「美味しんぼ」コーナー

 言わずと知れた雁屋哲原作・花咲アキラ画の食いモンコミック(小学館)。「美味しんぼ」ファンの方からの投稿をお待ちしています。

1998/12/13 「美味しんぼ」への不満
1998/12/13 水と塩と味の素
1999/01/14 鴨なんばと鴨南蛮

1998/12/13 「美味しんぼ」への不満

 おれ、「美味しんぼ」の大ファンで、「スピリッツ」で毎週読み、単行本も全巻揃えてる。「『美味しんぼ』の店」ゆう本を買って、「美味しんぼ」に登場した店に行ってみたりしてる。(高ない店やったらね)
 それぐらいの大ファンやのに、いきなり「不満」を書くてどぉゆうこっちゃ!
 実はおれ、文句垂れのキャラクターなんですわ。そやから、とりあえず不満を書いといたら、すっきりしてどんどん褒められる、ゆうことです(笑)
 「美味しんぼ」への最大の不満は、関西、特に大阪への差別意識がある、ゆうことやね。方言が抜けなくて悩んでいる東北出身の青年を温かく励ますのに、東京でも堂々と大阪弁を話す大阪人は、協調性のない人物として繰り返し描かれる。食文化についてプライドの高いフランス人を称賛するのに、関西の食文化にプライドを持っている関西人は視野の狭い人物として描かれる。
 大阪の庶民的食文化の代表は、お好み焼きとたこ焼き。でも、「美味しんぼ」では、東京の伝統の祭りに強引に割り込んでくるのが大阪のヤクザまがいのたこ焼き屋。山岡たちは、明石のタコを使ったたこ焼きで反撃。をいをい、明石ゆったら関西やん。明石のタコはええけど、大阪のたこ焼きはレベルが低いんかいな。
 お好み焼きも、チヂミ(韓国風お好み焼き)という変化球で逃げてる。
 「美味しんぼ」は、関西を一定評価はしている。山岡の信頼する岡星は関西で修行した料理人。連載初期からの重要な登場人物で、究極対至高の審査員でもある京極氏は京都在住。でも、実は生まれも育ちも土佐。つまり、根っこを関西にもつ主要キャラクターがおれへんねん。物語やから別におらんでもかめへんけど、否定的なキャラクターとしてだけ関西人を登場させるから腹立つんや。
 最近やと、県シリーズの1番手で大分が取り上げられてて、その中で、
  「大分では薩摩揚げのことをてんぷらと呼ぶ」
という台詞がある。でも、関東で薩摩揚げと呼ばれる食品をてんぷらと呼ぶのは、大分だけのことやない。関西一円もそうですわ。大分もそうやったら、多分、西日本全体で「てんぷら」てゆうんちゃうかな。このへんにも、関西への無知が表れてる。
 あとは、醤油にこだわりが少ないとこかな。醤油へのこだわり、ゆっても、材料とか製法のことやなしに、醤油の種類のこと。関東やと、何でも全部濃口醤油一本槍みたいやけど、関西では、濃口醤油・薄口醤油・たまり醤油の3種類を使い分ける。これは料亭の話やなしに、ごく普通の(あるいは貧乏な)家庭でどこでもやられてること。色よく仕上げるためには薄口醤油やし、刺身を濃口醤油で食べるなんて非常識で、刺身しょうゆかたまり醤油です。こんなことは、関西では基本中の基本なんやけどなぁ。「美味しんぼ」の醤油を注すシーンで、
  「ほんでそれは濃口醤油なんか、薄口醤油なんか、たまり醤油なんか、どれやねん」
と突っ込んでるのはおれだけ?「美味しんぼ」は、しょっつるとかニョクマムは秘伝みたいにして登場させるけど、それよりも伝統と広がりをもってる薄口醤油やたまり醤油が一回も出てけーへんのはどういうこっちゃ。
 あと、これは、食べ物というより、作品としての弱点になるけど、究極対至高の対決の審査員も弱い。キャラクターが立ってるのは、雄山の師匠の陶人先生と京極氏だけ。その他の審査員は、名前もない。究極対至高の対決の審査員ともなれば、相当の食通のはずやし、雄山も山岡も、この人なら、と納得できるだけの人物であるはず。その審査員のキャラクターが弱すぎるんが「美味しんぼ」の弱点の一つやと思う。

1998/12/13 水と塩と味の素

 「美味しんぼ」を読んで、水の味を少しは意識するようになった。もちろん、「美味しんぼ」の登場人物みたいに、水を一口すすって、どこの水か当てるなんて、そんな芸当はよーせん。外国のミネラルウォーターの硬い味と日本のミネラルウォーターの柔かい味の違いゆうのはあるんやな、ゆう程度ですわ。ちょっとぜいたくやけど、日本のミネラルウォーター使って飯炊いたらうまいでっせ!
 「美味しんぼ」で、「食塩」として売られている塩化ナトリウムと、人間が昔から調味料として使ってきた塩とは違うことを教えて貰った。嘗めたとき、舌にピリピリくるんが塩やと思てたけど、それは塩化ナトリウムの味なんやな。各種の不純物の混じっている天然塩の方がすっきりした味に感じるのが人間の味覚の不思議なとこやわ。おにぎりを作るとき、塩化ナトリウムを使うか、天然塩を使うかではうまみが違う。塩化ナトリウムにはうまみがないけど、天然塩にはうまみがあるんや。子供の頃、いつも湿気てた塩が、いつの頃からか、さらさらの食塩に変わったけど、昔の湿気てる塩こそ本物の塩やったんやわ。
 味の素の味も「美味しんぼ」を読んで分るようになった。それまでは、店によって、食品によって、なんかすっきりしない・べたつく・後口が悪くて尾を引く、ゆう感じはしてたけど、それが味の素によるモンやと教えてくれたんは「美味しんぼ」ですわ。昆布やカツオのうまみ成分だけを取り出しているうまみ調味料の味を不純な味に感じ、不純物の一杯入った自然の昆布だしやカツオだしを純粋なすっきりした味に感じるところが人間の味覚の不思議なとこやわ。

1999/01/14 鴨なんばと鴨南蛮

鴨肉とネギの入った汁そばを「鴨なんば」てゆうけど、東京では「鴨なんばん」
とか「鴨南蛮」てゆうてる。これは、「鴨なんば」が正しい。「鴨南蛮」は間
違い。
 ちょっと考えたら分るけど、鴨とネギとそばの組み合せのどこにも「南蛮」
の影響はあれへんねん。
 「鴨ネギ」「鴨がネギしょってやってくる」ゆう言葉があって、鴨肉にはネ
ギがあう。で、昔、ネギの大産地やったんが難波。なんばはネギの代名詞やっ
たんや。つまり、鴨ネギを鴨なんば、てしゃれたわけです。(「大阪飲む店食
べる店全ガイド」(大和出版)より)
 ちなみに、「美味しんぼ」でも、海原雄山が「鴨南蛮」てゆうてます。
     (大阪ボード 1999/01/07掲載)


関西グルメガイド