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93, (1)迷子の息子

 迷子になった子供には、幾つかのパターンがあるように思える。まずは、ただひたすら泣きわめく「甘えん坊」タイプ。不安と涙をこらえ頼りなく立ち尽くす「我慢」タイプ。そして、闇雲に親を探そうとする「パニック」タイプ。
 そしてこれが一番やっかいな迷子なのであるが、大人達の心配をよそにその自覚さえない「マイペース」タイプの迷子である。

 息子は、県内各地に出掛けて自然を体験する「子供自然科学教室」の会員だった。そこで多くの親は、子供が遠方に出掛ける際は、集合場所までの送迎や同伴を常とし、我が子の安否には細心の注意を払っていた。
 だが私は、これを機に息子の自立心を養うおと彼の曖昧な判断と未熟な社会性を過信し『過保護より失敗しながら得る体験の方が貴重』と過激な教育論を豪語していた。
 ただ万が一の事態に備えて、テレホンカードを一枚差し出し、
「何かあったらこのテレホンカードで家に連絡するのよ」
 とだけアドバイスし、後はおにぎりいっぱいのお弁当箱と水筒を息子のバッグに詰め込み明るく手を振って見送っていた。

 これは、そんな親も親なら子も子である、数年前の出来事である。

つづく


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