆してくれた。
 塩が甘みを引き出して、ライムの薫り高い酸味とトマトのしっとりした酸味が エイの身に染み込んで、エイが薫り高くて甘みのある味になってる。ライムやトマトを使ってるから、塩は控えめやのに甘みが出る。エイひれのねっとりした食感が甘みを引き立てる。食べる直前にライムを絞るから香りが立つ。さらにバナ ナの葉が決めて(らしい)。さわやかな酸味と穏やかな甘みが唐辛子で刺激され た舌の上で踊り出す。
 エイひれて日本では干物にして酒の肴でしか食べたことなかったけど、このイ カン・パリ・パンガンはエイのうまさを味わわせてくれるすごい料理やわ。日本 料理は素材の味を引き出す、いう発想やし、フランス料理はどんな素材でもソー スで味付けしてみせるちゅう発想(偏見)やけど、この料理は料理人が素材を殴 り倒してどんなもんや、て勝ち誇ってるような料理やわ。
 チリサンバルは作るのに手間がかかりそうやけど、作り置きのきく汎用のソースみたい。この料理の調 理自体はごく簡単。野性的で力強い。う〜ん、すごい。

参考:「アジア食文化紀行 シンガポール料理」(チャールズ・イー・タトル出版)
関西グルメガイド